ワーク・ファミリー・コンフリクトとして、不適切なものを1つ選ぶ問題です。
ワーク・ファミリー・コンフリクトは、ブループリントにあるワーク・ライフ・バランスと関連ある概念だと考えられます。
ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と家庭生活をうまく調和させることを指しますが、これは実際にはなかなか難しいお話です。
ワーク・ファミリー・コンフリクトは、その難しさに関する概念とも言えますね。
本問の解説にあたっては、以下の資料を参考にしました。
これらをまとめ、その上で選択肢の解説に入っていきます。
解答のポイント
ワーク・ファミリー・コンフリクト概念を把握していること。
ワーク・ファミリー・コンフリクトとは
ワーク・ファミリー・コンフリクトは「仕事領域と家庭領域の役割圧力が互いに両立不可能な際に起こる役割間葛藤の一形態」と定義され、一方の領域における役割への参加が、もう一方の領域での役割遂行を妨げることを意味しており、個人が仕事と家庭生活を両立する過程で、どれほどの困難を感じているかを捉えようとするものです。
ワーク・ファミリー・コンフリクトを生じさせる大きな要因として挙げられるのは、労働時間と勤務量、業務負担など、職業関連要因です。
労働時間・業務量・業務負担が多いほど、ワーク・ファミリー・コンフリクトが高くなる傾向は多くの先行研究で確認されています。
近年は個人が経験するワーク・ファミリー・コンフリクトの水準が高くなってきているとされています。
その背景には、女性就業の増加、教育水準の上昇、仕事完遂への時間的圧力の増加、自由時間の減少といったさまざまな社会要因があるとされています。
コンフリクトには、仕事から家庭生活に対しての葛藤(ワーク・ファミリー・コンフリクト:WFC)と家庭生活から仕事に対しての葛藤(ファミリー・ワーク・コンフリクト:FWC)という2つの方向があります。
上記文献では、Small&Riley(1990)を基にWFCとFWCの質問項目を作成しています。
参考になりそうなので、以下に転記します。
【仕事から家庭生活に対しての葛藤(WFC)】
- 仕事のせいで、夫婦関係が悪くなっている
- 仕事のために、夫/妻と話したりゆっくり過ごす時間がない
- 仕事で疲れてしまい、夫/妻と話をする気力がなくなる
- 仕事のために、子どもの世話ができない
- 仕事のことが気になって、子どもにしっかりと向き合うことができない
- 仕事から帰った後は疲れていて、子どもと遊ぶ元気がない
- 仕事のために、家事がおろそかになる
- 仕事が忙しくて、家事をする時間が少なくなる
- 仕事で疲れてしまい、家事をする元気がない
【家庭生活から仕事に対しての葛藤(FWC)】
- 夫/妻が希望するので、十分働くことができない
- 夫/妻としての役割を果たすことに疲れて、仕事がおろそかになる
- 自分がもっと働こうとすると、夫/妻が反対する
- 家庭で父/母親としての役割を果たすために、仕事を制限せざるをえない
- 子育てのために、仕事量をおさえなくてはいけない
- 子どもと過ごす時間をつくるために、長い時間働けない
- 家事をすることが、仕事にさしつかえる
- 家事のことが気になって、仕事に集中できない
- 家事をすることで疲れてしまい、仕事に十分取り組めない
上記以外にも、上記の金井論文には以下のような具体例が示されています。
- 子供が熱を出した時に、誰が迎えに行くかという問題
- 大切なプレゼンテーションのある日に家人が体調を崩す
- 仕事で疲れ切ってしまって、家事をやる気力がない
- 介護で寝ずの看病をし、翌日職場で眠気がとまらない
- 学校の教師が家庭でも、親としてではなく、教師として子供に接してしまい、親として関わることが難しい
これらの例は、実は本問の選択肢そのものなのでしっかりと押さえておきたいですね。
選択肢の解説
『①仕事が忙しすぎたり、家事・育児の負担が大きい』
ワーク・ファミリー・コンフリクトは、一方の領域における役割への参加が、もう一方の領域での役割遂行を妨げることを意味します。
本選択肢の内容は「仕事が忙しすぎる」「家事・育児の負担が大きい」ということのみが示されており、仕事と家庭生活の互いの領域への影響については触れられていません。
よって、選択肢①はワーク・ファミリー・コンフリクトとして不適切と判断できますから、こちらを選択することが求められます。
『②徹夜で家族の看病をして、職場で居眠りをしてしまう』
『④仕事で大事な会議がある日に、子どもが熱を出したため会議に出席できない』
これらの選択肢は、家庭生活から仕事に対しての葛藤(FWC)ですね。
つまり、家庭の領域における役割への参加が、仕事の領域での役割遂行を妨げている状態です。
これらは代表的なワーク・ファミリー・コンフリクトと見なすことができます。
よって、選択肢②および選択肢④はワーク・ファミリー・コンフリクトとして適切と判断できますから、これらは除外することが求められます。
『③仕事で疲れ切ってしまい、家族に食事を作る気力がない』
『⑤教師が、教師として自分の子どもにも接してしまい、親として接することが難しい』
これらの選択肢は、仕事から家庭生活に対しての葛藤(WFC)ですね。
つまり、仕事の領域における役割への参加が、家庭の領域での役割遂行を妨げている状態です。
これらは代表的なワーク・ファミリー・コンフリクトと見なすことができます。
よって、選択肢③および選択肢⑤はワーク・ファミリー・コンフリクトとして適切と判断できますから、これらは除外することが求められます。