公認心理師 2024-110

基本的な労働条件に関する事項を定めている法律を選択する問題です。

思い浮かんだ法律が、そのまま正解という素直すぎる問題です。

問110 労働時間、休憩、休日など、基本的な労働条件に関する事項を定めている法律を1つ選べ。
① 職業安定法
② 労働基準法
③ 労働組合法
④ 労働契約法
⑤ 労働安全衛生法

選択肢の解説

① 職業安定法

どの法律でもそうですが、だいたい一番最初にその法律の「目的」が記載されています。

それを抜き出しつつ、各法律では何が定められているかを述べていきましょう。


(法律の目的)
第一条 この法律は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)と相まつて、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が関係行政庁又は関係団体の協力を得て職業紹介事業等を行うこと、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割に鑑みその適正な運営を確保すること等により、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もつて職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。


職業安定法は、労働市場において職業紹介事業等の適正な運営を確保するために必要なルールを定めた法律です。

求職者に能力にあった職業の機会を与え、産業に必要な労働力を充足して、経済及び社会の発展に寄与することを目的としています。

法律の目的に則り、職業紹介、労働者募集、労働供給について、定められています。

以上より、職業安定法は「労働時間、休憩、休日など、基本的な労働条件に関する事項を定めている法律」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 労働基準法

労働基準法とは、1947年に制定された、労働条件に関する最低基準を定めた法律のことです。

労働基準法をもとに内閣の政令「時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」や厚生労働省令「労働基準法施行規則」などが制定されています。

労働基準法は冒頭に「目的」が設定されていないので、目次を見ていきましょう。


労働基準法目次
第一章 総則
第二章 労働契約
第三章 賃金
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
第五章 安全及び衛生
第六章 年少者
第六章の二 妊産婦等
第七章 技能者の養成
第八章 災害補償
第九章 就業規則
第十章 寄宿舎
第十一章 監督機関
第十二章 雑則
第十三章 罰則
附則


このように、労働基準法では、労働契約において生じる労働者の権利と雇用者の義務を全13章でまとめています。

主な内容は以下のとおりです。

  • 労働条件の明示(労基法第15条)
  • 解雇の予告(労基法20条)
  • 賃金支払いの4原則(労基法24条)
  • 労働時間の原則(労基法32条)
  • 休憩(労基法34条)
  • 休日(労基法35条)
  • 時間外および休日の労働(労基法36条)
  • 時間外、休日および深夜労働の割増賃金(労基法37条)
  • 年次有給休暇(労基法39条)
  • 就業規則(労基法89条)
  • 制裁規定の制限(労基法91条)
  • 周知義務(労基法106条)
  • 労働者名簿の作成(労基法107条)
  • 賃金台帳の作成(労基法108条)
  • 労働関係に関する重要な記録の保存(労基法109条)

この内容からもわかる通り、労働基準法は「労働時間、休憩、休日など、基本的な労働条件に関する事項を定めている法律」であることがわかります。

よって、選択肢②が適切と判断できます。

③ 労働組合法

まずは法律の目的を見ていきましょう。


(目的)
第一条 この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
2 刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十五条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。


要するに「労働組合法」とは、労働者が労働組合を組織し、使用者と対等な交渉ができるよう関係性を定める法律のことです。

労働者を守る法律の一つで「労働基準法」や「労働関係調整法」と合わせて「労働三法」と呼ばれており、 労働者と会社が協力して職場の問題を解決し、より良い職場と労働条件を実現していくための法律です。

以上より、労働組合法は「労働時間、休憩、休日など、基本的な労働条件に関する事項を定めている法律」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ 労働契約法

まずは法律の目的を見ていきましょう。


(目的)
第一条 この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。


労働基準法が、最低労働基準を定め、罰則をもってこれの履行を担保しているのに対し、労働契約法は個別労働関係紛争を解決するための私法領域の法律になります。

民法の特別法としての位置づけとしての性格を持つため、履行確保のための労働基準監督官による監督・指導は行われず、刑事罰の定めはなく、行政指導の対象ともなりません。

法制定の背景として、就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定され、又は変更される場合が増加するとともに、個別労働関係紛争が増加していることが挙げられます。

しかしながら、日本においては、最低労働基準については労働基準法に規定されているが、個別労働関係紛争を解決するための労働契約に関する民事的なルールについては、民法及び個別の法律において部分的に規定されているのみであり、体系的な成文法は存在していませんでした。

このため、個別労働関係紛争が生じた場合には、それぞれの事案の判例が蓄積されて形成された判例法理を当てはめて判断することが一般的となっていたが、このような判例法理による解決は、必ずしも予測可能性が高いとは言えず、また、判例法理は労働者及び使用者の多くにとって十分には知られていないものでした。

個別労働関係紛争の解決のための手段としては、裁判制度に加え、平成13年10月から個別労働関係紛争解決制度が、平成18年4月から労働審判制度が施行されるなど、手続面における整備が進んできていました。

このような中、個別の労働関係の安定に資するため、労働契約に関する民事的なルールの必要性が一層高まり、今般、労働契約の基本的な理念及び労働契約に共通する原則や、判例法理に沿った労働契約の内容の決定及び変更に関する民事的なルール等を一つの体系としてまとめるべく、労働契約法が制定されたわけです。

労働契約法の制定により、労働契約における権利義務関係を確定させる法的根拠が示され、労働契約に関する民事的なルールが明らかになり、労働者及び使用者にとって予測可能性が高まるとともに、労働者及び使用者が法によって示された民事的なルールに沿った合理的な行動をとることが促されることを通じて、個別労働関係紛争が防止され、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することが期待されるものです。

以上のように、労働契約法は「労働時間、休憩、休日など、基本的な労働条件に関する事項を定めている法律」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ 労働安全衛生法

まずは法律の目的を見ていきましょう。


(目的)
第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。


労働安全衛生法は「職場における労働者の安全と健康を確保」するとともに、「快適な職場環境を形成する」目的で制定された法律です。

また、その手段として「労働災害の防止のための危害防止基準の確立」「責任体制の明確化」「自主的活動の促進の措置」など総合的、計画的な安全衛生対策を推進するとしています。

上記のように、労働基準法から独立分離した法律ですね。

このように労働安全衛生法は、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律であり、本問の「労働時間、休憩、休日など、基本的な労働条件に関する事項を定めている法律」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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