公認心理師 2024-31

摂食障害患者の症状評価のために用いられる心理検査を選択する問題です。

初出の検査が3つもありますね。

問31 摂食障害患者の症状評価のために用いられる心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① CES-D
② EDI-2
③ EPDS
④ STAI
⑤ TAS-20

選択肢の解説

① CES-D

The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale=CES-Dは、一般人におけるうつ病の発見を目的として、米国国立精神保健研究所により開発されました。

15歳以上が適用で、所要時間 10~15分、質問項目は20項目(4件法)になっています。

CES-Dは、既存の尺度であるZungのSDS、BeckのBDI、MMPIなどを参考に、項目の取捨選択を経て作成されました。

過去1週間における症状の頻度を問い、「ない」「1~2日」「3~4日」「5日以上」の4つの選択肢から回答し、正常対照群と気分障害群のどちらかに判定していきます。

自己評価用ですが、状況によっては面接で使用することも可能です。

こうしたCES-Dの内容は、本問の「摂食障害患者の症状評価のために用いられる心理検査」には合致しないと言えます。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② EDI-2

Eating Disorder Inventory-2 (EDI-2日本語版)は、摂食障害患者の治療方針の立案や経過の査定を目的として、欧米においては臨床場面で頻繁に使用されている64項目からなる自己記入式検査です。

下位尺度として、やせ願望、ブリミア(過食)、体型不満(自己像不満)、無力感、完全主義、対人不信、内面の気づき、成熟恐怖、禁欲主義、衝動の制御、対人関係の不安定などが挙げられています。

はじめの3つの下位尺度(やせ願望、過食、体型不満:自己像不満)は摂食行動や体型に対する態度に関するものであり、残りの5つの下位尺度(無力感、完全主義、対人不信、内面の気づき、成熟恐怖)は摂食障害患者に見られる基本的な心理的特徴を包括的に捉えようとするものになっています。

残りの3つ(禁欲主義、衝動の制御、対人関係の不安定)については、GarnerがEDIからEDI-2に改定する際に追加したものになっています。

検査ではそれぞれの項目に、いつも・ほとんどいつも・しばしば・ときに・めったにない・一度もない、の6段階で回答することになり、採点は最も徴候を示す回答(「いつも」もしくは「一度もない」)が3点、以下2点、1点、0点、0点、0点として集計されます。

なお、摂食障害関連の検査については他にも以下のようなものがあります。

  • SCOFF:治療者実施の尺度。スクリーニングに用いられる。日本語版は現在作成中である。5つの質問で構成され簡便である。
  • EDE (Eating Disorder Examination):治療者実施の尺度。スクリーニングと重症度評価に用いられる。日本語版の妥当性が確かめられている。質問項目が多く、施行に45分程度要する。
  • EAT:自己記入式尺度。スクリーニングと重症度評価に用いられる。日本語版の妥当性が確かめられている。
  • EDE-Q:自己記入式尺度。治療者実施の尺度であるEDE (Eating Disorder Examination)を自記式にした尺度。原著版はスクリーニングと重症度評価に用いられる。日本語版は摂食障害患者における信頼性・妥当性の検証がされている。健常者と摂食障害患者の有意な差が出るかについては検証されておらず、スクリーニングで使用可能かは現在検証されていない。
  • CIA(Clinical Impairment Assessment Questionnaire):自己記入式尺度。摂食障害による心理的な機能障害を評価するための自記式評価尺度。下位尺度は、気分と自己認識、認知機能、対人関係機能、ワークパフォーマンス。16の質問項目について0-3点の4検法で、過去28日間について回答する。スクリーニング、重症度評価に用いられる。日本語の信頼性・妥当性が検証されている。

