公認心理師 2021-130

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」に基づく行動指針である「仕事と生活の調和推進のための行動指針」に関する問題です。

正直、ここまで細かい内容の把握を求めるのは酷だなと感じます(「なんとなく」判断することができなくはないですけど…)。

問130 仕事と生活の調和推進のための行動指針で設けられた、「多様な働き方・生き方が選択できる社会」に必要とされる条件や取組として、不適切なものを1つ選べ。
① パートタイム労働者を正規雇用へ移行する制度づくりをすること
② 就業形態にかかわらず、公正な処遇や能力開発の機会が確保されること
③ 育児、介護、地域活動、職業能力の形成を支える社会基盤が整備されていること
④ 子育て中の親が人生の各段階に応じて柔軟に働ける制度があり、実際に利用できること

解答のポイント

厚生労働省の「仕事と生活の調和推進のための行動指針」について把握している。

選択肢の解説

② 就業形態にかかわらず、公正な処遇や能力開発の機会が確保されること
③ 育児、介護、地域活動、職業能力の形成を支える社会基盤が整備されていること
④ 子育て中の親が人生の各段階に応じて柔軟に働ける制度があり、実際に利用できること

本問に関しては、厚生労働省の「仕事と生活の調和推進のための行動指針」からの出題になっています。

本行動指針は、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」で示す「仕事と生活の調和が実現した社会」を実現するため、企業や働く者、国民の効果的な取組、国や地方公共団体の施策の方針を定めたものです。

仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」です。

具体的には、以下のような社会を目指すべきとしています。

  1. 就労による経済的自立が可能な社会
    経済的自立を必要とする者とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。
  2. 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
    働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。
  3. 多様な働き方・生き方が選択できる社会
    性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。

この3が、本問で問われている内容の基盤となるものですね。

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」のこの部分について、必要とされる条件や取組が「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で示されているわけです。

問題文にある「多様な働き方・生き方が選択できる社会」は、上記の行動指針内の「2「仕事と生活の調和が実現した社会」に必要とされる諸条件」で記されている内容になります。

こちらについて抜き出しましょう。


① 就労による経済的自立が可能な社会
・ 若者が学校から職業に円滑に移行できること。
・ 若者や母子家庭の母等が、就業を通じて経済的自立を図ることができること。
・ 意欲と能力に応じ、非正規雇用から正規雇用へ移行できること。
・ 就業形態に関わらず、公正な処遇や能力開発機会が確保されること。

② 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
・ 企業や社会において、健康で豊かな生活ができるための時間を確保することの重要性が認識されていること。
・ 労働時間関係法令が遵守されていること。
・ 健康を害するような長時間労働がなく、希望する労働者が年次有給休暇を取得できるよう取組が促進されていること。
・ メリハリのきいた業務の進め方などにより時間当たり生産性も向上していること。
・ 取引先との契約や消費など職場以外のあらゆる場面で仕事と生活の調和が考慮されていること。

③ 多様な働き方・生き方が選択できる社会
・ 子育て中の親、働く意欲のある女性や高齢者などが、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様で柔軟な働き方が可能となる制度があり、実際に利用できること。
・ 多様な働き方に対応した育児、介護、地域活動、職業能力の形成等を支える社会的基盤が整備されていること。
・ 就業形態に関わらず、公正な処遇や能力開発機会が確保されること(再掲)。


上記のうち、太字の部分が本問で問われている内容となりますね。

一番上の「子育て中の親、働く意欲のある女性や高齢者などが、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様で柔軟な働き方が可能となる制度があり、実際に利用できること」が選択肢④の内容を指しています。

真ん中の「多様な働き方に対応した育児、介護、地域活動、職業能力の形成等を支える社会的基盤が整備されていること」が、選択肢③の内容を指しています。

一番下の「就業形態に関わらず、公正な処遇や能力開発機会が確保されること」が、選択肢②の内容を指しています。

このように、選択肢②、選択肢③および選択肢④は、「多様な働き方・生き方が選択できる社会」に必要とされる条件や取組として適切と判断でき、除外することになります。

① パートタイム労働者を正規雇用へ移行する制度づくりをすること

こちらの内容は「仕事と生活の調和推進のための行動指針」の「3 各主体の取組」で示されている内容となります。

ここでは「仕事と生活の調和の実現の取組は、個々の企業の実情に合った効果的な進め方を労使で話し合い、自主的に取り組んでいくことが基本であるが、我が国の社会を持続可能で確かなものとすることに関わるものであることから、国と地方公共団体も、企業や働く者、国民の取組を積極的に支援するとともに、多様な働き方に対応した子育て支援や介護などのための社会的基盤づくりを積極的に行う」とされています。


(1)企業、働く者の取組

(総論)
・ 経営トップがリーダーシップを発揮し、職場風土改革のための意識改革、柔軟な働き方の実現等に取り組む。
・ 労使で仕事と生活の調和の実現に向けた目標を定めて、これに計画的に取り組み、点検する仕組みを作り、着実に実行する。
・ 労使で働き方を見直し、業務の進め方・内容の見直しや個人の能力向上等によって、時間当たり生産性の向上に努める。企業は、雇用管理制度や人事評価制度の改革に努める。働く者も、職場の一員として、自らの働き方を見直し、時間制約の中でメリハリのある働き方に努める。
・ 管理職は率先して職場風土改革に取り組み、働く者も職場の一員としてこれに努める。
・ 経営者、管理職、働く者は、自らの企業内のみならず、関連企業や取引先の仕事と生活の調和にも配慮する。
・ 働く者は、将来を見据えた自己啓発・能力開発に取り組み、企業はその取組を支援する。
・ 労使団体等は連携して、民間主導の仕事と生活の調和に向けた気運の醸成などを行う。
・ 労使は、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ、労働契約を締結し、又は変更すべきものとする。

(就労による経済的自立)
・ 就職困難者等を一定期間試行雇用するトライアル雇用などを活用しつつ、人物本位による正当な評価に基づく採用を行う。
・ パート労働者等については正規雇用へ移行しうる制度づくり等を行う。
・ 就業形態に関わらず、公正な処遇や積極的な能力開発を行う。

(健康で豊かな生活のための時間の確保)
・ 時間外労働の限度に関する基準を含め、労働時間関連法令の遵守を徹底する。
・ 労使で長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進など、労働時間等の設定改善のための業務の見直しや要員確保に取り組む。
・ 社会全体の仕事と生活の調和に資するため、取引先への計画的な発注、納期設定に努める。

(多様な働き方の選択)
・ 育児・介護休業、短時間勤務、短時間正社員制度、テレワーク、在宅就業など個人の置かれた状況に応じた柔軟な働き方を支える制度の整備、それらを利用しやすい職場風土づくりを進める。
・ 男性の子育てへの関わりを支援・促進するため、男性の育児休業等の取得促進に向けた環境整備等に努める。
・ 女性や高齢者等が再就職や継続就業できる機会を提供する。
・ 就業形態に関わらず、公正な処遇や積極的な能力開発を行う。


このように、本選択肢の内容は「(1)企業、働く者の取組」の中の「就労による経済的自立」の項目に記載がありますね。

以上より、選択肢①が「多様な働き方・生き方が選択できる社会」に必要とされる条件や取組として不適切と判断でき、こちらを選択することになります。

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