観察法について記述と合致する方法を選択する問題です。
求められているのは「観察対象者に起こりそうな行動の一覧表を用意し、監察結果を記録する方法」の名称を知っていることですね。
知らない場合でも「一覧表」と「目録」という表現の類似に気が付くことができると解ける問題なのかもしれません。
解答のポイント
心理学における実証的研究方法の種類について把握していること。
選択肢の解説
『①日誌法』
特定の対象が、日常生活の中で示す新しいエピソードをその都度観察する方法を指します。
自然観察法の一つです。
この方法が選択されるのは、観察者と観察対象が、日常生活を共有している度合いが高い場合です。
対象の行動の力動関係を把握することに優れ、生起頻度の少ない行動や新しい行動を見出すことができます。
乳幼児期の発達研究で用いられることが多いですね。
一方で録画機器などの特別な方法を用いないために、観察の精度が粗かったり、観察者の主観が入ることなども考えられます。
例えば、観察する行動が偏っていたり、観察者の解釈が混合するなど。
観察者が保護者である場合を考えるとなおさらですね。
こうした日常生活場面での行動が重要という考え方は、サルなどの研究の推進に大いに役立ちました。
自然環境までこちらが出向いて観察することで、その生態がより克明に把握できたということです。
以上より、選択肢①は問題文の内容と合致しないと言えます。
『②行動描写法』
自然観察法の一つで、その状況で生じている全ての行動を時間的な流れに沿って自由記述する方法を指します。
観察対象者のあらゆる行動を記録するという方法になるので、未知の対象や全体を把握したいときに用いられることが多いです。
以上より、選択肢②は問題文の内容と合致しないと言えます。
『③行動目録法』
事前に起こりそうまたは観察したい行動のカテゴリーを作成し、その行動が生起した度にチェックを行う方法を指します。
行動の生起頻度を調べるのに適した方法と言えます。
調べたい行動がある時には、こちらを用います。
その反面、関係ないと思っていたけど実は重要な行動などは見逃してしまうという危険があります。
行動「目録」法なので、問題文にある「一覧表」との合致に気が付けると良いのかもしれません。
よって、選択肢③が問題文の内容と合致します。
『④場面見本法』
行動観察の方法の一つで、ある行動が生起しそうな場面などを選択し、その場面での行動を観察する方法です。
行動は場面によって生じやすさが規定されるので、ある行動を観察したいとき、その行動が生起しやすい様々な場面を選ぶという方法を採るわけです。
例えば、児童の同級生とのやり取りを観察するならば、授業中ではなく休み時間に行うなどです。
よって、選択肢④は問題文の内容と合致しないと言えます。
『⑤トランスクリプト』
会話分析などの世界では「transcript=会話記録」という意味で、会話の録音・録画、および、現実の会話を一定のシンボルにしたがって転記した記録を指します。
十分に完全なトランスクリプトは、現実に起きたと考えられる会話を、会話者が少なくとも潜在的に意味あるものとして聞き取りえた形のままに書き表したものとされています。
一般には「テープ起こし」のことなどを指すと思われます。
臨床研究において初めて録音・テープ起こしを行ったとされるのはロジャーズです。
当時は最大で3分程度しか録音できなかったので大変な苦労だったようですね。
以上のように、選択肢⑤は問題文の内容と合致しないと言えます。