公認心理師 2022-121

BDI-Ⅱに関する問題です。

評価項目にまで突っ込んで出題されています。

評価項目は解説で書けないものですから、なかなか解説が難しい問題だと感じますね。

問121 BDI-Ⅱの説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① うつ病の診断に単独で用いる。
② 最近1か月の状態を評価する。
③ 体重減少を問う評価項目がある。
④ 睡眠時間の増加を問う評価項目がある。

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解答のポイント

BDI-Ⅱの評価項目も含めて把握している。

選択肢の解説

① うつ病の診断に単独で用いる。

BDI-Ⅱはベック抑うつ質問票のことで、認知療法の始祖であるベックのグループが作成した自己記入式質問紙です。

13歳〜80歳の抑うつ症状の有無とその程度の指標として開発されました。

DSM-Ⅳに準拠したうつ病の症状を網羅しており、全21項目から構成されており、それぞれに4つの反応形式が設定されています。

BDI-Ⅱを定期的に行うことによって、自分自身の気分の傾向を数値として測定でき、自分自身を客観的に見つめることが可能になります(この辺が認知療法っぽいですね)。

もちろん、うつ病判定の指標の一つとして用いることはあり得るでしょうが、BDI-Ⅱ単独でうつ病の診断に用いるというのは無理があります。

その理由は、(DSM-5にはなりますが)大うつ病性障害の診断基準Aのもっとも重要な指標である(1)抑うつ気分、(2)興味または喜びの喪失、の内容を見てみれば理解できると思います。

  1. その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望感を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているようにみる)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。 (注:子どもや青年では易怒的な気分もありうる)
  2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)

上記のように、「その人自身の言葉によって示される」や「他者の観察によって示される」という表現があり、これは「その人の言葉を聞いている人間の存在」や「その人を観察している人間の存在」を前提として設定されていますね。

そして、その人間というのは多くの場合、支援者だったり家族だったりするわけです。

あくまでも自己記入式質問紙であるBDI-Ⅱを「うつ病の診断に単独で用いる」ということがあり得ないのは、こうした事情からと考えて良いわけですね。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

② 最近1か月の状態を評価する。
③ 体重減少を問う評価項目がある。
④ 睡眠時間の増加を問う評価項目がある。

BDI-Ⅱはその名の通り、前の版があるわけですが、初版のBDI(BDI-IA)とBDI-Ⅱの主な相違点は以下の通りです。

  • 質問項目の削減と追加
    「体重減少」「容貌の変化」「身体症状」「仕事の困難」が削減され、新たに「激越」「無価値観」「活力喪失」「集中困難」が追加された。
  • 回答選択肢の修正
    「食欲」「睡眠」では、減少だけでなく増加についても評価できるよう変更されている。また、初版のBDIと比べて、多くの文章表現が改訂された。
  • 症状の対象期間
    「過去1週間」から、DSM-IVの大うつ病性障害診断基準に従い、「今日も含めて2週間」に変更された。

上記の通り、DSM-Ⅳの診断基準に従って「今日も含めて2週間」になっています(ちなみに、検査の教示は「この2、3日のあなたの気分にもっともよく当てはまるものを選択」になっています)。

DSM-Ⅳ-TR(我が家にあるDSMでは、TR版までしか遡れませんでした…)の「大うつ病エピソード」の基準Aには「以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている」という一文が存在しますし、DSM-5の大うつ病性障害の基準Aでも同様の期間が示されています。

ですから、これに合わせてBDI-Ⅱでは「最近2週間の状態を評価する」ということになるわけです。

さて、 続いてはBDI-Ⅱの評価項目についてですが、こちらはインターネット上で見ることができます。

ですが、BDI-Ⅱに関しては検査用紙が販売されているという点から、評価項目を公開して良いものか判断がつきませんでした。

ですから、ここでは検査項目の大まかな内容を述べておくことにしましょう。

  1. 憂うつ
  2. 悲観
  3. 過去の失敗
  4. 喜びの喪失
  5. 罪責感
  6. 被罰感
  7. 自己嫌悪
  8. 自己批判
  9. 自殺念慮
  10. 落涙
  11. 激越
  12. 興味喪失
  13. 決断力低下
  14. 無価値観
  15. 活力喪失
  16. 睡眠習慣の変化
  17. 易刺激性
  18. 食欲の変化
  19. 集中困難
  20. 疲労感
  21. 性欲減退

これらがBDI-Ⅱの評価項目であり、各項目4件法(0-3)で回答していきます。

上記を踏まえると、選択肢③の「体重減少を問う評価項目がある」というのは見当たらず、選択肢④の「睡眠時間の増加を問う評価項目がある」は項目16が該当することがわかりますね。

以上より、選択肢②および選択肢③は不適切と判断でき、選択肢④が適切と判断できます。

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