公認心理師 2018-106

我が国の少年院制度について、正しいものを1つ選ぶ問題です。
少年院は、「刑罰」ではなく、少年に健全な社会復帰をさせるための「矯正教育」を受けさせる施設となります。

旧少年院法は1949年に施行された少年院の運営に関する法律だが、施設運営の透明化・被収容少年の権利・義務と職員権限の明確化等のため、2014年に抜本的改正が行われ、2015年から現行の「少年院法」と「少年鑑別所法」が施行されました。

これによって、それまで訓令・通達等だった事項が法律で明確に規定されました。

以下のような図も覚えておくと良いでしょう。

上記を踏まえつつ、選択肢の検証を行っていきます。

解答のポイント

少年院法の内容、特に少年法における家庭裁判所の決定からの流れについて把握していること。

選択肢の解説

『①少年院に受刑者を収容することはできない』

一般に受刑者とは、刑事施設の被収容者のうち自由刑すなわち懲役刑、禁錮刑又は拘留刑の執行のため刑事施設に拘置されている者を指します。

少年院法に入る少年(在院者)は、「保護処分在院者」と「受刑在院者」です(少年院法第2条)。
選択肢内にある受刑者とは、上記の「受刑在院者」を指していると思われ、その定義としては以下のように記されています。
少年法第五十六条第三項の規定により懲役若しくは禁錮の刑の執行を受けるため少年院に収容されている者又は国際受刑者移送法第二十一条の規定により適用される少年法第五十六条第三項の規定により国際受刑者移送法第十六条第一項各号の共助刑の執行を受けるため少年院に収容されている者をいう」

そして、上記の少年法第56条第3項を見てみましょう。
懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳に満たない少年に対しては、刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。この場合において、その少年には、矯正教育を授ける

すなわち逆送され、実刑判決が下って少年刑務所のような刑事施設に収容されることが決まっても、年齢が16歳に達していない場合は、達するまでのあいだ少年院において刑を執行(この間は矯正教育)することになります。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

『②14歳未満の者でも少年院に送致されることがある』

2003年には長崎男児誘拐殺人事件、2004年には佐世保小6女児同級生殺害事件が発生し、少年法が改正され、少年院送致の下限年齢が14歳以上から「おおむね12歳以上」に引き下げられました

少年法第24条には「家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分をしなければならない。ただし、決定の時に十四歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第三号の保護処分をすることができる」とされており、上記の第三号に該当するのが少年院になります。

少年院法第4条にある少年院種別の記載でも、この点は明示されています。
  • 第一種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの(次号に定める者を除く)
  • 第二種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの
  • 第三種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの
  • 第四種 少年院において刑の執行を受ける者

すなわち、おおむね12歳から少年院に送致可能であると言えます。
ちなみに「おおむね」とされているのは、例えば11歳だったとしても、その事件の内容に照らして少年院送致が適当と家庭裁判所が判断することがあり得るということです。

以上より、選択肢②は正しいと言えます。

『③1つの少年院に2年を超えて在院することはできない』

少年法第26条の4で「家庭裁判所は、前項の規定により二十歳以上の者に対して第二十四条第一項第三号(家庭裁判所への送致)の保護処分をするときは、その決定と同時に、本人が二十三歳を超えない期間内において、少年院に収容する期間を定めなければならない」と定められております。
この期間に関する具体的な数字は示されておりません。

少年院法第30条には矯正教育課程の期間について言及されています。
「法務大臣は、在院者の年齢、心身の障害の状況及び犯罪的傾向の程度、在院者が社会生活に適応するために必要な能力その他の事情に照らして一定の共通する特性を有する在院者の類型ごとに、その類型に該当する在院者に対して行う矯正教育の重点的な内容及び標準的な期間を定めるものとする」
こちらでもやはり期間に関する具体的な数字はありません。

ただし、少年院の収容期間等の処遇内容については、家庭裁判所が処遇に関して保護処分の決定をした後も細かい注文を出すことができるという規定があります(少年審判規則第38条)。
家庭裁判所が、少年をどの少年院に送致するかを指定しますが(少年審判規則37条1項)、このとき、通常は一緒に収容期間についての処遇勧告もすることになっています。
審判の時に処遇勧告を行い、その執行にあたる少年鑑別所・少年院もこれを尊重するという運用を確立しました。

