公認心理師 2019-117

問117は生活困窮者自立支援制度に関する問題です。
こちらの支援制度は、生活困窮者自立支援法が根拠法となっております。

問117 生活困窮者自立支援制度に含まれないものを1つ選べ。
①医療費支援
②家計相談支援
③就労準備支援
④子どもの学習支援
⑤住居確保給付金の支給

ちなみにこの法律における「生活困窮者」とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者を言います(生活困窮者自立支援法第3条より)。
法律において、まずは定義を確認するというのは基本ですね。

本法は生活保護法と併せて把握しておくと良いでしょう。

解答のポイント

生活困窮者自立支援法で定められている支援内容を把握している。

選択肢の解説

①医療費支援

まず他選択肢の解説でも見てわかるとおり、生活困窮者自立支援法の中には医療費支援に関する内容の記載はありません
生活困窮者の医療費支援については、生活保護法の医療扶助が該当すると思われます
生活保護法第11条において、保護の種類の一つとして医療扶助が挙げられております。
同法第15条には「医療扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる」と定められています。

例えば、病などで医療費の捻出が難しい場合、生活困窮者自立支援制度の枠内で行える支援は、家計を見直して、住居費や保険料、通信費、食費など、医療費以外の生活費をチェックすることで、毎月の収支が改善される可能性を探ることになります
生活費の見直しや債務整理、医療費の支払い、ローンの支払いなど一緒に考えて、家計の立て直しをアドバイスしていくのは「家計相談支援事業」に該当しますね(選択肢②の内容です)

こちらを見ればわかるとおり、「保険や年金」と「生活保護」の間にあった大きな隙間を埋めるために2015年にできた新しいセーフティネットが「生活困窮者自立支援制度」です。
生活に困っていて生活保護に至りそうな人や、生活保護から抜け出した人などの利用が想定されており、再び働くための環境を作る支援を行う制度ということですね。

生活困窮者の中には、国民健康保険料を支払わないために健康保険証ではなく「資格証」を保持するようになり、医療費が10割負担となっている場合もあり、医療費負担が大きいため、医療機関にかかることが遅くなり、重症化してから発見されることが多いです(児童については、親が資格証であっても医療保険が適用されている)。
こうした人たちに家計のアドバイスを通して、適切な家計の運用をできるようにサポートしていくわけですね

ここまで読めばわかると思いますが、生活困窮者自立支援制度は「生活保護制度における医療扶助の抑制」という狙いもあるのだろうということがわかります。
生活困窮者に対して支援が無い状態のままにしておけば容易に生活保護の枠組みに入ってくることが予想されます。
その前に家計に手を入れ、生産活動に入っていけるよう支援をする…ということでしょう。

以上より、選択肢①は生活困窮者自立支援制度には含まれておらず、こちらを選択することが求められます。

②家計相談支援
③就労準備支援
④子どもの学習支援
⑤住居確保給付金の支給

生活困窮者自立支援法第3条各項には以下のように定められております。

  • 第3項:
    この法律において「生活困窮者住居確保給付金」とは、生活困窮者のうち離職又はこれに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由により経済的に困窮し、居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い、又は現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となったものであって、就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるものに対し支給する給付金をいう。
  • 第4項:
    この法律において「生活困窮者就労準備支援事業」とは、雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対し、厚生労働省令で定める期間にわたり、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う事業をいう。
  • 第5項:
    この法律において「生活困窮者家計改善支援事業」とは、生活困窮者に対し、収入、支出その他家計の状況を適切に把握すること及び家計の改善の意欲を高めることを支援するとともに、生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行う事業をいう。

第3項が選択肢⑤を、第4項が選択肢③、第5項が選択肢②をそれぞれ示していますね。

また、同法第4条には以下のように記載があります。

  1. 市及び福祉事務所を設置する町村は、この法律の実施に関し、関係機関との緊密な連携を図りつつ、適切に生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給を行う責務を有する。
  2. 都道府県は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。
    一 市等が行う生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業並びに生活困窮者一時生活支援事業、生活困窮者である子どもに対し学習の援助を行う事業及びその他の生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業が適正かつ円滑に行われるよう、市等に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行うこと。
    二 関係機関との緊密な連携を図りつつ、適切に生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給を行うこと。
  3. 国は、都道府県及び市等が行う生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業並びに生活困窮者一時生活支援事業、生活困窮者である子どもに対し学習の援助を行う事業及びその他の生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業が適正かつ円滑に行われるよう、都道府県等に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行わなければならない。
  4. 国及び都道府県等は、この法律の実施に関し、生活困窮者が生活困窮者に対する自立の支援を早期に受けることができるよう、広報その他必要な措置を講ずるように努めるものとする。
  5. 都道府県等は、この法律の実施に関し、生活困窮者に対する自立の支援を適切に行うために必要な人員を配置するように努めるものとする。

このように選択肢④の生活困窮者である子どもに対する学習の援助も、この制度の中に含まれておりますね。
ちなみに、同様の内容は同法第7条にも規定があります。

厚生労働省が示している大まかな援助内容についても以下に挙げておきましょう。
こちらのページにあるリーフレットなどにも目を通しておくと良いでしょう。

【自立相談支援事業:あなただけの支援プランを作ります】
生活に困りごとや不安を抱えている場合は、まずは地域の相談窓口にご相談ください。支援員が相談を受けて、どのような支援が必要かを相談者と一緒に考え、具体的な支援プランを作成し、寄り添いながら自立に向けた支援を行います。

住居確保給付金の支給:家賃相当額を支給します】
離職などにより住居を失った方、または失うおそれの高い方には、就職に向けた活動をするなどを条件に、一定期間、家賃相当額を支給します。生活の土台となる住居を整えた上で、就職に向けた支援を行います。

就労準備支援事業:社会、就労への第一歩】
「社会との関わりに不安がある」、「他の人とコミュニケーションがうまくとれない」など、直ちに就労が困難な方に6カ月から1年の間、プログラムにそって、一般就労に向けた基礎能力を養いながら就労に向けた支援や就労機会の提供を行います。

家計相談支援事業:家計の立て直しをアドバイス】
家計状況の「見える化」と根本的な課題を把握し、相談者が自ら家計を管理できるように、状況に応じた支援計画の作成、相談支援、関係機関へのつなぎ、必要に応じて貸付のあっせん等を行い、早期の生活再生を支援します。

【就労訓練事業:柔軟な働き方による就労の場の提供】
直ちに一般就労することが難しい方のために、その方に合った作業機会を提供しながら、個別の就労支援プログラムに基づき、一般就労に向けた支援を中・長期的に実施する、就労訓練事業(いわゆる「中間的就労」)もあります。

生活困窮世帯の子どもの学習支援:子どもの明るい未来をサポート】
子どもの学習支援をはじめ、日常的な生活習慣、仲間と出会い活動ができる居場所づくり、進学に関する支援、高校進学者の中退防止に関する支援等、子どもと保護者の双方に必要な支援を行います。

【一時生活支援事業:住居のない方に衣食住を提供します】
住居をもたない方、またはネットカフェ等の不安定な住居形態にある方に、一定期間、宿泊場所や衣食を提供します。退所後の生活に向けて、就労支援などの自立支援も行います。

以上より、選択肢②~選択肢⑤は生活困窮者自立支援制度に含まれているので、除外することが求められます。

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