公認心理師 2024-144

事例の状況における地域包括支援センターの対応を選択する問題です。

見立てのための情報が「不足しているか否か」という判断は、実践上とても大切なものですね。

問144 55歳の男性A、80歳の母親Bと二人暮らし。民生委員Cから、AとBについての相談が地域包括支援センターに寄せられた。Cによると、AとBは仲の良い家族として知られていた。数年前まで、一緒に買い物や団地の行事に出かける二人と話をすることも多かった。しかし、半年前からBが外出する姿を全く見かけなくなった。また、1か月前から怒鳴り声や悲鳴、皿が割れる音などが部屋から時折聞こえるようになった。気になったCが部屋を訪ねると、Aは玄関先に出て来たが、「母も自分も元気です」と素気なく返事をするだけであった。室内にはゴミが散乱していた。
 現時点における地域包括支援センターの対応として、優先されるものを1つ選べ。
① 介護サービス利用の促進
② 自立支援型マネジメント
③ 地域ケア推進会議の開催
④ 介護予防ケアマネジメント
⑤ 事実確認のための家庭訪問

選択肢の解説

① 介護サービス利用の促進
② 自立支援型マネジメント
③ 地域ケア推進会議の開催
④ 介護予防ケアマネジメント
⑤ 事実確認のための家庭訪問

本事例においては、現時点でわかっていることを把握しておくことが重要になります。

  • 55歳の男性A、80歳の母親Bと二人暮らし。
  • 元々、仲の良い家族であり、民生委員は出かける二人と話をすることも多かった。
  • 半年前からBが外出する姿を全く見かけなくなった。
  • 1か月前から怒鳴り声や悲鳴、皿が割れる音などが部屋から時折聞こえるようになった。
  • Aは玄関先で「母も自分も元気です」と素気なく返事をするだけであったが、室内にはゴミが散乱していた。

現時点でわかっているのは上記までです。

こうした情報から、Bに何かしら問題が生じ(認知症など)たため、AとBの間でこれまでとは異なる関係性が生まれ、それが不穏な出来事(出かけることがない、怒鳴り声や悲鳴、室内にゴミが散乱)につながっているものの、Aはそのことを認めていない、ということが想定されます。

ただ、これらの情報は現時点で推測に過ぎません。

ですから、介護サービス(要介護や要支援認定を受けた人が、介護保険を利用して受けられるサービス)を利用するよう促すことはありませんし(要介護・要支援認定に至っていないから)、介護予防ケアマネジメント(要介護認定審査で「要支援2」「要支援1」「非該当」と認定された人や、生活機能の低下していて将来的に介護が必要となる可能性が高い人の相談やケアプランを作成)も適用であるか判断できない状況です。

また、地域ケア会議は開催の目的・方法によって大きく、「地域ケア個別会議:個別事例の課題検討」と「地域ケア推進会議:地域に必要な取組を明らかにして施策を立案・提言」に分かれますますが、本事例の状態如何に関わらず「地域ケア推進会議」にかけるのは違う印象が強いですね(施策の立案・提言よりも、個別会議ならば適用っぽい)。

そして、自立支援型マネジメントとは、その名の通り、在宅での生活継続を図るためのものであり、運動機能等が低下し、日常生活における家事などに支援が必要となった高齢者に対して再び自分でできるようになるための機能訓練や生活援助等を提供し、高齢者の生活の質(QOL)を向上させるアプローチを指します。

現時点において、Bがどのような状態であるかわからない以上、そもそも「自立支援が可能であるか否か」を調べる必要があります。

ですから、選択肢⑤の「事実確認のための家庭訪問」が現時点で行うべきものであり、BのADLがどの程度保たれているのか、AとBとの関係で高齢者虐待が生じていないか否か、Aの精神状態はどうか、福祉につなぐことへの抵抗感がどの程度なのか、などを検討していく必要があるわけです。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢④は不適切と判断でき、選択肢⑤が適切と判断できます。

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