公認心理師 2024-134

犯罪被害者等基本法に関する問題です。

ちょっとややこしい内容になっていますね。

問134 犯罪被害者等基本法の内容として、正しいものを2つ選べ。
① 刑事補償金の支給は、基本的施策である。
② 犯罪被害者等による刑事手続への参加の要件が定められている。
③ 保健医療サービス及び福祉サービスの提供は、基本的施策である。
④ 犯罪被害者等による公判記録の閲覧及び謄写のための要件が定められている。
⑤ 「犯罪等」とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。

選択肢の解説

⑤ 「犯罪等」とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。

犯罪被害者等基本法とは、犯罪被害者の権利や利益を守る目的で2004年に成立した法律であり、被害者の支援や保護などを国策として行います。

犯罪被害者のための施策を総合的かつ計画的に推進することによって、犯罪被害者等(犯罪やこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為の被害者及びその家族又は遺族)の権利利益の保護を図ることを目的として2004年に成立しました。

犯罪被害者等基本法では、以下の3つを基本理念としています。

  1. すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。
  2. 犯罪被害者等のための施策は、被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。
  3. 犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、講ぜられるものとする。

そして、この法律では、国や地方公共団体およびその他の関係機関、民間の団体等が連携して犯罪被害者のための施策(相談及び情報の提供、損害賠償の請求についての援助、犯罪被害給付金の支給に係る制度の充実、保健医療サービス・福祉サービスの提供、犯罪被害者等の二次被害防止・安全確保、居住・雇用の安定、刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備 等)を定めていますが、具体的施策は、犯罪被害者等基本計画に基づいて行われます。

ここではまず、法律の冒頭に示されていることが多い、定義などに関する選択肢から解説していきましょう。

犯罪被害者等基本法の第2条を引用します。


(定義)
第二条 この法律において「犯罪等」とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
2 この法律において「犯罪被害者等」とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。
3 この法律において「犯罪被害者等のための施策」とは、犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるよう支援し、及び犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするための施策をいう。


上記の通り、この法律において犯罪等とは「犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為」を指しています。

単に犯罪行為のみならず、それに準ずる行為も範疇に含めていることが特徴的ですね。

もう少し具体的に見ていくと以下のようになります。

  • 「犯罪」とは、個人の生命、身体または財産上に危害を及ぼす行為など、刑法その他の刑罰法規により、刑罰を科せられる行為。
  • 「これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為」とは、刑罰を科せられる行為ではないが、それに類似する行為であって、行為の相手方の心身に有害な影響を及ぼす性質を有する行為。例えば、以下のような行為が該当。
    (1)「ストーカー行為等の規制等に関する法律」に規定されているつきまとい等で、反復しない程度のものであっても、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる行為をいい、具体的には、特定の人に対して、つきまとい、見張りをするなど、不安を抱かせること。
    (2)「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」に規定されている「身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」をいい、具体的には、人格を否定するような暴言などの精神的暴力等。
    (3)「児童虐待の防止等に関する法律」に規定されている「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食」等をいい、具体的には、適切な食事を与えず、子どもの健康・安全への配慮を怠ること。

これらをひっくるめて「犯罪等」と呼んでいるわけですね。

以上より、選択肢⑤は正しいと判断できます。

① 刑事補償金の支給は、基本的施策である。
② 犯罪被害者等による刑事手続への参加の要件が定められている。
③ 保健医療サービス及び福祉サービスの提供は、基本的施策である。
④ 犯罪被害者等による公判記録の閲覧及び謄写のための要件が定められている。

