概念名の成立について

今日は試験と全く関係がありませんが、意外と混乱しやすい概念の呼び名についてです。
概念によっては複数の呼び名があり、試験で出題されるまではどの呼び名で出されるかわからない状態です。
覚える側としては複数覚えざるを得ないため、ちょっとした労力ですよね。
そこで覚えやすくするためにも、複数の呼び名がある「正規分布」の由来について説明していきます。

パンの目方などのような製品の測定値、人の身長などのような自然現象の測定値、学童の成績などのような社会現象の測定値には、正規分布するものが多いです。
そして「正規分布」のことを、「ガウス分布」や「誤差分布」などと呼ぶこともあります。

正規曲線自体を発見したのはピエール=シモン・ラプラス(1749-1827)で、これを統計学的に展開することに成功したのがカール・フリードリヒ・ガウス(1777-1855)でした。
ガウスが18世紀末に「正規曲線」という言葉を導入しました。
ガウスが導入したということで「ガウス分布」とも呼ばれるようになりました。
ゴルトンは「誤差曲線」という言葉を使い、その後研究論文で「誤差曲線」を「正規曲線」と名付けています。
その後、ガウス曲線は実はラプラスが発見したことがわかったので、「ラプラス・ガウス曲線」と呼ぶことも提唱されました。
しかし、これには異が唱えられたといいます。
それはラプラスさんとガウスさんの国が関係しています。
ラプラスさんはフランスの数学者、天文学者、物理学者です。
これに対して、ガウスさんはドイツの数学者、天文学者、物理学者です。
このように二国に渡っていたため、どっちの名前を先に持ってくるか揉める可能性があったので、この論争が国を超えて広がるのを避けるために「正規分布」と呼ぶことにしたという経緯があります。
それでも長く使われていた「ガウス分布」や、その性質から導かれる「誤差分布」という表現も残っているということになります。
とにかく、正規分布=ガウス分布=誤差分布ということで間違いはないので、どれが出題されても大丈夫にしておきましょう。
こういう人や国のパワーバランスによって概念名が混乱するということは、意外と少なくありません。
パッと思いつくのがロールシャッハテストにおける「体験型」です。
体験型における内向型・外拡型は、もともとはユングの内向・外向から着想を得ています。
また、元々の解釈もそれほどユングから離れているわけでもありません。
それではなぜ「内向型・外向型」ではなく「内向型・外拡型」と微妙に変えたのか?
それは当時のフロイトとユングの仲違いが関連しています。
ヘルマン・ロールシャッハの師匠(スーパーヴァイザーだったかな?)はフロイト派でした。
フロイト派の師匠をもつヘルマン・ロールシャッハは、自らの創案した検査の重要な解釈概念でフロイトと敵対しているユングの概念を使ったわけです。
それを師匠に知られては大変なので、微妙に名前を変えて「ユングのとは違うんすよ」としたわけですね。
ですが、その後の書簡のやり取りにおいて「あれは、ユングの内向・外向なんすよ」ということが明記されています。
ですから、ロールシャッハテストの体験型に学ぶときには、その基本としてユングの内向・外向は頭に入れておきたいところですね。
このように見てみると、けっこう概念名って適当だなって思いますね。

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