公認心理師 2024-103

説明に合致する施設を選択する問題です。

過去問で出てきている施設もありますから、しっかり弁別できるようにしておきましょう。

問103 日常生活動作〈ADL〉は自立しているが、現在置かれている環境では生活が難しく、経済的にも困窮した高齢者が市町村の措置によって入所できる施設として、最も適切なものを1つ選べ。
① 介護医療院
② 養護老人ホーム
③ 小規模多機能型居宅介護施設
④ 介護老人保健施設(老人保健施設)
⑤ 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

選択肢の解説

① 介護医療院
④ 介護老人保健施設(老人保健施設)
⑤ 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

介護保険施設(介護保険が適用される施設)には「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」の4つがあり、必要とする介護の内容により入所できる施設が違います。

特別養護老人ホームは、常に介護が必要で、自宅での介護が困難な方が対象となります(入居基準は要介護度3以上となっています)。

受けられるサービスは、日常生活における食事や、入浴、排せつ、機能訓練や健康管理などの介助となります。

介護老人保健施設は、病院での治療を終え病状が安定した人が、リハビリに重点を置き在宅復帰を目的とする施設です(要介護1以上が対象)。

受けられるサービスは、医学的な管理の元、介護や看護、リハビリと日常生活の介護となります。

在宅復帰を目的とする施設なので、特養のように終身利用を前提として生活することはできません。

介護療養型医療施設は、要介護1以上が対象で、治療を終え病状が安定しているものの、引き続き長期間療養を必要とする人が入所する医療施設です。

受けられるサービスは、介護体制が整った医療施設で医療や看護及び日常生活の介護となります。

介護医療院とは、要介護1以上が対象で、要介護者に対し「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する医療施設です。

主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設となります。

本問では「日常生活動作〈ADL〉は自立しているが、現在置かれている環境では生活が難しく、経済的にも困窮した高齢者が市町村の措置によって入所できる施設」の選択が求められています。

ここで挙げたのは、特別養護老人ホーム(常に介護が必要で、自宅での介護が困難な人が対象)、介護老人保健施設(病院での治療を終え病状が安定した人が、リハビリに重点を置き在宅復帰を目的とする施設)、介護医療院(主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする医療施設)ですが、そのいずれも介護を前提としており、問題の「ADLは自立しており」という要件に引っかかりますね。

また、「経済的にも困窮した高齢者」という要件も上記の施設には含まれていません。

以上より、選択肢①、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断できます。

② 養護老人ホーム

養護老人ホームとは、 経済的に困窮している高齢者を「養護」する高齢者施設であり、そのため、介護施設という扱いではなく、食事や健康管理などのサービスはありますが、 基本的に介護サービスは受けられません。

そして養護老人ホームは、長期的な利用が可能な施設ではなく、入居者が自立した生活が送れるようになったら退去します。

名称は似ていますが、特別養護老人ホームとは施設の目的が異なり、他選択肢の解説にもある通り、特別養護老人ホームとは要介護者が身体介護や生活支援を受ける施設になります。

法的には老人福祉法に規定がありますね。


(老人ホームへの入所等)
第十一条 市町村は、必要に応じて、次の措置を採らなければならない。
一 六十五歳以上の者であつて、環境上の理由及び経済的理由(政令で定めるものに限る。)により居宅において養護を受けることが困難なものを当該市町村の設置する養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する養護老人ホームに入所を委託すること。
二 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものが、やむを得ない事由により介護保険法に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を当該市町村の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委託すること。
三 六十五歳以上の者であつて、養護者がないか、又は養護者があつてもこれに養護させることが不適当であると認められるものの養護を養護受託者(老人を自己の下に預つて養護することを希望する者であつて、市町村長が適当と認めるものをいう。以下同じ。)のうち政令で定めるものに委託すること。
2 市町村は、前項の規定により養護老人ホーム若しくは特別養護老人ホームに入所させ、若しくは入所を委託し、又はその養護を養護受託者に委託した者が死亡した場合において、その葬祭(葬祭のために必要な処理を含む。以下同じ。)を行う者がないときは、その葬祭を行い、又はその者を入所させ、若しくは養護していた養護老人ホーム、特別養護老人ホーム若しくは養護受託者にその葬祭を行うことを委託する措置を採ることができる。


上記の第1項が養護老人ホームに関する内容になっていますね。

上記の通り、養護老人ホームは生活環境の理由や経済的な理由により、自宅での生活が難しい65歳以上の高齢者を養護する施設です。

施設職員から入居者が自立した生活を過ごせるように支援をしたり、掃除や洗濯などの自立支援、健康管理といったサポートを受けながら社会復帰を促すことを目的としています。

こうした養護老人ホームの特徴は、本問の「日常生活動作〈ADL〉は自立しているが、現在置かれている環境では生活が難しく、経済的にも困窮した高齢者が市町村の措置によって入所できる施設」に合致していますね。

よって、選択肢②が適切と判断できます。

③ 小規模多機能型居宅介護施設

小規模多機能型居宅介護は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行います。

中重度の要介護者となっても、在宅での生活が継続できるように支援する、小規模な居住系サービスの施設であり、デイサービスを中心に訪問介護やショートステイを組み合わせ、在宅での生活の支援や、機能訓練を行うサービスです。

2006年4月の介護保険制度改正により、今後増加が見込まれる認知症高齢者や中重度者ができる限り住み慣れた地域での生活が継続できるように、新たなサービス体系として地域密着型サービスが創設されました。

小規模多機能型居宅介護のサービスが創設される前では、「通い」「訪問」「泊まり」などの介護サービスをそれぞれ別の施設で受けていたので、それぞれの場面で利用者に対応するスタッフが異なり、馴染みの関係やケアの連続性が保たれないなどの問題がありました。

特に認知症高齢者の場合、記憶や認知機能の障害のために、自分のいる場所がわからなくなったり、周囲の環境の変化に対応ができなくなったりなど、不安や混乱を招き、症状の悪化を引き起こす場合もありました。

小規模多機能型居宅介護を提供する施設は、地域に根ざした小規模の施設であるため「通い」「訪問」「泊まり」等のサービスを同じスタッフが提供しますので、連続性のあるケア、安心感が得られやすいと言えます。

上記の通り、小規模多機能型居宅介護は家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行う施設ですから、本問の「日常生活動作〈ADL〉は自立しているが、現在置かれている環境では生活が難しく、経済的にも困窮した高齢者が市町村の措置によって入所できる施設」とは合致しません。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

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