ひきこもり支援に関する問題です。
主にひきこもりに関連する福祉サービスの内容を問うものになっていますね。
問19 ひきこもりの支援について、正しいものを1つ選べ。
① ハローワークでは、生活面での助言や障害福祉サービスの利用支援を行う。
② ひきこもり地域支援センターは、市町村が行う相談支援業務を援助する機関である。
③ 地域若者サポートステーションは、早期に医療機関へのつながりを確保する機関である。
④ 地域障害者職業センターでは、障害者手帳の所有者でなくても専門的な職業評価と職業指導が受けられる。
⑤ ひきこもりサポーターは、長期にわたるひきこもりの当事者及び家族を支援することを主な目的としている。
解答のポイント
ひきこもり支援に関連するシステムを理解していること。
選択肢の解説
①ハローワークでは、生活面での助言や障害福祉サービスの利用支援を行う。
ハローワークは就労支援が中心ですので、生活面での助言については(実際に窓口でアドバイス程度に行われているかはともかくとしても)行っていないと言えます。
行うとしたら、実際に訪問支援を行う「ひきこもりサポーター」などでしょうか。
障害福祉サービスの利用支援については、「ひきこもり地域支援センター」などで関係機関との連携の中で行っていることと思われます。
繰り返しますが、ハローワークの中心はあくまでも就労支援と考えてよいでしょう。
ただし、障害者雇用の関係においては、ハローワークも関連してくると言ってよいでしょう。
以上より、選択肢①の内容は誤りと判断できます。
②ひきこもり地域支援センターは、市町村が行う相談業務を援助する機関である
ひきこもり地域支援センターは、平成21年度に開始された事業に始まるものです。
都道府県、指令都市に設置されています。
ひきこもりの状態にある本人や家族が、地域の中でまずどこに相談したらよいかを明確にすることによって、より適切な支援に結びつきやすくすることを目的としたものです。
ひきこもり支援コーディネーターを中心に、地域における関係機関とのネットワークの構築や、ひきこもり対策にとって必要な情報を広く提供するといった、地域におけるひきこもり支援の拠点としての役割を担っています。
すなわち、ひきこもりに特化した専門的な第一次相談窓口ということになります。
ひきこもり地域支援センターは、地域におけるひきこもり支援の拠点として機能していますので、「市町村が行う相談業務を援助する」という記述とは矛盾があると思われます。
しかし、平成30年度から示されている「ひきこもり対策推進事業の強化」においては、ひきこもり地域支援センターのバックアップ機能等の強化(市町村への支援等)を図り、相互の連携を強化するとしています。
この記述は、選択肢②の内容と合致しているようにも読み取れます。
しかしながら「市町村が行う相談業務を援助する機関である」という表記は、それが目的の機関であると読み取ることが可能であり、そう捉えるとこの選択肢②は誤りと判断できます。
③地域若者サポートステーションは、早期に医療機関へのつながりを確保する機関である
地域若者サポートステーションでは、働くことに悩みを抱えている15歳~39歳までの若者に対し、キャリアコンサルタントなどによる専門的な相談、コミュニケーション訓練などによるステップアップ、協力企業への就労体験などにより、就労に向けた支援を行っています(2020年に年齢は引き上げられ、49歳までが対象となっている。「若者」って何歳までなんだろう、と思わずにはおれませんが、昨今のひきこもりの年齢上昇を踏まえると必要な改正と言えるでしょうね)。
すなわち、精神症状を訴えている人が対象というわけでもありません。
よって、選択肢③は誤りと言えます。
④地域障害者職業センターでは、障害者手帳の所有者でなくても専門的な職業評価と職業指導が受けられる
地域障害者職業センターは、公共職業安定所等の地域の就労支援機関との密接な連携のもと、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを提供する施設として、全国47都道府県に設置されています。
地域障害者職業センターでは障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています。
根拠法は「障害者雇用促進法」であり、第22条にその役割が記載されています。
そして、この法律内における「障害者の定義」(第2条)は「身体障害、知的障害又は精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」をいいます。
地域障害者職業センターでも障害の確認を行う際は、原則手帳の交付を受けているか否かで行うようです。
しかし、その利用については手帳の有無では制限されません(実際に就職する場合には、手帳の有無によって変わるようですが:法定雇用率などの問題もあるか?)。
いずれにせよ、選択肢④の内容は正しいと言えます。
⑤ひきこもりサポーターは、長期にわたるひきこもりの当事者及び家族を支援することを主な目的としている
ひきこもりサポーターは、地域に潜在するひきこもりを早期に発見し、適切な支援機関に早期につなぐことで、ひきこもりからの脱却の短期化を目指します。
また、サポーターによる対象者へのきめ細やかで継続的な相談支援によって、ひきこもり本人の自立を推進し、対象者の福祉の増進を図ることを目的としています。
以上の内容から、選択肢にある「長期にわたる」という点に誤りがあると判断ができます。
むしろ、早期に発見(≒長期化する前に見つける)するということが目的と考えられます。
よって、選択肢⑤も誤りと判断できます。
もちろん、ひきこもり相談に来た時点で長期化しているということも有り得ますが、あくまでも「ひきこもりサポーターの設置理念」を争点とした設問だと思われます。
第5回の受験に向けて活用させていただいております。どこよりも詳細で丁寧な解説をしてくださっているので、過去問集の解説に疑問があるときは特に熟読させていただいています。
選択肢3の地域若者サポートステーションについてですが、おそらく対象年齢の上限は39歳ではなく49歳のようです。
調べてみたところ2020年に引き上げられているようです。
コメントありがとうございます。
そうですね、法令の変更によって対象年齢などは変わり得るものと言えます。
ですから、その当時は正しかった解説が、それ以降の法令によって誤りになることや、解説内容が間違ってしまうこともあり得ます。
とは言え、すべての解説内にある法令の変更を把握するのも、私一人でやっている当サイトでは困難です。
ですから、当サイトの解説は「その当時の法令に準じたもの」とお考え下さい。
それ以上は、受験者の皆さんで保管してもらう他ないと考えております。
ご指摘のあった点に関しては、括弧書きで解説に加えておくことにしますね。
それではまた。