公認心理師 2024-18

限局性学習症/限局性学習障害のアセスメントツールを選択する問題です。

「おいおい、検査名が答えになってるじゃないか…」と思った人が多いことでしょう。

問18 限局性学習症/限局性学習障害のアセスメントに用いられるツールとして、最も適切なものを1つ選べ。
① CARS
② Conners3
③ LDI-R
④ M-CHAT
⑤ Vineland-Ⅱ

選択肢の解説

① CARS

CARSとは、Childhood Autism Rating Scaleの略であり、その名の通り自閉症スペクトラム症(ASD)の診断評価とその重症度が測定できる検査になります。

行動観察と保護者からの情報を総合して判断するタイプの検査です。

特別な用具等を必要とせず、ほかの心理検査を実施しているときの対象者の様子などから評定するため、短時間で簡便に実施できます。

ASDの重症度が測定でき、軽度~中度のASDと、中度~重度のASDとの鑑別に有効であることが実証されています。

また、標準版ではASDと知的障害の鑑別に有効であることが実証されています。

評定用紙には「標準版」と「高機能版」があり、幅広い対象者に実施できるようになっています。

上記のような弁別になりますね。

これらより、CARSは自閉症スペクトラム症(ASD)の診断評価とその重症度が測定できる検査であり、本問の「限局性学習症/限局性学習障害のアセスメントに用いられるツール」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② Conners3

こちらはADHDの症状の特定、行為障害、反抗挑戦性障害、不安、抑うつなどの鑑別診断または共存診断、影響のある機能領域の説明、介入の方針の提案といったADHD評価で主要な局面にてその有用性を発揮するとされています。

6つの主要因スケール(不注意、多動性/衝動性、学習の問題、実行機能、攻撃性、友人/家族関係)によって構成されています。

上記のスケールにある通り、ADHDを中心としつつ、それと関連が深い問題(行為障害など)についての評価を行うことも可能です。

適用年齢も6歳~18歳とされております。

上記の通り、Conners3はADHDに関する評価スケールですから、本問の「限局性学習症/限局性学習障害のアセスメントに用いられるツール」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ LDI-R

LDI-Rは、Learning Disabilities Inventory-Revisedの略であり、その名の通り、LD判断のための調査票になります。

子どもを実際に指導し、学習状況を熟知した指導者や専門家が、普段の子どもの様子を基に評定します。

LDI-Rは、基礎的学力(聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する、英語、数学)と行動、社会性の計10領域で構成されおり、領域の各項目について「ない」「まれにある」「ときどきある」「よくある」の4段階評定を用いています。

基礎学力に関する8領域は以下の通りです。

  1. 聞く:他者の話に注意を向け、理解する力。
  2. 話す:口頭の意思伝達。コミュニケートする力。
  3. 読む:書かれた題材(文字)を分解し、そこに意味を構成する力。
  4. 書く:文字や文章をつづる力。
  5. 計算する:計算スキルを使って量的課題を解く力。
  6. 推論する:図形や数量の理解・処理といった数学的思考を含んだ、問題解決に向かって思考する力。
  7. 英語:中学校から本格的に学習が開始される新たな言語体系。
  8. 数学:小学校の算数より抽象度も増し、理論的思考を必要とする教科。
    ※「計算する」「推論する」は、学年によって回答する項目数が異なり、「英語」「数学」は、中学生のみを対象とした領域になります。

これらに加えて、行動・社会性に関する2領域は以下の通りです。

  1. 行動:落ち着きのなさ、注意力の問題、衝動性。
  2. 社会性:集団行動、対人葛藤場面行動、社交性。

基礎的学力について、対象となる子どものスキルパターンが、LDのある子に見られる特定領域のつまずきとどの程度一致しているかを明らかにするのに加え、社会性や行動面の尺度がついているので、学習以外の指導のニーズについても知ることができます。

