産業・組織領域に関する項目については、臨床心理士でほとんど出ていないこと、臨床領域として実践する機会が少ないことなどから、どうしても縁遠いものになっています。
ここでは、出しやすそうな項目について記載していこうと思います。
【Münsterberg】
まずはWundtのもとで学び、その後「産業心理学の父」と呼ばれるようになったMünsterbergについてです。
彼は以下の枠組みをもとに、経済界における心理学の応用を考えました。
①最適な人材の選抜
②最良の仕事方法
③最高の効果発揮
つまりは、人と技術の適合を図ったわけですね。
ミュンスターバーグの仕事は数多くあり、証言の信憑性に関する知見、ミュンスターバーグ錯視、ウソ発見器の原理の開発、などなどです。
余談ですが、同じくWundtから教えを受けたScottは広告や人事領域における心理学の応用を進めました。
彼は「広告心理学」の創始者で、説得的コミュニケーションなどが有名です。
これらのように、心理学の知見を他の領域で応用する心理学を「応用心理学」と総称します。
【科学的管理法】
ミュンスターバーグの考えに影響を受けたTaylor,F.は、ムリ・ムダ・ムラのない管理法の確立を目指し、「時間研究」および「動作研究」を行いました(二つ合わせて「作業研究」と呼ぶ)。
◎時間研究
生産工程における作業を「要素動作」と呼ばれる細かい動作に分解し、その各動作にかかる時間をストップウオッチを用いて計測して標準的作業時間を算出する方法論。
生産工程における標準的作業時間を設定し、これに基づいて1日の課業を決定するための研究を指します。
◎動作研究
個々の動作を観察・分析し、作業目的に照らして無駄な動作を排除し、最適な動作を追求する研究。作業に使う工具や手順などの標準化のための研究を指します。
テイラーの管理法は「科学的管理法」と呼ばれ、20世紀初頭から1930年代にかけて管理の主流として世界に広まりました。
作業の単純化・専門化・標準化を目指すあまり、人間性疎外という問題が指摘されている。
【ホーソン研究】
ホーソン工場では、科学的管理法の影響下で、照明条件や休憩条件、作業時間などの物理的環境の変化が生産能率にどのような影響を及ぼすかを調べる一連の実験が行われました(途中から研究に加わったMayoが中心人物)。
結果は意外にも、こうした物理的な要因と生産性との対応関係について見出せませんでした。
この研究において重要だったのが、実験に参加した従業員たちの、自分たちが周囲から注目されているという意識でした。
このような現象は後に「ホーソン効果」と呼ばれるようになりました。
ホーソン研究の結果から、テイラーらによる科学的管理法を批判し、組織における人間的側面の重要性を重視し、人間関係論を展開しました。
ここから、リーダーシップ、動機づけ、職務満足感、モラール(集団としてのやる気)、コミュニケーションといった人事管理に主要な領域が出発することになります。