エクスナー法の解釈を問う内容の3つ目ですね。
感情の側面に関する解釈を問うています。
さくさく解いていきましょう。
A.女性への攻撃的な感情を抱いている。
「女性への攻撃的な感情」の判断は、エクスナー法においては明確に判断する材料が明記されていません。
しいて言うなら、M反応の内容で女性が出現しているか、その女性の動きの質や形態水準を基準に考えていくことが求められているのかなと思いますが。
恐らくこの問題、片口法でよく言われる母親(女性)カード(Ⅶ図版)を見るようにという意図があるのではないかと思うのです。
Ⅶ図版は女性やその象徴的な部位を示す反応が出やすいということから、母親や女性に対するイメージが反応に反映されやすいとされています。
しかし、私が知る限り、エクスナー法の解釈において母親(女性)カード(Ⅶ図版)や父親カード(Ⅳ図版)を用いることはないと思うのです。
ですが、わざわざ「女性への」と限定しているので、Ⅶ図版の内容を見て、それをもとに解いていくことにしましょう。
事例ではⅦ図版の内容として「女の子の人形が楽しそうに踊っている」とあるので、不快な印象は受けません。
また、COP(友好的な対人関係が述べられている反応にコードされる)はあるものの、AG(攻撃的な対人関係が述べられているような反応にコードする)はないようなので、攻撃的な反応内容が含まれていることはないと判断できます。
以上より、ロールシャッハ反応からは本選択肢の内容は否定されるので×と判断できます。
B.現在、対象が明確でない不安を感じている。
エクスナー法における「対象が明確でない不安」の判断では、SumC′+SumT+SumV+SumY(eb右辺:エクスナー法における裏の体験型の右辺ですね。エクスナー法では裏の体験型という言い方はしませんけど)を参考にすることが求められます。
この値が大きい場合は、精神的苦痛やそのほかに何らかの不快感が存在すると考えられます。
他の問題でも示した通り、裏の体験型は「本人に意識されない」というものが見ることができます。
エクスナー法の裏の体験型は、濃淡反応を基本にC’(黒、灰、白の反応)を加えたものになります。
濃淡というより愛着等の人生早期の体験に左右されやすい反応をまとめたものですから、言語化されないレベルのものが示されると見てよいわけです。
事例は、この数値が7であり、被検者は精神的苦痛の真っ只中にあるものと思われます。
精神的苦痛は、抑うつや不安などの直接的な形をとることもあるが、普通でないほどの緊張、心配、あるいは不眠やだるさといった様々な身体的不調などのように、間接的な形をとることもあります。
更に、以下では示されている各記号の簡単な解釈を示します。
これに加え、SumC′=3であることから、感情の発散を抑制し、感情の衝撃を押さえ込む傾向があまりに強いため、イライラさせるようなネガティブな感情が生じていると考えられます。
また、SumT=2からは、最近の生活歴から喪失感をもたらす出来事が見つからない場合に、おそらく寂しさや情緒的な飢餓感が慢性的に続いているものと解釈されます。
さらに、SumVの存在は、罪悪感や後悔の念からもたらされていると考えるだけの理由が見当たらないならば、自分自身を責めたり、低く見る傾向がずっと続いていて、そのために心をかき乱すネガティブな感情が生じていると考えられます。
以上より、本選択肢の内容は正しいと言えるので○となります。
C.思ったことを言わない態度によって、感情を内に抑えがちである。
「感情をおさえがち」か否かは、SumC′:WSumCの値を参考にします。
この比率は感情を抑制したり、閉じ込めたりすることに関係しているとされています。
有彩色反応は、感情を発散させたり吐き出すことや、それらがどの程度コントロールされ調節されるのかということと関係があるのに対し、無彩色反応は、感情を抑制したり、うちにとどめたりすることで生じるいらだたしい感情に関係しています。
事例は、SumC′:WSumC=3:2.5で無彩色反応が上回っています。
この場合、感情の表出を頻繁に押さえ込み、その結果、通常では感じられないようなかなりの苛立ちを経験していると考えられます。
ただし、選択肢前半の「思ったことを言わない態度」というのは何処から解釈すべきかは不明です。
ラムダ=.50(片口法で言うF%のこと。微妙に計算式は違うけど)と防衛が高いとも言えませんし。
その辺は何となくもやもやしますが、概ね選択肢の内容は正しいと言えるので○と判断できます。
D.感情表出の調節や統制が困難である。
これはロールシャッハ問題における頻出事項と言えるでしょう。
エクスナー法でも片口法でも「感情表出の調節や統制」についてはFC:CF+Cを参考にします。
FC反応は、よりよくコントロールされた、あるいはよりよく調節された感情体験に関係するのに対し、CF反応は抑制のゆるい感情の発散と関係しています。
PureC反応はさらに抑制を働かせずに吐き出す感情と関係しています。
事例ではFC:CF+C=3:1であり、クライエントは大抵の成人と同じ程度に感情の発散のコントロールあるいは調節をすると考えられます。
よって本選択肢の内容は誤りといえるので×と判断できます。