ここでは、第2章の内容を全部引用しておきましょう。


第二章 基本的施策
(相談及び情報の提供等)
第十一条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするため、犯罪被害者等が直面している各般の問題について相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行い、犯罪被害者等の援助に精通している者を紹介する等必要な施策を講ずるものとする。
(損害賠償の請求についての援助等)
第十二条 国及び地方公共団体は、犯罪等による被害に係る損害賠償の請求の適切かつ円滑な実現を図るため、犯罪被害者等の行う損害賠償の請求についての援助、当該損害賠償の請求についてその被害に係る刑事に関する手続との有機的な連携を図るための制度の拡充等必要な施策を講ずるものとする。
(給付金の支給に係る制度の充実等)
第十三条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が受けた被害による経済的負担の軽減を図るため、犯罪被害者等に対する給付金の支給に係る制度の充実等必要な施策を講ずるものとする。
(保健医療サービス及び福祉サービスの提供)
第十四条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が心理的外傷その他犯罪等により心身に受けた影響から回復できるようにするため、その心身の状況等に応じた適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講ずるものとする。
(安全の確保)
第十五条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が更なる犯罪等により被害を受けることを防止し、その安全を確保するため、一時保護、施設への入所による保護、防犯に係る指導、犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に証人等として関与する場合における特別の措置、犯罪被害者等に係る個人情報の適切な取扱いの確保等必要な施策を講ずるものとする。
(居住の安定)
第十六条 国及び地方公共団体は、犯罪等により従前の住居に居住することが困難となった犯罪被害者等の居住の安定を図るため、公営住宅(公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)第二条第二号に規定する公営住宅をいう。)への入居における特別の配慮等必要な施策を講ずるものとする。
(雇用の安定)
第十七条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等の雇用の安定を図るため、犯罪被害者等が置かれている状況について事業主の理解を深める等必要な施策を講ずるものとする。
(刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等)
第十八条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするため、刑事に関する手続の進捗ちよく状況等に関する情報の提供、刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずるものとする。
(保護、捜査、公判等の過程における配慮等)
第十九条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等の保護、その被害に係る刑事事件の捜査又は公判等の過程において、名誉又は生活の平穏その他犯罪被害者等の人権に十分な配慮がなされ、犯罪被害者等の負担が軽減されるよう、犯罪被害者等の心身の状況、その置かれている環境等に関する理解を深めるための訓練及び啓発、専門的知識又は技能を有する職員の配置、必要な施設の整備等必要な施策を講ずるものとする。
(国民の理解の増進)
第二十条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、犯罪被害者等が置かれている状況、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏への配慮の重要性等について国民の理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする。
(調査研究の推進等)
第二十一条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等に対し専門的知識に基づく適切な支援を行うことができるようにするため、心理的外傷その他犯罪被害者等が犯罪等により心身に受ける影響及び犯罪被害者等の心身の健康を回復させるための方法等に関する調査研究の推進並びに国の内外の情報の収集、整理及び活用、犯罪被害者等の支援に係る人材の養成及び資質の向上等必要な施策を講ずるものとする。
(民間の団体に対する援助)
第二十二条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等に対して行われる各般の支援において犯罪被害者等の援助を行う民間の団体が果たす役割の重要性にかんがみ、その活動の促進を図るため、財政上及び税制上の措置、情報の提供等必要な施策を講ずるものとする。
(意見の反映及び透明性の確保)
第二十三条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等のための施策の適正な策定及び実施に資するため、犯罪被害者等の意見を施策に反映し、当該施策の策定の過程の透明性を確保するための制度を整備する等必要な施策を講ずるものとする。


まず基本的施策に含まれているのが上記のとおりであり、特に重要になるのが以下です。

  • 相談及び情報の提供等(第11条)
  • 損害賠償の請求についての援助等(第12条)
  • 給付金の支給に係る制度の充実等(第13条)
  • 保健医療サービス・福祉サービスの提供(第14条)
  • 犯罪被害者等の二次被害防止・安全確保(第15条)
  • 居住・雇用の安定(第16~17条)
  • 刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等(第18条)等

ですから、まず選択肢①の「刑事補償金の支給」は含まれておらず、選択肢③の「保健医療サービス及び福祉サービスの提供」は含まれていることがわかりますね。

ややこしいのが選択肢④の「犯罪被害者等による公判記録の閲覧及び謄写のための要件が定められている」というものですが、犯罪被害者等基本法で定められているのは「刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等」についてです。

あくまでも「制度の整備等をやっていくんだよ!」という範囲のものであり、具体的な要件などが犯罪被害者等基本法で示されているわけではありません。

それは選択肢②の「犯罪被害者等による刑事手続への参加の要件が定められている」についても同様になります。

あくまでも「基本法」ですから、大枠に関する規定が中心であり、細かいところは別の法律で定められることになるわけです(教育基本法と学校教育法の関係も、そんな感じですよね)。

さて、そうなると選択肢①の「刑事補償金の支給」、選択肢②の「犯罪被害者等による刑事手続への参加の要件」、選択肢④の「犯罪被害者等による公判記録の閲覧及び謄写のための要件」などは何で定められているのか、という疑問が出てきますね。

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律では、第3章に以下が定められています。


第三章 公判記録の閲覧及び謄写
(被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)
第三条 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。
2 裁判所は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
3 第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。
(同種余罪の被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)
第四条 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、次に掲げる者から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、第一号又は第二号に掲げる者の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合であって、犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができる。
一 被告人又は共犯により被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われたこれと同一又は同種の罪の犯罪行為の被害者
二 前号に掲げる者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹
三 第一号に掲げる者の法定代理人
四 前三号に掲げる者から委託を受けた弁護士
2 前項の申出は、検察官を経由してしなければならない。この場合においては、その申出をする者は、同項各号のいずれかに該当する者であることを疎明する資料を提出しなければならない。
3 検察官は、第一項の申出があったときは、裁判所に対し、意見を付してこれを通知するとともに、前項の規定により提出を受けた資料があるときは、これを送付するものとする。
4 前条第二項及び第三項の規定は、第一項の規定による訴訟記録の閲覧又は謄写について準用する。