これらについては、こちらのサイトからの転載になります。

上記を踏まえれば、EDI-2が「摂食障害患者の症状評価のために用いられる心理検査」であると言えます。

よって、選択肢②が適切と判断できます。

③ EPDS

EPDS=エジンバラ産後うつ病質問票は、産後うつ病をスクリーニングするために英国で開発されました。

日本産婦人科医会が出している「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」によると、今日では国内外で妊娠中から使用され、妊婦並びに出産後1年未満の女性を対象に使用されているとのことです。

以下が示されております。

  • 日本人のカットオフポイント(区分点)は9点である。
  • 4段階評価で最低点が0点、最高点が30点であり、得点が9点以上だと産後うつ病の疑いがある。
  • EPDS総合点9点以上が、「うつの可能性が高い」とするものであるが、9点以上がうつ病で、8点以下はうつ病ではないと判断するものではない。また、点数とうつ病の重症度に関連はない。
  • うつ病以外の不安障害や精神遅滞など他の精神疾患でEPDS総合点が高値となることもある。
  • EPDS総合点9点以上は、抑うつ気分と興味の消失の2つのどちらかまたは両方の症状がどの程度続いているか確認する。2週間以上続いている場合は、うつ病の可能性が高くなる。
  • 2017年4月より産婦健康診査事業(産後うつの予防や新生児への虐待防止等を図るため、出産後間もない時期の産婦に対する健康診査に係る費用を助成する事業)が開始され、産後2週と産後1か月にEPDSを実施する市町村も増えている。

産後うつ病の前景に、妊娠中からのうつ病が関連しているという報告は多数ありますから、妊娠中からのうつ状態の把握が大切になります。

エジンバラ産後うつ病質問票は、そうした妊娠中からのスクリーニングにも活用することができるものです。

こうしたEPDSの内容は、本問の「摂食障害患者の症状評価のために用いられる心理検査」には合致しないと言えます。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ STAI

State-Trait Anxiety Inventory:STAI(状態‐特性不安検査)は、スピルバーガー(Spielberger)が作成した検査で、状態不安と特性不安に分けているのが特徴です。

STAIを用いる場合、事例で示されている種々の問題が不安によって生じているという見立てが必要であること、特性不安と状態不安を見ることがクライエントの問題を把握しやすくするという見通しが必要になります。

カットオフポイント(高不安群のライン)は、特性不安・状態不安、そして男女によって異なります(特性不安:男性44点、女性45点以上・状態不安:男性41点、女性42点以上)。

こうしたSTAIの内容は、本問の「摂食障害患者の症状評価のために用いられる心理検査」には合致しないと言えます。

もちろん、摂食障害患者であろうがなかろうが「不安の状態‐特性の見極め、その強さ」を評価するのには適していますが、摂食障害自体の病状評価として用いるものではありませんね。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ TAS-20

The 20-item Toronto Alexithymia Scale (TAS-20)とは、アレキシサイミア(失感情症)を評価する際に有用な質問紙法の心理検査になります。

アレキシサイミアは、Sifneosによって提唱された概念で、a=lack・lexis=word・thymos=mood or emotionというギリシャ語に由来し、「感情を読み取り言語化しにくい」という意味で、日本語では「失感情症」や「失感情言語化症」などと訳されています。

自分の感情(情動)への気づきや、その感情の言語化の障害、また内省の乏しさといった点に特徴があると言われています。

アレキシサイミアでは、自分の情動の認知が制限されていて、言葉で表現するのも抑えられているので、身体化に感情のはけ口を求める結果、心身症になると想定されています。

TAS-20はその名の通り20項目あり、感情の同定困難(DIF:感情をラベリングすることの困難さ)、感情の伝達困難(DDF:感情を他人に伝えることの困難さ)、外的志向(EOT:対外志向的考え方)の3つの尺度で構成されています。

回答は「全くあてはまらない」から「非常にあてはまる」までの5段階評価で、逆転項目が5つ含まれています。

こうしたTAS-20の内容は、本問の「摂食障害患者の症状評価のために用いられる心理検査」には合致しないと言えます。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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