ケース・フォーミュレーションについての問題です。
機能分析と並べてブループリントでは記載されていましたね。
「精神医療・臨床心理の知識と技法」に詳しく乗っていたので、引用しながら解説していきます。
解答のポイント
ケース・フォーミュレーションの手順を把握していること。
選択肢の解説
解説に役立つ情報として、「臨床過程におけるケース・フォーミュレーション(以下、CF)の活用」を示します。
- アセスメントによって問題に関連するデータを収集する。
- 得られたデータを分析し、介入のターゲットとなる具体的問題を同定する。
- その問題を維持させている悪循環に関する仮説としてCFを生成する。
- クライエント(患者や関係者)にCFを提示し、問題理解について説明(心理教育)する。
- クライエントからCFに関する意見をもらい、CFを修正する。
- CFの修正作業を通してクライエントとの間で問題理解を共有し、問題解決に向けての協働関係を深める。
- 共有したCFを作業仮説として介入方針を定める。
- 介入方針をクライエントに説明(心理教育)し、合意を得る。
- 介入方針に関する合意を得る過程でクライエントの動機づけを高める。
- 介入した結果、効果が見られない場合にはCFを修正する。
- 修正されたCFに基づき介入方法を変更して介入を進める。
- 介入効果が見られたならば、CFに基づき再発防止のための留意点を確認し終結とする。
(公認心理師必携 精神医療・臨床心理の知識と技法 下山・中嶋編 p178-179)
『①一度定式化したものは修正しない』
こちらについては、上記の「5.クライエントからCFに関する意見をもらい、CFを修正する」および「10.介入した結果、効果が見られない場合にはCFを修正する」という内容と矛盾しております。
「見立ては仮説である」というのは馬場禮子先生を始め、さまざまな方がおっしゃっておられます。
CFの定義としても「介入の対象となる問題の成り立ちを説明する仮説」とされていることから、状況やクライエントの意見をもって柔軟に変えていく類のものであると言えるでしょう。
よって、選択肢①については不適切と言えます。
『②できるだけ複雑な形に定式化する』
上記の内容からも明らかなように、CFはクライエントやその関係者とも共有していく仮説です。
よって、複雑なものとして示すのではなく、通常は、患者、関係者、同僚などが理解しやすいように、問題の構成要素の関連性を簡略化して図として示すことになります。
以上より、選択肢②は不適切と言えます。
『③全体的かつ安定的な心理的要因を検討する』
問題の成り立ちに関するケース・フォーミュレーションでは、遺伝・体質・家族関係などの「素因」、母子分離・病気・異動等々の「発生要因」、周囲の無理解、安全感が維持されない環境等々の「発展要因」について扱っていく。
またクライエントの「認知」なども扱うとされている。
広い視点で現在起こっている問題を維持させている悪循環についての仮説を立てるだけでなく、各問題がどのように発生し、発展して、現在に至っているかという点についても検証していく。
以上より、「全体的」や「安定的」といった表現は当てはまらず、選択肢③は不適切と判断できます。
『④クライエントと心理職との共同作業を重視する』
こちらについては、上記の「5.クライエントからCFに関する意見をもらい、CFを修正する」および「6.CFの修正作業を通してクライエントとの間で問題理解を共有し、問題解決に向けての協働関係を深める」という記載と一致しております。
CFは、クライエントにとって「よくわからない」ものを、各要素が絡み合った「意味ある現象」として眼前に置くことができるという意義があります。
クライエントとの共同作業を前提とした行為と言えるでしょう。
よって、選択肢④の内容は適切と判断できます。
『⑤症状を維持するメカニズムや診断名を考慮しない』
CFでは、まずは具体的問題を特定した上で、「問題の維持」と「成り立ち」に関するフォーミュレーションを行います。
問題の維持に関するケース・フォーミュレーションとしては、以下のような点を見ていきます。
- 刺激:問題のきっかけとなる状況や対人関係の分析。
- 反応:認知・感情・生理・行動の各々の反応がどのように問題を成り立たせているか。
- 結果:生活への影響、周囲の反応等が何を引き起こしているか。