学校運営協議会制度に基づくコミュニティ・スクールについて、正しいものを1つ選ぶ問題です。
まず「コミュニティ・スクール」についての把握が重要になります。
コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は、学校と地域住民等が共に学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校づくり」への転換を図るための仕組みとされています。
学校に学校運営協議会をおき、学校の運営、管理、改革などにつき審議、提言、実施を推進していく仕組みであり、その名称や権限の在り方は、国や時代によって異なります。
このコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の根拠法は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」になり、同法一部改正により、2017年4月から教育委員会にコミュニティ・スクール導入が努力義務化されました。
この改正に伴い、学校運営協議会にはさまざまな権限が付与されております。
その代表が、校長が作成する学校運営の基本方針について承認する、学校運営について教育委員会や校長に意見を述べることができる、教職員の任用に関して教育委員会に意見を述べることができるということです。
この権限については、さまざまな懸念や反対意見もあるようです。
私の個人的な懸念としては「市場の原理を教育に持ち込むことにならないか」という点ですが、それについて述べると試験解説の本筋から外れるので止めておきましょう。
この辺についてはより詳しく論じている人もおられるでしょうから、興味のある方は調べてみてください(試験には出ませんけど)。
上記の点を踏まえ、各選択肢の検証に移っていきます。
解答のポイント
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の第47条の6の内容を把握していること。
選択肢の解説
『①協議会は全校に設置が義務付けられている』
第47条の6第1項には以下のように規定があります。
「教育委員会は、教育委員会規則で定めるところにより、その所管に属する学校ごとに、当該学校の運営及び当該運営への必要な支援に関して協議する機関として、学校運営協議会を置くように努めなければならない。ただし、二以上の学校の運営に関し相互に密接な連携を図る必要がある場合として文部科学省令で定める場合には、二以上の学校について一の学校運営協議会を置くことができる」
上記の通り、学校運営協議会を置くことは「法的義務」ではなく「努力義務」となっています。
よって、選択肢①は誤りと判断できます。
『②協議会の委員は、地域の住民から選出し校長が任命する』
第47条の6第2項には「学校運営協議会の委員は、次に掲げる者について、教育委員会が任命する」とし、各号の規定が示されております。
- 対象学校(当該学校運営協議会が、その運営及び当該運営への必要な支援に関して協議する学校をいう。以下この条において同じ)の所在する地域の住民
- 対象学校に在籍する生徒、児童又は幼児の保護者
- 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第九条の七第一項に規定する地域学校協働活動推進員その他の対象学校の運営に資する活動を行う者
- その他当該教育委員会が必要と認める者
上記の通り、協議会の委員として地域住民はその第1号に含まれております。
ただし、任命するのは「校長」ではなく「教育委員会」です。
一方で、第47条の6第3項には「対象学校の校長は、前項の委員の任命に関する意見を教育委員会に申し出ることができる」とされており、校長の意見が反映されることが示唆されております。
学校運営協議会は、あくまでも「合議体」としての意見を示すことが求められます。
よって「個人的意見」と「合議体としての意見」の弁別が可能である人物であることが求められますから、当然ですが「誰でもいい」というわけでもないのはわかると思います。
よって、選択肢②は誤りと判断できます。
『③協議会は教職員の任用に関して、教育委員会に意見を述べることができる』
第47条の6第7項には、以下のように規定されています。
「学校運営協議会は、対象学校の職員の採用その他の任用に関して教育委員会規則で定める事項について、当該職員の任命権者に対して意見を述べることができる。この場合において、当該職員が県費負担教職員(第五十五条第一項又は第六十一条第一項の規定により市町村委員会がその任用に関する事務を行う職員を除く)であるときは、市町村委員会を経由するものとする」
更に、同条第8項には以下のように記載があります。
「対象学校の職員の任命権者は、当該職員の任用に当たつては、前項の規定により述べられた意見を尊重するものとする」
上記より、選択肢③が正しいと判断できます。
『④協議会の委員に、当該学校に在籍する児童生徒の保護者を任命することは控える』
第47条の6第2項には「学校運営協議会の委員は、次に掲げる者について、教育委員会が任命する」とし、各号の規定が示されております。
- 対象学校(当該学校運営協議会が、その運営及び当該運営への必要な支援に関して協議する学校をいう。以下この条において同じ)の所在する地域の住民
- 対象学校に在籍する生徒、児童又は幼児の保護者
- 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第九条の七第一項に規定する地域学校協働活動推進員その他の対象学校の運営に資する活動を行う者
- その他当該教育委員会が必要と認める者
上記の通り、児童生徒の保護者は上記の第2号に含まれております。
「保護者代表」という枠組みとして参与する形になるので、PTA会長などになることも多いでしょう。
よって、選択肢④は誤りと判断できます。
『⑤協議会が協議の結果を積極的に関係者に提供することは、児童生徒に影響するため控える』
第47条の6第5項には以下のように規定されています。
「学校運営協議会は、前項に規定する基本的な方針に基づく対象学校の運営及び当該運営への必要な支援に関し、対象学校の所在する地域の住民、対象学校に在籍する生徒、児童又は幼児の保護者その他の関係者の理解を深めるとともに、対象学校とこれらの者との連携及び協力の推進に資するため、対象学校の運営及び当該運営への必要な支援に関する協議の結果に関する情報を積極的に提供するよう努めるものとする」
上記の通り、児童生徒に対して学校運営についての協議結果を積極的に提供するということになっています。
よって、選択肢⑤は誤りと判断できます。