公認心理師 2024-122

男女雇用機会均等法および同法施行規則に関する問題です。

基本的な内容になっていますが、それ故に「絶対に知っておいてくれよ」という内容になっています。

問122 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律〈男女雇用機会均等法〉及び同法施行規則に定められている事項として、誤っているものを1つ選べ。
① 婚姻を理由とした女性労働者の解雇を禁止すること
② セクシュアルハラスメントが生じないよう事前に対策を講ずること
③ 妊娠・出産等に関するハラスメントが生じないよう事前に対策を講ずること
④ 深夜業に従事する女性労働者の、通勤及び業務の遂行における安全を確保するよう努めること
⑤ 男女労働者間に生じている格差解消を目的とした、女性労働者のみを対象とした取扱いや特別な措置を禁止すること

選択肢の解説

① 婚姻を理由とした女性労働者の解雇を禁止すること

こちらは法の第9条の内容を見ていきましょう。


(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。


上記の通り、「事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない」とありますね。

当然のことながら、「婚姻を理由とした女性労働者の解雇を禁止すること」については男女雇用機会均等法で定められている事項になりますね。

よって、選択肢①は正しいと判断でき、除外することになります。

② セクシュアルハラスメントが生じないよう事前に対策を講ずること
③ 妊娠・出産等に関するハラスメントが生じないよう事前に対策を講ずること

職場におけるセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメントなどのハラスメントは、労働者の個人としての尊厳を不当に傷つけるとともに、労働者の就業環境を悪化させ、能力の発揮を阻害するものです。

また、企業にとっても職場秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題です。

そのため、企業においてはハラスメントが生じないよう事前に対策を講じることやハラスメントが生じた場合は迅速かつ適切に対応することが義務付けられています。

これらについては法の「第二節 事業主の講ずべき措置等」で定められている内容になりますね。


(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第一項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
4 厚生労働大臣は、前三項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
5 第四条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。

(職場における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務)
第十一条の二 国は、前条第一項に規定する不利益を与える行為又は労働者の就業環境を害する同項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「性的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 事業主は、性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
3 事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、性的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
4 労働者は、性的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。

(職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第十一条の三 事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 第十一条第二項の規定は、労働者が前項の相談を行い、又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べた場合について準用する。
3 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
4 第四条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。

(職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務)
第十一条の四 国は、労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「妊娠・出産等関係言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 事業主は、妊娠・出産等関係言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
3 事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、妊娠・出産等関係言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
4 労働者は、妊娠・出産等関係言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。


上記では、セクハラ・マタハラに関する条項を抜き出しましたが、求められているのは「事前に対策を講ずること」ということになっていますから、「雇用管理上の措置」の部分が大切になりますね。

そして、上記からもわかる通り、「セクシュアルハラスメントが生じないよう事前に対策を講ずること」も「 妊娠・出産等に関するハラスメントが生じないよう事前に対策を講ずること」も第11条と第11条の3に定められています。

以上より、選択肢②および選択肢③は正しいと判断でき、除外することになります。

④ 深夜業に従事する女性労働者の、通勤及び業務の遂行における安全を確保するよう努めること

こちらは「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則」の方に記載がある内容になりますね。


(深夜業に従事する女性労働者に対する措置)
第十三条 事業主は、女性労働者の職業生活の充実を図るため、当分の間、女性労働者を深夜業に従事させる場合には、通勤及び業務の遂行の際における当該女性労働者の安全の確保に必要な措置を講ずるように努めるものとする。


女性労働者は男性労働者と同様に深夜業に従事することが可能であり、女性が夜間に通勤したり、夜間、人気のない職場で業務を遂行しなければならないことも考えられます。

このため、事業主は、深夜業に従事する女性労働者の通勤及び業務の遂行の際における防犯面からの安全を確保することが必要です。

また、既に在職している女性労働者を新たに深夜業に従事させる場合には、子どもの養育又は家族の介護などの事情に配慮することが求められます。

具体的に事業主が講ずるべき措置については、「深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針」及び関係法令により、以下のように定められています。

