公認心理師 2024-84

説明に合致するノンパラメトリック検定を選択する問題です。

それぞれの検定がどんなものか、大まかに理解しておきましょう。

問84 心理学実験において、統制群と実験群から得られた順序データについて、2群の分布の位置を比較する際に用いられるノンパラメトリック検定法として、最も適切なものを1つ選べ。
① F検定
② t検定
③ ウェルチの検定
④ マン・ホイットニーのU検定
⑤ ウィルコクソンの符号付き順位検定

選択肢の解説

① F検定
② t検定
③ ウェルチの検定

平均値の差の検定は、2つの標本の場合、t検定を用いることになります。

t検定は算術計算で求められるので、従属変数のデータは「間隔尺度」か「比例尺度」に基づくものでなくてはなりません(「名義尺度」や「順序尺度」(特に名義尺度)を扱うときには、母集団の分布に関しての仮定を置かずにデータの処理が可能な「ノンパラメトリック検定」が用いられる)。

ちなみにt検定はパラメトリック検定に分類されますが、これは比べる母集団同士の分布に関して仮定を置くという意味があります。

すなわち、「比べる母集団の平均値は等しいだろう」という仮定(=帰無仮説)を立てて検証していくということですね。

パラメトリックの「パラ」とは、パラメーターのことであり、「母数」を意味します。

よって、パラメトリック検定とは、扱っている標本から「母集団」を想定している検定を指す表現ということですね。

これに対して、一般に母集団についての特定の分布を仮定しない検定法をノンパラメトリック検定と呼びます。

さて、平均値の差をt検定するときに、まず等分散の検定(通常はF検定)を行い、その上で、等分散なら通常のt検定、等分散でなければいわゆるウェルチ(Welch)検定を行います。

要するに、F検定によってデータの分散(バラつき具体)が等しいかを検定し、データのバラつき具合が均等であればt検定(いわゆるスチューデントのt検定)を、バラつき具合が均等でなければウェルチの検定を行っていきます。

以上のように、2つのデータの平均の差を検定するときにt検定を行っていくわけですが、そのために等分散性の検定(F検定)を行い、それによってt検定‐ウェルチの検定の判断を行っていくということになりますね。

これらはパラメトリック検定の文脈で行われるものになることもわかると思います。

以上より、選択肢①、選択肢②および選択肢③は不適切と判断できます。

④ マン・ホイットニーのU検定
⑤ ウィルコクソンの符号付き順位検定

検定法の中には「正規分布に依存しないことで、新しい知見の解釈が行える」というものがあり、「正規分布に依存しない」とは「母集団についての特定の分布を仮定しない検定法」ということを指します。

このような検定法をノンパラメトリック検定と言い、「名義尺度」や「順序尺度」を扱うときには、母集団の分布に関しての仮定を置かずにデータの処理が可能な「ノンパラメトリック検定」が用いられます。

こちらの表からもわかるように、選択肢④と選択肢⑤の検定は、それぞれ順序尺度データの際に用いられるものになります。

マン・ホイットニーのU検定とウィルコクソンの符号付き順位検定は、両方とも順序尺度のデータに関して「2つのグループ間に差があるかないかについての検定」になります。

この2つの検定の違いは「対応の有無」になり、2条件間で対応がない場合は「マン・ホイットニーのU検定」であり、対応がある場合は「ウィルコクソンの符号付き順位検定」になります。

対応の有無について判断する時には、まずは被験者内・被験者間という捉え方を理解しておくと便利です。

被験者内という割り当て方をする場合には、必ず「対応のある」になります。

対して、被験者間という割り当て方をする場合には、一般的には「対応がない」となります。

被験者内とは「測定対象は同じで、時間などの条件を変えて測定したデータのこと」です。

例えば、10人の心拍数のデータを朝に測定し、また夜に同じ10人の心拍数を測定するとしたら、これは対応のあるデータということになります。

これに対して被験者間とは「条件ごとに測定対象が異なる場合」を指します。

被験者間で「無作為化」が行われていれば「対応のない」ということになりますが、「ブロック化」されている場合だと「対応のある」になります(対応のない要因の場合は、その要因の異なる水準に含まれる従属変数の値は互いに独立であるのに対し、対応のある要因の場合は、異なる水準に含まれる従属変数の値に相関がある)。

ブロック化とは、調べる要因以外のすべての要因を可能な限り取り除く(少なくする・一定にするということであり、例えば、年齢が影響するようなら年齢の影響を除くために、標本の年齢をできるだけ等しくするということです。

本問では「統制群と実験群から得られた順序データについて」とあり、この2群の分布を比較するわけですから、当然「条件ごとに測定対象が異なる」ということになりますから、本問の状況は「対応がない」ということになります。

というわけで、本問の「心理学実験において、統制群と実験群から得られた順序データについて、2群の分布の位置を比較する際に用いられるノンパラメトリック検定法」は、マン・ホイットニーのU検定になります。

よって、選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢④が適切と判断できます。

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