絶対的扶養義務者に該当するものを選択する問題です。
扶養とは何か、絶対的‐相対的の違いは、などについて理解しておくことが大切ですね。
問33 民法上の規定に基づき、絶対的扶養義務者に該当するものを1つ選べ。
① 祖父母
② 子の配偶者
③ 配偶者の父母
④ 父母の兄弟姉妹
⑤ 兄弟姉妹の配偶者
選択肢の解説
① 祖父母
② 子の配偶者
③ 配偶者の父母
④ 父母の兄弟姉妹
⑤ 兄弟姉妹の配偶者
民法第877条第1項では、直系血族および兄弟姉妹は、お互いに扶養をする義務がある旨が定められています。
そして、夫婦間にも相互協力扶助義務の一環として、扶養義務があると解されています。
(扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
法律上、当然に扶養義務を負う規定のされ方から、これらの者の間における扶養義務は「絶対的扶養義務」といわれています。
ちなみに「直系血族」とは、本人の直系の血族、つまり、本人の父母、祖父母、曽祖父母、高祖父母、子、孫、曽孫、玄孫などのことを指します。
この「絶対的扶養義務」に対して、上記の第877条第2項にある、特別の事情があるときは家庭裁判所の審判によって3親等内の親族間においても扶養義務を負わせることができるという規定は「相対的扶養義務」と呼ばれます。
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このことを踏まえれば、本問の「民法上の規定に基づき、絶対的扶養義務者に該当するもの」は選択肢①の「祖父母」になることがわかりますね。
よって、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢①が適切と判断できます。
ここでは上記に加えて、扶養義務とは何を意味するのかについて基本的な事項を理解していきましょう。
扶養義務とは、自分の稼ぎだけでは生活を成立させることができない親族がいる場合に、仕送りや現物支給などにより、経済的な援助を行う義務を意味します。
扶養義務者は、被扶養者から扶養を請求された場合には、協議または家庭裁判所の判断により、一定の経済的援助を行わなければなりません。
(扶養の程度又は方法)
第八百七十九条 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。
未成年の子どもや高齢、傷病、失業などの理由で経済的な自立が困難な親族がいる場合、扶養義務者は原則としてその親族に対して経済的な援助をしなければならないということですね。
扶養義務には「生活保持義務」と「生活扶助義務」の2種類があり、それぞれの内容は以下のとおりです。
- 生活保持義務:扶養義務者と同じ水準の生活を被扶養者にも保障する義務
- 生活扶助義務:扶養義務者の生活に支障のない範囲で被扶養者を扶養する義務
生活保持義務を負っているのは「被扶養者の配偶者」や「未成年の子どもを養っている両親」などです。
一方で、生活扶助義務は「被扶養者の兄弟姉妹」や「成人している子供の両親」などが負っています。
親族が経済的に困窮しているときは、自分自身にどちらの扶養義務があるのかを確認し、その範囲内で経済的な支援をすることになります。
ちなみに、この扶養義務と絡んでくるのが生活保護についてです。
つまり、扶養義務と生活保護のどちらが優先されるのか、というお話ですね。
生活保護とは、生活に困窮している人々に対し、憲法が定める健康で文化的な最低限度の生活を保障するために援助する制度のことであり、経済的に生活が苦しいときは、所定の要件を満たしていれば自治体に申請をすると、生活保護を受給することが可能です。
生活保護法の第4条2項では「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と定められています。
つまり、生活が苦しいときは生活保護を申請するよりも優先して、扶養義務者に経済的な支援を求める必要があるということです。
このため、生活保護の申請をすると、自治体から申請者の扶養義務者に「経済的な支援はできますか?」という旨が記載された照会状が届くことがあります(これを「扶養照会」といいます)。
こういう「扶養義務の範囲」に関する知識は、資格試験などでも出しやすいでしょうから理解しておくと良いですね。