大きく分けて短期処遇・長期処遇の2つがあり、短期処遇はさらに「特修短期処遇」と「一般短期処遇」とに分かれます。
特修短期処遇の収容期間は4ヶ月以内であり、一般短期処遇の少年よりも非行の傾向が進んでいない少年が該当します。
一般短期処遇の収容期間は原則として6ヶ月以内であり、少年の持つ問題性がそれほど大きくなく、短期間の少年院における指導と訓練により、その矯正と社会復帰を期待できる少年が該当します。

長期処遇には以下のようなものがあります。

  • 比較的短期:10か月程度
  • 期間についての処遇勧告なし(単に「長期」):おおむね1年
  • 比較的長期:通常の期間(おおむね1年)を超え、2年以内
  • 相当長期:2年を超える期間

更に、法務省からの「保護処分在院者の個人別矯正教育計画の策定等について(通達)」では、2年を超える矯正教育の期間を設定する場合の取扱いが示されております。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。

『④少年院は20歳を超える前に少年を出院させなければならない』

まずは、少年院法第4条にある少年院種別にこの点は明示されています。
  • 第一種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの(次号に定める者を除く)
  • 第二種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの
  • 第三種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの
  • 第四種 少年院において刑の執行を受ける者
上記のような規定がある以上、選択肢④の内容には明らかに誤りと言えます。
また年齢については、少年院法の中にいくつか定めがあります。
少年院法第137条には以下のように記載があります。
少年院の長は、保護処分在院者が二十歳に達したときは退院させるものとし、二十歳に達した日の翌日にその者を出院させなければならない。ただし、少年法第二十四条第一項第三号の保護処分に係る同項の決定のあった日から起算して一年を経過していないときは、その日から起算して一年間に限り、その収容を継続することができる
上記の通り、20歳で退院させることが基本ですが、少年法第24条第1項第3号による保護処分の決定から1年経過していない場合は収容継続可能になります。
更に少年院法第137条第2項では以下のように示されています。
更生保護法第七十二条第二項前段の規定により家庭裁判所が少年院に収容する期間を定めた保護処分在院者については、前項の規定は適用しない
こちらは仮退院となった者が少年院に差し戻し収容される場合の記載となります。

加えて、少年院法第138条には「二十三歳までの収容継続」が、第139条には「二十三歳を超える収容継続」に関する条項が定められています。

よって、20歳で退院させることが基本ですが、この手続がとられて裁判所が収容継続の決定をしたときには、先の処遇期間を超えて少年院に収容することができることになっていますので、選択肢内にあるように「させなければならない」とは言えません。
以上のように、選択肢④は誤りと言えます。

『⑤少年院法で定められた少年院の種類のうち、第2種は女子少年を収容する施設である』

この選択肢には2点ほど誤りがあります。

まず1点目は第2種少年院の定義です。
少年院法第4条には、少年院の種類について以下のような記載があります。

  • 第一種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの(次号に定める者を除く)
  • 第二種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの
  • 第三種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの
  • 第四種 少年院において刑の執行を受ける者
上記のように、選択肢の内容は第2種少年院の説明に誤りがあります。
ちなみに少年院法第5条「在院者の分離」の第2項には、性別における分離について示されています。
「在院者は、性別に従い、互いに分離するものとする」
もう1点は「女子少年」という表現です。
「少年」という定義としては、児童福祉法第4条第3号の「小学校就学の始期から、満18歳に達するまでの者」や、少年法第2条第1項の「20歳に満たない者」という定義があります。
そしてこれらの法律内において「少年」という用語は男子・女子に関係なく用います
少年法および少年院法のいずれにも、少年の定義として「女子」もしくは「少女」といった表現はされていません
よって「女子少年」という表現自体が不自然とも言えます。
ちなみに少年院法において「女子」という表現が使われているのは、第21条「識別のための身体検査」の第2項になります。

「女子の在院者について前項の規定により検査を行う場合には、女子の指定職員がこれを行わなければならない。ただし、女子の指定職員がその検査を行うことができない場合には、男子の指定職員が少年院の長の指名する女子の職員を指揮して、これを行うことができる」
以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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