公認心理師 2024-130

地域包括ケアシステムに関する問題です。

地域包括ケアシステムについては頻出になりつつありますね。

問130 地域包括ケアシステムについて、適切なものを2つ選べ。
① 住民による自助や互助が含まれる。
② 都道府県を単位として構築されている。
③ 高齢者の入院は、システムの対象外である。
④ 医師の指示書がなくても訪問看護は可能である。
⑤ サービス付き高齢者向け住居の整備が行われている。

選択肢の解説

① 住民による自助や互助が含まれる。
② 都道府県を単位として構築されている。
③ 高齢者の入院は、システムの対象外である。
④ 医師の指示書がなくても訪問看護は可能である。
⑤ サービス付き高齢者向け住居の整備が行われている。

地域包括ケアシステムとは、要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けることができるように地域内で助け合う体制のことです。

以前は、サービス提供者それぞれが独自に高齢者を支える仕組みを設けていましたが、退院や転院などの理由によって、従来のサービス提供者から離れてしまうと、そこでサービスが途切れてしまうのです。

地域包括ケアシステムを取り入れることによって、高齢者を支えるさまざまな人たちが、協力して地域ごとの課題に取り組むようになります。

介護を提供する人たちだけでなく、医療を提供する側や、住宅の専門家や予防サービスの提供者といった、分野の枠を超えて高齢者を支えられるようになるため、地域の実態に即した介護が提供できるのです。

上記は厚生労働省が示している地域包括ケアシステムの図になります。

地域包括ケアシステムは、戦後のベビーブーム時代に生まれた、いわゆる団塊の世代と呼ばれる人たちが、75歳以上の後期高齢者となる2025年を目途に、介護保険の保険者である市町村や都道府県などが中心となり、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて構築していくことが目標です。

地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(具体的には中学校区)を単位として想定されています(ですから、選択肢②の「都道府県を単位として構築されている」は不適切な内容と言えます)。

また、地域包括ケアシステムの構成要素を把握しておきましょう。

地域包括ケアシステムを自助・互助・共助・公助という視点から解説してありますね。

費用負担の視点で言えば、「公助」は税による公の負担、「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担であり、「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。

これに対し、「互助」は相互に支え合っているという意味で「共助」と共通点があるが、費用負担が制度的に裏付けられていない自発的なものになりますね。

具体的には、自助では「自分のことを自分でする」「自らの健康管理(セルフケア)」「市場サービスの購入」、互助には「ボランティア活動」「住民組織の活動」、共助には「介護保険に代表される社会保険制度及びサービス」、公助には「一般財源による高齢者福祉事業等」「生活保護」「人権擁護・虐待対策」などが含まれています。

ですから、選択肢①の「住民による自助や互助が含まれる」というのは適切な内容ということになりますね。

これらを踏まえつつ、他の選択肢も見ていきましょう。

まず、本システムと矛盾になりそうな選択肢③ついて考えてみましょう。

高齢者の入院については、むしろ積極的なシステムとして組み込まれています。

地域包括ケア病棟では、急性期の治療を終えた患者や、何らかの理由で一時的な入院を余儀なくされた患者に対して、在宅復帰に向けて支援したり準備したりしています。

具体的には、以下のような患者が地域包括ケア病棟の対象になります。

  • 急性期病棟で治療を終えたが、経過観察や療養が必要な患者
  • 在宅・生活復帰のために支援が必要な患者
  • 在宅療養していたが、急性疾患により入院が必要になった患者
  • 家族の事情で、在宅療養が一時的に難しくなった患者

また、地域包括ケア病棟の役割は以下の3つあります。

  1. 急性期からの受け入れ:急性期の治療を終えた患者が、在宅復帰・社会復帰するために、リハビリを実施する
  2. 在宅・生活復帰支援:患者が在宅復帰するために、多職種と連携しながら退院調整し、在宅療養の準備を進める
  3. 緊急時の受け入れ:在宅療養中の患者が、一時的に入院が必要になった時に受け入れる

以上のように、地域包括システムにおいて、高齢者の入院はシステムに組み込まれていると言えますね。

続いて、選択肢⑤の「サービス付き高齢者向け住居の整備が行われている」についてです。

上記の図内にも「住まい」の中に自宅・サービス付き高齢者向け住宅等とありますから、サービス付き高齢者向け住宅の整備は地域包括ケアシステムに含まれていることがわかりますね。

サービス付き高齢者向け住居とは以下のような特徴があります。

  • サービスは、少なくとも安否確認・生活相談サービスを提供することが必須だが、それ以外の食事、介護サービスなどは任意。 サ高住は住まいの類型である
  • 介護・医療保険サービスと連携することが重要だが、同一法人が同一建物や隣接で事業所を運営していても、「外付けサービス」であり、別契約となる。
  • 賃貸借契約が多く、居住の安定が図られている。
  • 権利金など徴収不可。
  • 行政による指導監督ができる
  • 建設補助金や税制優遇の延長も検討されている

高齢者が、住み慣れた地域の自宅や集合住宅(自宅と同じような環境)で暮らすことが出来るように、医療と介護の連携をとり、「安易」な施設への移動を防ぐような地域包括システムを作ることが重要になりますから、サービス付き高齢者向け住宅は地域包括ケアシステムに組み込まれているのが自然と言えますね。

最後に選択肢④の「医師の指示書がなくても訪問看護は可能である」を考えていきましょう。

訪問看護は、在宅医療を支えるためになくてはならない存在であり、高齢化の進展にともなって、ますますその役割は拡大しています。

機能的な地域包括ケアシステムを構築するためには、医療機関である病院と在宅医療をつなぐ役割を、訪問看護が担っていかなければなりません。

訪問看護を利用者に提供するには、主治医から訪問看護指示書を交付してもらうことが必要です。

訪問看護は公的保険である介護保険と医療保険のいずれかを利用できますが、保険制度を定めている介護保険法や健康保険法には「主治医による指示を文章で受けなければならない」と定められています。

この訪問看護指示書は、訪問看護業務の承諾、そして指示を示す書類になります。訪問看護指示書の有効期限は、主治医が発行後、6ヶ月となります。

このように、訪問看護を行う場合に、必ず主治医からの「訪問看護指示書」が必要になりますから、選択肢④の内容は不適切と言えますね。

以上より、選択肢②、選択肢③および選択肢④は不適切と判断でき、選択肢①および選択肢⑤が適切と判断できます。

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