このように、選択肢④の「犯罪被害者等による公判記録の閲覧及び謄写のための要件」については、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律で定められていることがわかります。

続いて、選択肢②の「犯罪被害者等による刑事手続への参加の要件が定められている」ですが、こちらは刑事訴訟法が根拠法の内容ですね。

具体的に抜き出すと以下の通りです。


第三節 被害者参加
第三百十六条の三十三 裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。
一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
二 刑法第百七十六条、第百七十七条、第百七十九条、第二百十一条、第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二十七条までの罪
三 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)
四 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)第四条、第五条又は第六条第三項若しくは第四項の罪
五 第一号から第三号までに掲げる罪の未遂罪
② 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
③ 裁判所は、第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。)が当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に該当せず若しくは該当しなくなつたことが明らかになつたとき、又は第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため当該被告事件が同項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなつたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して被告事件の手続への参加を認めることが相当でないと認めるに至つたときも、同様とする。
第三百十六条の三十四 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができる。
② 公判期日は、これを被害者参加人に通知しなければならない。
③ 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士が多数である場合において、必要があると認めるときは、これらの者の全員又はその一部に対し、その中から、公判期日に出席する代表者を選定するよう求めることができる。
④ 裁判所は、審理の状況、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の数その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができる。
⑤ 前各項の規定は、公判準備において証人の尋問又は検証が行われる場合について準用する。
第三百十六条の三十五 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についてのこの法律の規定による検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができる。この場合において、検察官は、当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは、必要に応じ、当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならない。
第三百十六条の三十六 裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申出をした者がその証人を尋問することを許すものとする。
② 前項の申出は、検察官の尋問が終わつた後(検察官の尋問がないときは、被告人又は弁護人の尋問が終わつた後)直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら尋問する場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
③ 裁判長は、第二百九十五条第一項から第四項までに規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする尋問が第一項に規定する事項以外の事項にわたるときは、これを制限することができる。
第三百十六条の三十七 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して第三百十一条第二項の供述を求めるための質問を発することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であつて、審理の状況、申出に係る質問をする事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すものとする。
② 前項の申出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら供述を求める場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
③ 裁判長は、第二百九十五条第一項、第三項及び第四項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする質問が第一項に規定する意見の陳述をするために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは、これを制限することができる。
第三百十六条の三十八 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。
② 前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
③ 裁判長は、第二百九十五条第一項、第三項及び第四項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述が第一項に規定する範囲を超えるときは、これを制限することができる。
④ 第一項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。
第三百十六条の三十九 裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項(同条第五項において準用する場合を含む。第四項において同じ。)の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、被害者参加人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、被害者参加人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、被害者参加人に付き添わせることができる。
② 前項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者は、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。
③ 裁判所は、第一項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者が、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがあると認めるに至つたときその他その者を被害者参加人に付き添わせることが相当でないと認めるに至つたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。
④ 裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、被害者参加人が被告人の面前において在席、尋問、質問又は陳述をするときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、弁護人が出頭している場合に限り、被告人とその被害者参加人との間で、被告人から被害者参加人の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。
⑤ 裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその被害者参加人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。


ちょっと長いのでわかりにくいですが、こちらのコラムなどがわかりやすいかもしれません。

このように、「犯罪被害者等による刑事手続への参加の要件が定められている」のは犯罪被害者等基本法ではないことがわかります。

最後に選択肢①の「刑事補償金の支給」については、刑事補償法に定められています。

内容はさまざまですが、代表的な第4条を挙げておきましょう。


(補償の内容)
第四条 抑留又は拘禁による補償においては、前条及び次条第二項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付する。懲役、禁錮こ若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。
2 裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであつた利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない。
3 死刑の執行による補償においては、三千万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付する。ただし、本人の死亡によつて生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額に三千万円を加算した額の範囲内とする。
4 裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、同項但書の証明された損失額の外、本人の年齢、健康状態、収入能力その他の事情を考慮しなければならない。
5 罰金又は科料の執行による補償においては、既に徴収した罰金又は科料の額に、これに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ徴収の日の翌日の法定利率による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。労役場留置の執行をしたときは、第一項の規定を準用する。
6 没収の執行による補償においては、没収物がまだ処分されていないときは、その物を返付し、既に処分されているときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付し、また、徴収した追徴金についてはその額にこれに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ徴収の日の翌日の法定利率による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。


このように、刑事補償金の支給は犯罪被害者等基本法の内容ではないことがわかりますね。

以上より、選択肢①、選択肢②および選択肢④は犯罪被害者等基本法の内容として誤りと判断でき、選択肢③が正しいと判断できます。

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