障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〈障害者総合支援法〉に基づく地域移行支援の対象者として、正しいものを2つ選ぶ問題です。
まずは地域移行支援について詳しく記載しました。
その上で、選択肢の検証を行っています。
解答のポイント
地域移行支援の対象者について把握していること。
地域移行支援について
こちらの問題については、地域移行支援についての変遷をまとめた方が理解しやすいので、そちらから入っていきます。
地域移行支援の概要
地域移行支援とは、障害者支援施設等及び精神科病院に入所・入院している障害者に対して、住居の確保や障害福祉サービスの体験利用・体験宿泊のサポートなど地域生活へ移行するための支援を行うものでした。
平成24年4月から実施されています。
地域移行支援の見直し
平成24年6月に成立した障害者総合支援法第5条20には以下のように記載があります。
「この法律において「地域移行支援」とは、障害者支援施設、のぞみの園若しくは第一項若しくは第六項の厚生労働省令で定める施設に入所している障害者又は精神科病院に入院している精神障害者その他の地域における生活に移行するために重点的な支援を必要とする者であって厚生労働省令で定めるものにつき、住居の確保その他の地域における生活に移行するための活動に関する相談その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」
この条文の前半部分(障害者支援施設、のぞみの園若しくは第一項若しくは第六項の厚生労働省令で定める施設に入所している障害者又は精神科病院に入院している精神障害者)は、元々の地域移行支援の対象者を示しています。
後半部分(その他の地域における生活に移行するために重点的な支援を必要とする者であって厚生労働省令で定めるもの)重点的な支援を行うことで地域生活に円滑に移行できることが期待される者として、以下が定められています。
- 入所期間の長期化や高齢化が進んでいる保護施設に入所している障害者
- 退所後の住居を確保し、円滑に福祉サービス等につなげることで再犯防止が期待される矯正施設等に入所している障害者
地域移行支援の対象拡大:保護施設に入所している障害者
「保護施設」については生活保護法第38条に規定されています。
施設名と法律で規定された役割は以下の通りです。
- 救護施設:
身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設。 - 更生施設:
身体上又は精神上の理由により養護及び生活指導を必要とする要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設 - 医療保護施設:
医療を必要とする要保護者に対して、医療の給付を行うことを目的とする施設 - 授産施設:
身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている要保護者に対して、就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする施設 - 宿所提供施設:
住居のない要保護者の世帯に対して、住宅扶助を行うことを目的とする施設
地域移行支援の対象拡大:矯正施設等に入所している障害者
地域移行支援の対象とする矯正施設の種類は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第3条に規定する「刑事施設」、少年院法第1条に規定する「少年院」とすること担っています。
具体的には以下の施設になります。
- 刑務所:
法令に違反し、裁判などの結果、刑罰に服することとなった者を収容する刑事施設。 - 少年刑務所:
少年受刑者を収容する刑務所。少年受刑者を成人受刑者から分離して拘禁し、悪風感染を防止するとともに、特別な教育的処遇を行うことを目的とする。 - 拘置所:
未決拘禁者(被疑者、刑事被告人)、死刑確定者を収容する施設。 - 少年院:
家庭裁判所から保護処分として送致された少年及び少年院において刑の執行を受ける者を収容し、これに矯正教育を授ける施設。
まとめると…
地域移行支援の対象者は以下の通りです。
- 障害者支援施設、のぞみの園、児童福祉施設又は療養介護を行う病院に入所している障害者(児童福祉施設に入所する18歳以上の者、障害者支援施設等に入所する15歳以上の障害者みなしの者も対象)。
- 精神科病院に入院している精神障害者
- 救護施設又は更生施設に入所している障害者
- 刑事施設(刑務所、少年刑務所、拘置所)、少年院に収容されている障害者
- 更生保護施設に入所している障害者又は自立更生促進センター、就業支援センター若しくは自立準備ホームに宿泊している障害者
これらの対象者に、入所施設や精神科病院等における地域移行の取組と連携しながら、住居の確保その他の地域における生活に移行するための活動に関する相談、地域移行のための障害福祉サービス事業所等への同行支援などを行います。