公認心理師 2022-26

職場におけるパワーハラスメントの3つの要素に関する問題です。

この指針は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の第30条の2を基盤に作成されたものになりますね。

問26 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年、厚生労働省)が示す、職場におけるパワーハラスメントの3つの要素に該当するものを1つ選べ。
① 上司による部下への行為
② 行為者が正規雇用労働者であるもの
③ ひどい暴言や名誉棄損などの精神的な攻撃
④ その行為により労働者の就業環境が害されるもの
⑤ 当該労働者が通常就業している事業場で行われた行為

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なし

解答のポイント

事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の内容を把握している。

選択肢の解説

① 上司による部下への行為
② 行為者が正規雇用労働者であるもの
③ ひどい暴言や名誉棄損などの精神的な攻撃
④ その行為により労働者の就業環境が害されるもの
⑤ 当該労働者が通常就業している事業場で行われた行為

本指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)で明確に定義されていますが「職場におけるパワーハラスメント」とは、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境が害されること」を指します。

そして、職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものを指します。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しないとされています。

個別の事案についてその該当性を判断するに当たっては、指針2(5)で総合的に考慮することとした事項(後述)のほか、当該言動により労働者が受ける身体的又は精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要とされています。

さて、上記が職場におけるパワーハラスメントの概要になりますが、この前提を踏まえて細かいところも見ていきましょう。

まず、この指針の2(2)に記載のある「職場」に関してですが、これは事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については「職場」に含まれます。

単に通常業務している場所だけが「職場」ではないということですね(選択肢⑤の正誤判断になります)。

この指針の2(3)に記載のある「労働者」の定義ですが、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てを指します

これには派遣労働者も対象に含まれるものであり、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該者に派遣労働者が職場におけるパワーハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒む等、当該派遣労働者に対する不利益な取扱いをしてはならないとされています。

このように対象の労働者は正規雇用の労働者に限定されないことがわかりますね(選択肢②の正誤判断になります)。

本指針の2(4)に記載のある「優越的な関係を背景とした」言動に関してですが、これは当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者(以下「行為者」)に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指し、例えば、以下のもの等が含まれます。

  • 職務上の地位が上位の者による言動
  • 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
  • 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの

このように、単に上司部下という関係性だけではないことがわかりますね(選択肢①の正誤判断になります)。

また、指針の2(5)には「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動に関する記載があり、これは社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指し、例えば、以下のもの等が含まれます。

  • 業務上明らかに必要性のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂行するための手段として不適当な言動
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当とされています。

また、その際には、個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要です。

指針2(6)には「労働者の就業環境が害される」に関する記載があり、これは当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。

この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当です。

上記の通り、職場におけるパワーハラスメントによって「身体的または精神的苦痛が与えられる」ということが指摘されていますが、具体的な内容も本指針には示されており、大枠だけ抜き出しておきます。

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
  • 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  • 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
  • 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  • 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

このように職場におけるパワーハラスメントは「ひどい暴言や名誉棄損などの精神攻撃」に限定されるものではないことがわかりますね(選択肢③の正誤判断になります)。

以上より、選択肢①~選択肢③、選択肢⑤は職場におけるパワーハラスメントの3つの要素に該当しないと判断でき、選択肢④が該当すると判断できます。

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