この問題ですが、一見すると「知らないと解けない系」と思いきや、そうではありません。
「該当しないもの」として挙げられている選択肢(つまり正答となる選択肢)は、「それを身体障害種として選んじゃダメだよ」というものでしたね。
問36 身体障害者福祉法施行規則別表第5号(身体障害者障害程度等級表)で定められている障害種に該当しないものを1つ選べ。
① 視覚障害
② 肢体不自由
③ 発達性協調運動障害
④ 聴覚又は平衡機能の障害
⑤ 音声言語、言語機能又はそしゃく機能の障害
関連する過去問
なし
解答のポイント
各疾患や障害の内容を理解している。
選択肢の解説
① 視覚障害
② 肢体不自由
④ 聴覚又は平衡機能の障害
⑤ 音声言語、言語機能又はそしゃく機能の障害
まず身体障害者福祉法施行規則別表第5号は、同規則の第5条(以下の通り)に基づいたものです。
第五条(身体障害者手帳の記載事項等) 身体障害者手帳に記載すべき事項は、次のとおりとする。
一 身体障害者の氏名、現住所及び生年月日
二 障害名及び障害の級別
三 削除
四 身体障害者が十五歳未満の児童であるときは、その保護者の氏名、続柄及び現住所
2 身体障害者手帳には、当該身体障害者手帳の交付を受けた者の写真を表示するものとする。
3 第一項の障害の級別は、別表第五号のとおりとする。
この第5条に基づいて定められたのが、こちらの身体障害者福祉法施行規則別表第5号になります。
上記のリンク先から見てもらえればわかりやすいですけど、一応以下に書き出してみましょう(個人的にはこっちの表の方が見やすいです)。
- 視覚障害
- 聴覚又は平衡機能の障害
→聴覚障害
→平衡機能障害 - 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
- 肢体不自由
→上肢
→下肢
→体幹
→乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害
→上肢機能
→移動機能 - 心臓、じん臓若しくは呼吸器又はぼうこう若しくは直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫若しくは肝臓の機能の障害
→心臓機能障害
→じん臓機能障害
→呼吸器機能障害
→ぼうこう又は直腸の機能障害
→小腸機能障害
→ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
→肝臓機能障害
上記だけで本問を解くことは可能ですが、もう少し前提となるところを学んでおきましょう。
そもそもこの施行規則の元である「身体障害者福祉法」の第4条(定義)には「この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう」とあります。
こちらにある「別表」を転記すると以下の通りです。
別表(第四条、第十五条、第十六条関係)
一 次に掲げる視覚障害で、永続するもの
- 両眼の視力(万国式試視力表によつて測つたものをいい、屈折異常がある者については、矯正視力について測つたものをいう。以下同じ。)がそれぞれ〇・一以下のもの
- 一眼の視力が〇・〇二以下、他眼の視力が〇・六以下のもの
- 両眼の視野がそれぞれ一〇度以内のもの
- 両眼による視野の二分の一以上が欠けているもの
二 次に掲げる聴覚又は平衡機能の障害で、永続するもの
- 両耳の聴力レベルがそれぞれ七〇デシベル以上のもの
- 一耳の聴力レベルが九〇デシベル以上、他耳の聴力レベルが五〇デシベル以上のもの
- 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が五〇パーセント以下のもの
- 平衡機能の著しい障害
三 次に掲げる音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害
- 音声機能、言語機能又はそしやく機能の喪失
- 音声機能、言語機能又はそしやく機能の著しい障害で、永続するもの
四 次に掲げる肢体不自由
- 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で、永続するもの
- 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの
- 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
- 両下肢のすべての指を欠くもの
- 一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、永続するもの
- 1から5までに掲げるもののほか、その程度が1から5までに掲げる障害の程度以上であると認められる障害
五 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害で、永続し、かつ、日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるもの
あちこちに「永続するもの」という文言が入っていますね。
これらからも明らかなように、身体障害者福祉法施行規則第5号(身体障害者障害程度等級表)で定められている障害種として、視覚障害、肢体不自由、聴覚又は平衡機能の障害、音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害、が含まれています。
よって、選択肢①、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は該当すると判断でき、除外することになります。
③ 発達性協調運動障害
まずは本選択肢の診断基準をDSM-5から引用しましょう。
A.協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習および使用の機会に応じて期待されているものよりも明らかに劣っている。その困難さは、不器用(例:物を落とす、または物にぶつかる)、運動技能(例:物を掴む、はさみや刃物を使う、書字、自転車に乗る、スポーツに参加する)の遂行における遅さと不正確さによって明らかになる。
B.診断基準Aにおける運動技能の欠如は、生活年齢にふさわしい日常生活動作(例:自己管理、自己保全)を著明および持続的に妨げており、学業または学校での生産性、就労前および就労後の活動、余暇、および遊びに影響を与えている。
C.この症状の始まりは発達段階早期である。
D.この運動技能の欠如は、知的能力障害(知的発達症)や視力障害によってはうまく説明されず、運動に影響を与える神経疾患(例:脳性麻痺、筋ジストロフィー、変性疾患)によるものではない。
上記で重要なのは、診断基準の内容ではなく、この診断基準が「DSM-5に載っている」ということです。
DSM-5は「精神疾患の分類と診断の手引」ですから、こちらに載っているものが身体障害に類することはないわけです。
また、上記に気が付かなくても「発達性協調運動障害」が運動障害群の一つであることを理解しており、それがトレーニングで療育可能なものであることを知っていれば、「永続するもの」とされている身体障害者福祉法施行規則第5号(身体障害者障害程度等級表)に入らないことはわかるはずですね。
以上より、選択肢③が該当しないと判断でき、こちらを選択することになります。