司法面接

司法面接とは、子ども(および障害者など社会的弱者)を対象に、以下の3つの目的を持って行う面接のことです。
主に子どもが関わる事件、事故、虐待事案などで行われます。

司法面接の定義

司法面接は「法的な判断のために使用することのできる精度の高い情報を、被面接者の心理的負担に配慮しつつ得るための面接法」と定義することができます。
狭義の司法面接は、その歴史的背景から、子どもの被害者・目撃者を対象としてきました。
しかし、司法の場で用いる情報収集のための面接法という観点から言えば、被疑者への接見、取り調べ、大人の被害者や目撃者からの事情聴取、法廷での尋問なども司法面接の範疇に含まれると言えます。

司法面接の目的と特徴

司法面接にはいくつかの種類がありますが、①正確な情報をより多く引き出すこと、②子どもへの精神的負担を最小限にすることは共通の目的であり、それが最大限生かされるように工夫されています。
司法面接の特徴は、以下のようなものとされます。
記憶の変容や汚染が起きないように、また供述が変遷しないように、できるだけ早い時期に、原則として1度だけ面接を行う。
面接を繰り返さないですむように、録画・録音という客観的な方法で記録する。
面接は、子どもに圧力をかけたり、誘導・暗示を与えたりすることのないように、自由報告を主とする構造化された方法を用いる。
これも子どもが何度も面接を受けることを防ぐためであるが、複数の期間が連携して、1度で面接を行うか、面接の録画を共有できるようにする。
事項では、上記についてもう少し詳しく述べていきます。

司法面接の特徴:自由報告を求める

法的判断に役立つ正確な情報を引き出すには、誘導や暗示の影響を最小限にしなければなりません。
面接における誘導・暗示は、面接者の言葉に由来することが多いです。
これを避けるため、被面接者自身にできる限り語ってもらうことが重要です。

まずは質問の種類については以下の通りです。
オープン質問:
「話してください」「そして」「それで」など。
より正確で、より多くの情報を含んでいる。
WH質問(焦点化質問):
「いつ」「どこで」「だれが」など。
応答は短くなりがちだが、その内容は比較的正確である。
クローズド質問(選択肢の提示):
「はい」「いいえ」あるいはAかBか等で答える選択式の質問。
誘導質問:
「~ですね」等の「はい」を誘発する質問。質問の「~ですね」が「はい」を引き出すタグとして機能するので、タグ質問とも呼ばれる。
クローズド質問および誘導質問への応答は短いものになりがちである。また、質問に含まれる命題(「Aですか?」に対して「Aである」)への黙従が起きたり、質問に含まれる命題が記憶を汚染するなどの可能性がある。
これらの知見を踏まえ、オープン質問を用いて子どもの自由報告を最大限得ようとすることが、司法面接の特徴の1つと言えます。

司法面接の特徴:ゆるやかな構造化

子どもを面接室に連れて来て「話してください」と問いかけても、子どもは何を話せばよいのかわからないかもしれません。
そこで、多くの面接法が次の4つの段階を踏んで行われます。
ラポールの形成:
話しやすい関係性を築く。
自由報告:
「今日は何を話しに来ましたか」などの誘いかけにより、自発的な報告を求める。
質問:
自由報告で全ての情報が得られない場合、必要に応じて質問を行う。
①オープン質問
②WH質問
③クローズド質問
④確認・誘導質問(ここまでで、疑われる内容が報告されない場合、「叩かれたことがありますか」「誰が叩きましたか」などの疑われる内容についてのクローズド質問を行う。イギリスでは、疑われる内容についてのクローズド質問を「誘導質問」と呼ぶ)
クロージング:
子どもからの質問や希望を受け、感謝して終了する。
これらは一方向ではなく、ラポール形成後でも自由報告がうまくなされなければ、ラポール形成に戻ることもあり得ます。
各段階を行きつ戻りつしながら行われるということです。

司法面接の構造

導入の段階では、以下のような「最小限の手続き」を行います。
導入には7~8分ほどに要するとされます。
挨拶・説明:
子どもが面接室に入ってきたら、面接者はドアまで出向いて子どもを暖かく迎え入れ、椅子に座らせ、自己紹介を行い、面接の目的を告げる。
グラウンドルールの説明:
①「今日は本当のことを話すのが大切です」
②「質問の意味がわからなければ「わからない」と言ってください」
③「質問の答えを知らなければ「知らない」と言ってください」
④「私が間違ったことを言ったら「間違っているよ」と言ってください」
⑤「私はその場にいなかったので何があったかわかりません。どんなことでも○○さんの言葉で全部話してください」
ラポール形成:
「○○さんは何をするのが好きですか」などのように、安心して話せるような関係性を築く。
出来事を思い出して話す練習:
司法面接ではエピソード記憶が重要だが、意味記憶との混乱が生じることも多い。
そこで、過去の出来事を思い出して話す練習をしてもらう。
例えば「今朝起きて、ここに来るまでにあったことを、全部思い出して話してください」と記憶喚起を求め、子どもが話し始めたら、それを遮ることなく聞いていく。
こうした手続きの上で、本題に入っていきます。

自由報告ではオープン質問により、子どもから、問題となっている出来事の報告を得ます。
上述の通り、自由報告だけでは十分でない場合には、他の質問形式も活用します。
一定の情報が得られ、さらなる情報を得るためにクローズド質問を用いる必要が出てきたならば、面接者はブレイクを取ります。

ブレイクとは「中断」「休み時間」という意味で、その間に面接者はモニター室などにいるバックスタッフと話し合い、欠けている情報や明確にすべき情報について、どう尋ねるかについて支援を受けます。
そして、必要に応じてクローズド質問等を行っていくこともあります。

クローズド質問・誘導質問になりやすいが、確認せずにおくことが不適切な情報は以下の通りです。
加害者の言葉:
脅しや口止めをしていたかどうかは、被疑者の意図を推察する上で重要。
その場に誰がいたか:
他に加害者がいないか、目撃者や被害者がいないか確認する。
子どもがこの出来事について、他の誰かに報告しているかどうか:
すでに開示があれば、その人物からも情報収集ができる。
疑われる出来事について何も話さなかった場合の質問:
「○○さんは叩かれたことがありますか」などのように被疑者の名前は伏せて尋ねる方がよい。そこで「はい」と答えれば、オープン質問によって更に情報を得る。
これらの手法を用いて情報を収集し、それが十分であればクロージングになります。
あるいは上記の質問をしても情報を得ることができなくてもクロージングになります。
クロージングでは、報告してくれたことに対して感謝するとともに、他の面接者が知っておいた方がよいこと、子どもが話しておきたいこと、子どもからの質問などを受けます。

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