ちなみに、LD(学習障害)は、2014年に「限局性学習症(SLD:Specific Learning Disabilities)」に名称変更されておりますから、上記の解説にある「LD」は、本問の冒頭にある「限局性学習症/限局性学習障害」と読み替えてもらえればOKです。

これらを踏まえると、本問の「限局性学習症/限局性学習障害のアセスメントに用いられるツール」は、LDI-Rであることがわかりますね。

以上より、選択肢③が適切と判断できます。

④ M-CHAT

M-CHATは、自閉症スペクトラムのスクリーニング尺度です。

一部の項目が全国の1歳6ヶ月乳幼児健診で必須チェック項目となっているほか、一部の自治体の健診では悉皆スクリーニングとして活用されています。

18~24ヵ月の幼児が対象なので、保護者が記入し評価者が採点を行うという方式を採用しています。

こちらのページに、実際の物があるのでご参照ください。

ただ、M-CHATについては、これのみで評価するのではなく、M-CHATを第一段階として、これに陽性であれば第二段階の面接が必要とされています(選択肢①の解説の通りです)。

あくまでも一次スクリーニングであり、それのみで診断をしていくわけではないということです。

M-CHAT陽性と判断された子どものうち二人に一人は自閉症スペクトラム障害ではない(=陽性的中率は50%程度)であり、あくまでも第二段階(スクリーニングとその後の精査)のステップにつなげ、これを丁寧に行うことによって自閉症スペクトラム障害になる子どもの早期診断につながることが期待されており、実際に成果が上がっています。

上記の通り、M-CHATは自閉症スペクトラムの一次スクリーニング尺度であり、本問の「限局性学習症/限局性学習障害のアセスメントに用いられるツール」ではありません。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ Vineland-Ⅱ

Vineland-Ⅱは、アメリカで開発された適応行動尺度です。

適応行動全般を検査する標準化尺度としては最も国際的に用いられているものの1つとされています。

近年は特に、ASDをはじめとする発達障害(知的障害を含む)のアセスメントの一環として診断検査(ADOS、ADI-Rなど)、認知検査(ウェクスラー式知能検査など)とともに用いられることが多いです。

日本版のVineland-Ⅱでは、適応行動を個人的・社会的充足を満たすのに必要な日常生活における行動と定義しています。

このような定義がされる行動は以下の4点によって決定されます。

  1. 適応行動は、それぞれの年齢が重要となるものが異なる。
  2. 適応行動の評価は、個人がかかわる環境の期待や基準によって変化する。
  3. 適応行動は、環境の影響および支援効果などによって変容する。
  4. 適応行動の評価は、行動そのものを評価するものであり、個人の可能性を評価しない。

これによって得られる適応行動評価の情報は、主に診断や特別支援教育等の教育的措置、支援計画の策定および支援経過評価などに利用することが可能とされています。

日本版Vineland-Ⅱは以下の5つの領域で構成され、それぞれの領域には下位領域があります。

  1. コミュニケーション領域:受容言語・表出言語・読み書き
  2. 日常生活スキル領域:身辺自立・家事・地域生活
  3. 社会性領域:対人関係・遊びと余暇・コーピングスキル
  4. 運動スキル領域:粗大運動・微細運動
  5. 不適応行動領域:内在化問題・外在化問題・その他・不適応行動重要事項

なお日本版では、発達障害のある人々のアセスメントにおいて重要となる場合が多い不適応行動領域の評価は、実施手続き上ではオプションであり、回答者の許可を事前に得る必要があります。

その他の特徴としては…

  • 適用年齢:0歳~92歳
  • 回答者:保護者・近親者および評価対象者をよく知る人
  • 実施時間:20分~60分
  • 状態把握のための複数回の実施:可能

…などとなります。

上記を踏まえれば、Vineland-Ⅱは適応行動全般を検査する標準化尺度であり、本問の「限局性学習症/限局性学習障害のアセスメントに用いられるツール」ではありません。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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