  1. 通勤及び業務の遂行の際における安全の確保
    送迎バスの運行、公共交通機関の運行時間に配慮した勤務時間の設定、従業員駐車場の防犯灯の整備、防犯ベルの貸与等を行うことにより、深夜業に従事する女性労働者の通勤の際における安全を確保するよう努めること。
    また、防犯上の観点から、深夜業に従事する女性労働者が一人で作業をすることを避けるよう努めること。
    (女性の就業環境指針2の⑴)
  2. 子の養育又は家族の介護等の事情に関する配慮
    雇用する女性労働者を新たに深夜業に従事させようとする場合には、子の養育又は家族の介護、健康等に関する事情を聴くこと等について配慮するよう努めること。
    (女性の就業環境指針2の⑵)
    また、子の養育又は家族の介護を行う一定範囲の労働者が請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜業をさせてはならないこと。
    (育児・介護休業法第 19 条第1項、第 20 条、女性の就業環境指針2の⑵)
  3. 仮眠室、休養室等の整備
    夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき又は労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるときは、男性用と女性用に区別して、適当な睡眠又は仮眠の場所を設けること。
    また、男性用と女性用に区別して便所及び休養室等を設けること。
    (労働安全衛生法第 23 条、女性の就業環境指針2の⑶)
  4. 健康診断等
    深夜業を含む業務に常時従事させようとする労働者を雇い入れる際、又は深夜業への配置替えを行う際及び6か月以内ごとに1回、定期に、医師による健康診断を行うこと。
    また、健康診断の結果、当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された場合には、医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、深夜以外の時間帯における就業への転換、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずること。
    (労働安全衛生法第 66 条、第 66 条の5、女性の就業環境指針2の⑷)
    なお、妊産婦が請求した場合には、深夜業をさせてはならないこと。
    (労働基準法第 66 条、女性の就業環境指針2の⑷)

以上のように、「深夜業に従事する女性労働者の、通勤及び業務の遂行における安全を確保するよう努めること」については、施行規則の中で示されていることがわかりますね。

よって、選択肢④は正しいと判断でき、除外することになります。

⑤ 男女労働者間に生じている格差解消を目的とした、女性労働者のみを対象とした取扱いや特別な措置を禁止すること

こちらは法第8条に関する内容になっていますね。

関連する条項も併せて挙げておきましょう。


(女性労働者に係る措置に関する特例)
第八条 前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。

(性別を理由とする差別の禁止)
第五条 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

第六条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
三 労働者の職種及び雇用形態の変更
四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新


均等法は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置については、法違反とならない旨を明記しています。

すなわち、これまでの女性労働者に対する取扱いなどが原因で職場に事実上生じている男女間格差を解消する目的で女性のみを対象としたり女性を有利に取り扱う以下の措置については、法第8条に定める措置として、法第5条及び第6条の規定には違反しません(なお、男性労働者については、一般にこのような状況にはないことから、男性労働者についての特例は設けられていません)。

  1. 募集及び採用
    女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分における募集又は採用に当たって、情報の提供について女性に有利な取扱いをすること、採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用することその他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること。
  2. 配置
    一つの雇用管理区分における女性労働者が同じ雇用管理区分の男性労働者と比較して相当程度少ない職務に新たに労働者を配置する場合に、その配置のために必要な資格試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して配置すること、その他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。
  3. 昇進
    一つの雇用管理区分における女性労働者が同じ雇用管理区分の男性労働者と比較して相当程度少ない役職への昇進に当たって、その昇進のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して昇進させること、その他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。
  4. 教育訓練
    一つの雇用管理区分における女性労働者が同じ雇用管理区分の男性労働者と比較して相当程度少ない職務又は役職に従事するに当たって必要とされる能力を付与する教育訓練に当たって、その対象を女性労働者のみとすること、女性労働者に有利な条件を付すこと、その他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。
  5. 職種の変更
    一つの雇用管理区分における女性労働者が同じ雇用管理区分の男性労働者と比較して相当程度少ない職種への変更について、その職種の変更のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、変更の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して職種の変更の対象とすること、その他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。
  6. 雇用形態の変更
    一つの雇用管理区分における女性労働者が同じ雇用管理区分の男性労働者と比較して相当程度少ない雇用形態への変更について、その雇用形態の変更のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、変更の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して雇用形態の変更の対象とすること、その他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。
    ※「雇用管理区分」とは職種、資格、雇用形態、就業形態等の労働者についての区分であって、当該区分に属している労働者と他の区分に属している労働者と異なる雇用管理を行うことを予定して設定しているものをいいます。雇用管理区分が同じかどうかについては、当該区分に属する労働者の従事する職務の内容、転勤を含めた人事異動の幅や頻度等について、同じ区分に属さない労働者との間に客観的・合理的な違いが存在しているかどうかにより判断するものであり、その判断に当たっては形式ではなく、企業の雇用管理の実態に即して行う必要があります。
    ※「相当程度少ない」とは、日本の全労働者に占める女性労働者の割合を考慮して、4割を下回っていることをいいます。4割を下回っているかについては、雇用管理区分ごとに判断するものです。

以上のように、「男女労働者間に生じている格差解消を目的とした、女性労働者のみを対象とした取扱いや特別な措置を禁止すること」は誤った内容であると言えます。

私は大学教員として働いていた時期もありますが、大学教員の雇用では、よく「同程度である場合は女性を積極的に雇用する」という旨の記載が多く見られます。

それも、こうした条項に基づいたものになりますね。

よって、選択肢⑤が誤っていると判断でき、こちらを選択することになります。

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