条件に適合する心理検査を選択する問題です。
「強迫症」「成人」という条件が今回の問題で示されていますね。
問21 強迫症が疑われる成人に用いる心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① CAARS
② CAPS
③ POMS2
④ SDS
⑤ Y-BOCS
解答のポイント
各心理検査の概要を把握している。
選択肢の解説
① CAARS
Conners’ Adult ADHD Rating ScalesでCAARSになります。
こちらは、成人に見られるADHD関連の症状を評価する目的で作成された検査です。
DSM-IVによるADHD診断基準と整合性のある尺度になっています。
「自己記入式」66項目と「観察者評価式」66項目から成っており、複数の回答者からの情報をもとに包括的に評価を行い、以下のように構成されています。
- 注意不足/記憶の問題
- 多動性/落ち着きのなさ
- 衝動性/情緒不安定
- 自己概念の問題
- DSM-IV不注意型症状
- DSM-IV多動性-衝動性型症状
- DSM-IV総合ADHD症状
- ADHD指標
回答に一貫性があるか判別する指標(矛盾指標)も設けられております。
上記の通り、CAARSは成人に用いることができるものではありますが、強迫症が疑われる人に用いるものではありません。
よって、選択肢①は不適切と判断できます。
② CAPS
CAPS (Clinician-Administered PTSD Scale) は、優れた精度のPTSD構造化診断面接尺度として各国の臨床研究や治験で広く使用されています。
DSM-5の診断基準に基づいて、トラウマ体験に関する質問1個、PTSD症状(再体験、回避、否定的認知、覚醒亢進)に関する質問20個、持続期間に関する質問2個、機能障害に関する質問3個、全般状態に関する質問3個、その他の質問2個の合計30個の質問からなり、それぞれの質問項目について最近1か月の症状の重症度を元に面接者が評定を行います。
PTSDの構造化診断面接尺度として医療保険適用もされています。
所要時間は、面接で90分前後、分析で30分ほどとされています。
DSM-5に基づいていることなどから成人への対応が可能な検査ではありますが、強迫症が疑われる人に適用するものではありませんね。
よって、選択肢②は不適切と判断できます。
③ POMS2
POMS(Profile of Mood States)はアメリカで開発された気分状態を評価する質問紙検査で、日本語版は1994年に作成されています。
65項目の質問から過去1週間の気分を評価し、緊張‐不安、抑うつ‐落ち込み、怒り‐敵意、活気、疲労、混乱の6尺度によるプロフィールを産出します。
2015年には改訂版のPOMS2日本語版が発表され、質問項目の変更がなされました。
活気、疲労、混乱はそれぞれ、活気‐活力、疲労‐無気力、混乱‐当惑へ変更され、友好尺度が追加されています(つまり、POMS2は7尺度)。
ネガティブな気分状態を総合的に表す「TMD得点」から所定の時間枠における気分状態を評価する検査になります。
なお、成人用(18歳以上)に加え、青少年用(13~17歳)があります。
上記のように、POMS2は成人に適用はできますが、強迫症が疑われる人に用いるものではありません。
よって、選択肢③は不適切と判断できます。
④ SDS
SDSの目的は、抑うつ傾向の度合いを数値化することによって客観的に判断することです。
自己評価式の抑うつ尺度であり、適用年齢は15歳以上とされています。
40点未満で抑うつ性は乏しい、40点台で軽度抑うつ性、50点台で中度以上の抑うつ性とされています(このcut off関係の情報は不要になりましたね)。
以上より、SDSは成人に適用できますが、強迫症が疑われる人に用いるものではありません。
よって、選択肢④は不適切と判断できます。
⑤ Y-BOCS
Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale(Y-BOCS)=エール・ブラウン強迫尺度は、強迫性障害の強迫観念や強迫行為の臨床的重症度の評価において最も一般的に用いられる方法であり、10の項目から成り、費やす時間、関連する苦痛、機能障害、抵抗性、強迫観念と強迫行為の制御を評価します。
Y-BOCSは症状評価リストで特定した主要な強迫観念及び行為について、症状に占められる時間や社会的障害度など10項目を0-4点の5段階で評価・合計し総得点(40点満点)を決定します。
重症度については、10~18点は軽度、18~29点は中度、30点以上は重度と判断されます。
厚生労働省が出している「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル (治療者用)」にも本検査の記載があります。
研究レベルではY-BOCS総得点が治療前より25-35%減、総得点16以下と言われています。
寛解レベルは12点以下に下がることであり、治療者と患者の事情が許すならば改善するところまで治療続ける方が望ましいとされています。
厚生労働省が出している「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル (治療者用)」にも本検査の記載があります。
年齢ですが、さまざまな適用例を見る限り18歳以上の成人に適用していることが多く、成人向けの検査と言ってよいでしょう(ちなみに子ども用として、CY-BOCSというのがある)。
以上より、Y-BOCSは強迫症が疑われる成人に用いる心理検査であると言えます。
よって、選択肢⑤が適切と言えます。
なお、強迫症に関する解説はこちら等をご覧ください。