公認心理師 2020-101

少年犯罪の統計に関する問題です。

主に犯罪白書(令和元年度)を参考に解説していきます。

犯罪白書をすべて理解しなくても良いのですが、大まかな傾向については一読して理解しておくことをお勧めします。

問101 2016年(平成 28年)から 2018年(平成30年)までの少年による刑法犯犯罪について、正しいものを1つ選べ。
① 検挙人員は減少している。
② 共犯者がいるものは60%以上である。
③ 検挙されたもののうち、学生・生徒は30%以下である。
④ 14歳から15歳の検挙人員は、16歳から17歳の検挙人員よりも多い。
⑤ 殺人・強盗・放火・強制性交等(強姦)の凶悪事件は10%程度である。

解答のポイント

犯罪白書の内容を把握している。

少年犯罪の「大まかな傾向(ある程度年数が経っても変わっていない特徴)」について把握している。

選択肢の解説

① 検挙人員は減少している。
④ 14歳から15歳の検挙人員は、16歳から17歳の検挙人員よりも多い。

これらは犯罪白書の「(1)年齢層別動向 ア 年齢層別検挙人員・人口比の推移」を見ていきます。


平成期における各年齢層の人口比の推移は、平成10年及び15年頃に一時的な上昇があったものの、全体としては低下傾向にある。昭和46年以降、年少少年の人口比が、全年齢層の中で最も高かったものの、平成28年以降は中間少年が最も高く、30年の中間少年の人口比は393.3であった。


この資料を見る限り、検挙人数は下がっていっていることが見て取れますね。

少し小さくて見にくいですが、平成28年から平成30年にかけて下降線をたどっているのがわかります。

この点が選択肢①の正誤判断の資料となりますね。

犯罪白書では、刑法犯で警察に検挙された14歳以上の少年を、年長少年(18歳~19歳)、中間少年(16歳~17歳)、年少少年(14歳~15歳)の三段階に分けています。

本選択肢の「14歳から15歳」は年少少年で、「16歳から17歳」は中間少年に該当します。

上記の引用にもある通り、少年犯罪の中で最も割合が高いのが中間少年であり、次いで年少少年になります。

この点が選択肢④の正誤判断の材料になりますね。

以上より、検挙人員は減少していること、少年犯罪の割合では中間少年が最も高いことが示されています。

よって、選択肢①が正しいと判断でき、選択肢④は誤りと判断できます。

② 共犯者がいるものは60%以上である。

こちらについては犯罪白書の「4 共犯事件」を見ていきます。


図は平成元年・15年・30年における刑法犯の検挙事件(触法少年の補導件数を含まない。また、捜査の結果、犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く)のうち、少年のみによる事件(少年の単独犯又は少年のみの共犯による事件)での共犯率(共犯による事件数の占める比率をいう)・共犯者数別構成比を見るとともに、30年については,これらを更に主な罪名別に見たものである。


このように平成30年の共犯率は21.8%であり、本選択肢の「60%以上」はむしろ単独犯の割合を示していると言えます。

本問は「2016年(平成 28年)から 2018年(平成30年)までの少年による刑法犯犯罪について」ですから、念のため犯罪白書の平成29年版で平成28年のデータを見ましたが、共犯率は23%と平成30年と大きくかけ離れた数字ではないことがわかります。

ただし、恐喝や強盗といった犯罪の共犯率は高いので(とはいえ、60%以上にはならない)、犯罪種別によって多少の違いがあることは知っておいてよさそうです。

放火や強制わいせつなどは圧倒的に単独犯ですね。

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。

③ 検挙されたもののうち、学生・生徒は30%以下である。

こちらについては犯罪白書の「(4)就学・就労状況」を参照していきます。


平成元年・15年・30年における犯罪少年による刑法犯の検挙人員の就学・就労状況別構成比を見ると図のとおりである。元年及び15年では、学生・生徒の割合は、それぞれ78.0%、77.1%であったところ、30年では67.8%(前年比2.2pt低下)であった。


上記の通り、平成30年の学生・生徒の割合は67.8%ですので、本選択肢の「30%以下」は誤りであることがわかりますね。

「30%」という数値は、むしろ学生・生徒以外(有職少年・無職少年)に近いものです。

念のため、平成28年の犯罪白書で同様のデータを確認したところ「学生・生徒 71.3%」となっていましたので、やはり本選択肢のデータは誤りとなりますね。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。

⑤ 殺人・強盗・放火・強制性交等(強姦)の凶悪事件は10%程度である。

こちらは犯罪白書の「3 罪名別動向」を参照していきます。


平成元年・15年・30年における少年による刑法犯の検挙人員(男女別)及び少年比を罪名別に見ると表のとおりである。女子比を罪名別に見ると、元年及び15年は、詐欺がそれぞれ30.6%、32.6%と最も高かったが、30年は12.8%に低下しており、殺人が34.2%と最も高くなっている。少年比について見ると、30年の総数は14.5%と、元年と比べて43.1pt、15年と比べて27.1pt低下している。罪名別では、少年比が最も高いのは、元年は窃盗(67.0%)であったが、15年及び30年は住居侵入(それぞれ51.3%,26.6%)であった。30年の総数の少年比は元年及び15年と比べて低下している一方、30年の詐欺は11.5%と、元年と比べて3.7pt、15年と比べて4.4pt上昇した。なお、特殊詐欺による少年の検挙人員は、近年増加傾向にあり、30年は749人(前年比269人増)と特殊詐欺による検挙人員全体の27.9%を占めている。


この資料を見ると、総数が「30939件」になっており、殺人・強盗・放火・強制性交等(強姦)の合計件数は「38件+271件+69件+171件=549件」になります。

割合で言えば、約1.8%程度であることがわかりますね。

ここまでの計算をしていなくても、少年犯罪では窃盗が圧倒的に多いことはずっと続いている傾向ですから把握しておきたいところです。

いわゆる自転車泥棒などが多くなるわけです。

正確な数字を知らなくても、他の犯罪種別の割合を把握していることで解きやすくなる問題と言えるでしょう。

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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