2022年(令和4年)時点における障害者の雇用に関する問題です。
障碍者雇用促進法が根拠法になるので、こちらを参考にしつつ解説していきましょう。
問125 2022年(令和4年)時点における障害者の雇用について、最も適切なものを1つ選べ。
① 法定雇用率は、10年ごとに見直される。
② 障害者雇用の対象障害種は、身体障害と知的障害の2つである。
③ 障害者雇用率の算定の対象者は、障害者手帳保持者に限らない。
④ 法定雇用率は、特殊法人、国及び地方公共団体の方が一般の民間企業よりも高い。
解答のポイント
障害者雇用促進法に基づく障害者の雇用について理解している。
選択肢の解説
① 法定雇用率は、10年ごとに見直される。
④ 法定雇用率は、特殊法人、国及び地方公共団体の方が一般の民間企業よりも高い。
まず障害者雇用率については、障害者雇用促進法に規定されていますから、関連する条項を抜き出しておきましょう。
(一般事業主の雇用義務等)
第四十三条 事業主(常時雇用する労働者(以下単に「労働者」という。)を雇用する事業主をいい、国及び地方公共団体を除く。次章及び第八十一条の二を除き、以下同じ。)は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。第四十六条第一項において「法定雇用障害者数」という。)以上であるようにしなければならない。
2 前項の障害者雇用率は、労働者(労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、安定した職業に就くことができない状態にある者を含む。第五十四条第三項において同じ。)の総数に対する対象障害者である労働者(労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、安定した職業に就くことができない状態にある対象障害者を含む。第五十四条第三項において同じ。)の総数の割合を基準として設定するものとし、少なくとも五年ごとに、当該割合の推移を勘案して政令で定める。
(雇用に関する国及び地方公共団体の義務)
第三十八条 国及び地方公共団体の任命権者は、職員(当該機関(当該任命権者の委任を受けて任命権を行う者に係る機関を含む。以下同じ。)に常時勤務する職員であつて、警察官、自衛官その他の政令で定める職員以外のものに限る。第七十九条第一項及び第八十一条第二項を除き、以下同じ。)の採用について、当該機関に勤務する対象障害者である職員の数が、当該機関の職員の総数に、第四十三条第二項に規定する障害者雇用率を下回らない率であつて政令で定めるものを乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。)未満である場合には、対象障害者である職員の数がその率を乗じて得た数以上となるようにするため、政令で定めるところにより、対象障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。
上記の通り、障害者の法定雇用率(条文中に「法定雇用率」という表現はありませんが、障碍者雇用促進法という法律に記載されている雇用率ですから、これが「法定雇用率」と読み替えてよろしいわけです)については、第43条第2項に「少なくとも五年ごとに、当該割合の推移を勘案して政令で定める」とあります。
そして、第38条には「第四十三条第二項に規定する障害者雇用率を下回らない率」と規定されています。
このように障害者雇用率については「障害者雇用促進法に基づき、労働者(失業者を含む)に対する対象障害者である労働者(失業者を含む)の割合を基準とし、少なくとも5年毎に、その割合の推移を勘案して設定すること」とされているわけです。
そして、選択肢④の「法定雇用率は、特殊法人、国及び地方公共団体の方が一般の民間企業よりも高い」という記述については、上記第38条の「第四十三条第二項に規定する障害者雇用率を下回らない率」とされているので適切な内容であると言えるわけです。
具体的には、一般の民間企業の令和5年度からの障害者雇用率は2.7%とされておりますが、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%で据え置き、令和6年
度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げることとされています。
これに対し、国及び地方公共団体等については、3.0%(教育委員会は2.9%)とされています(段階的な引上げに係る対応は民間事業主と同様)。
以上より、選択肢①は不適切と判断でき、選択肢④が適切と判断できます。
② 障害者雇用の対象障害種は、身体障害と知的障害の2つである。
③ 障害者雇用率の算定の対象者は、障害者手帳保持者に限らない。
まずは対象となる障害種ですが、こちらは障害者雇用促進法の第2条に定められています。
(用語の意義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。第六号において同じ。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。
二 身体障害者 障害者のうち、身体障害がある者であつて別表に掲げる障害があるものをいう。
三 重度身体障害者 身体障害者のうち、身体障害の程度が重い者であつて厚生労働省令で定めるものをいう。
四 知的障害者 障害者のうち、知的障害がある者であつて厚生労働省令で定めるものをいう。
五 重度知的障害者 知的障害者のうち、知的障害の程度が重い者であつて厚生労働省令で定めるものをいう。
六 精神障害者 障害者のうち、精神障害がある者であつて厚生労働省令で定めるものをいう。
七 職業リハビリテーション 障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ることをいう。
ちなみに上記の「別表に掲げる障害」とは以下の通りです。
一 次に掲げる視覚障害で永続するもの
イ 両眼の視力(万国式試視力表によつて測つたものをいい、屈折異状がある者については、矯正視力について測つたものをいう。以下同じ。)がそれぞれ〇・一以下のもの
ロ 一眼の視力が〇・〇二以下、他眼の視力が〇・六以下のもの
ハ 両眼の視野がそれぞれ一〇度以内のもの
ニ 両眼による視野の二分の一以上が欠けているもの
二 次に掲げる聴覚又は平衡機能の障害で永続するもの
イ 両耳の聴力レベルがそれぞれ七〇デシベル以上のもの
ロ 一耳の聴力レベルが九〇デシベル以上、他耳の聴力レベルが五〇デシベル以上のもの
ハ 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が五〇パーセント以下のもの
ニ 平衡機能の著しい障害
三 次に掲げる音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害
イ 音声機能、言語機能又はそしやく機能の喪失
ロ 音声機能、言語機能又はそしやく機能の著しい障害で、永続するもの
四 次に掲げる肢体不自由
イ 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で永続するもの
ロ 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの
ハ 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
ニ 一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、永続するもの
ホ 両下肢のすべての指を欠くもの
ヘ イからホまでに掲げるもののほか、その程度がイからホまでに掲げる障害の程度以上であると認められる障害
五 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害で、永続し、かつ、日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるもの
上記の通り、対象障害種は「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」「その他の障害者」になります。
ちなみに「身体障害者・知的障害者」は第43条第1項に「その雇用する身体障害者又は知的障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数以上であるようにしなければならない」とあり、雇用義務の対象となっています。
その点を踏まえて、選択肢③の「障害者雇用の対象障害種は、身体障害と知的障害の2つである」となっているわけです(引っかけようとしているわけですね)。
「精神障害者は関係ないのか」と思うかもしれませんが、精神障害者は「実雇用率算定の対象」になりますから雇用義務の対象とはなっていなけれど、雇用すれば算定することができるという扱いになります。
さて、続いて選択肢②の「障害者雇用率の算定の対象者は、障害者手帳保持者に限らない」についてですが、こちらについても法律内で規定があります。
(対象障害者の雇用に関する事業主の責務)
第三十七条 全て事業主は、対象障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであつて、進んで対象障害者の雇入れに努めなければならない。
2 この章、第八十六条第二号及び附則第三条から第六条までにおいて「対象障害者」とは、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る。第三節及び第七十九条第一項を除き、以下同じ。)をいう。
そして上記の「この章」とは「対象障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等」に関する内容がまとめられており、第38条などもこちらに含まれております。
ですから、「障害者雇用率の算定の対象者は、障害者手帳保持者に限る」ということになるのです。
以上より、選択肢②および選択肢③は不適切と判断できます。