学校心理学における心理教育的援助サービスに関する問題です。
もうお馴染みの問題と言っても良いでしょう。
問129 学校心理学における心理教育的援助サービスの一次的援助として、適切なものを1つ選べ。
① いじめ加害者への対応
② 入学前のオリエンテーション
③ 不登校児童生徒への家庭訪問
④ 学習意欲が低下した児童生徒への支援
解答のポイント
学校心理学における心理教育的援助サービスについて把握している。
選択肢の解説
① いじめ加害者への対応
② 入学前のオリエンテーション
③ 不登校児童生徒への家庭訪問
④ 学習意欲が低下した児童生徒への支援
心理教育的援助サービスには以下の3段階があるとされています。
- 一次的援助サービス:
「すべての子ども」を対象に行われる発達促進的、予防的援助サービスを指します。
予防的援助サービスは、ある場面で多くの生徒が出会う問題を予測して前もって援助することを指し、発達促進的サービスは、生徒の一般的な適応能力(学習スキル、対人関係能力等)野発達を促進するサービスを指します。 - 二次的援助サービス:
登校しぶり、学習意欲の低下、孤立など、学校生活で苦戦している、もしくは転校生などの苦戦する可能性が高い「一部の子ども」を対象に行います。
早期発見、早期対応が鍵となります。 - 三次的援助サービス:
不登校、いじめ、非行、虐待などの問題状況によって特別な援助ニーズを持つ「特定の子ども」を対象に行われます。
一人ひとりの子どもの問題状況は異なるため、それぞれの子どもの状況について心理アセスメントを行い、具体的な援助を組み立てながら問題の解決にあたります。
教育・援助目標(長期の目標、短期の目標)を立ててそれを達成するための教育計画を作り実践していきます。
更に石隈(1995)は、心理教育的援助サービスの担い手はスクールカウンセラーだけでなく、教師や保護者も含むとし、3段階のヘルパーのモデルを示しています。
- 一次的ヘルパー:
心理教育的援助サービスを主たる仕事とする専門家を指す。授業は行わず心理教育アセスメント、カウンセリング、コンサルテーションを主に行う。 - 二次的ヘルパー:
仕事や役割の一部として心理教育的援助サービスを行う者のこと。学校の教職員や保護者が該当する。 - 三次的ヘルパー:
援助する生徒や援助のパートナー(教師や保護者)にとって援助的に働いている者を指す。友人などが該当します。
上記のような様々なヘルパーがチームとして援助にあたることが望ましいとされています。
これらを踏まえて、各選択肢を見ていきましょう。
選択肢①の「いじめ加害者」や選択肢③の「不登校児童生徒」は、特別な援助ニーズを持つ「特定の子ども」であると見なすのが自然であり、彼らへの対応は三次的援助サービスに該当することになります。
また、選択肢④の「学習意欲が低下した児童生徒」は、学校生活に苦戦している「一部の子ども」になると考えられ、彼らの早期発見・早期対応は二次的援助サービスに該当します。
そして、選択肢②の「入学前のオリエンテーション」は、全ての子どもを対象にしているものであり、ここで予防的オリエンテーションを行い、問題の発生を防ぐことが大切であり、こちらが一次的援助サービスになります。
就学時健診での保護者説明会などがこちらに該当することになり、スクールカウンセラーはこうした機会に講演・研修を行うことで、「学校とはどういう場なのか」「どういう体験を経て子どもたちが社会的成熟を成し遂げるのか」「その時の親の役割とは何か」などを、発達的な視点だけでなく、教育とは何をする場なのかという考えをもって説明することが求められます。
一次的援助サービス=予防的オリエンテーションが効果的なのは、「学校がどういう場なのかを知っていれば、子どもへの対応が適切になる」という保護者が実はたくさんいるという事実に基づいています。
そして、子どもに対して適切な対応、学校との節度をもった付き合い方ができる保護者が増えるほど、「課題や問題の多い家庭」も周囲に合わせて適切な形で子どもや学校と関わることが増えたり、課題や問題が周囲との比較で明るみに出て早期に対応することが可能になるなどの利点があります。
いずれにせよ、問題が起こってからの対応だけでなく、問題が起こらないようにする対応というのが学校では求められるということですね。
以上より、選択肢①、選択肢③および選択肢④は不適切と判断でき、選択肢②が適切と判断できます。