公認心理師 2024-57

緩和ケアで用いられるモルヒネの三大副作用を選択する問題です。

過去問(公認心理師 2019-31)にも解説がありますが、どれが「三大副作用か」と問われるとわからない人もいるかもしれません。

でも、ちゃんとモルヒネの副作用を勉強している人なら解けるようになっている問題ですよ。

問57 緩和ケアで用いられるモルヒネの三大副作用に該当するものを2つ選べ。
① 悪心
② 眠気
③ 頻尿
④ 過換気
⑤ 高血圧

選択肢の解説

① 悪心
② 眠気
③ 頻尿
④ 過換気
⑤ 高血圧

現在用いられている重要な鎮痛薬としては、オピオイド受容体を標的としてオピオイドと、プロスタグランジンを標的としたNSAIDsになりますが、本問で問われているモルヒネはオピオイド系鎮痛薬に属するものです。

オピオイド鎮痛薬には、モルヒネをはじめとする麻薬性鎮痛薬とその類似訳で非麻薬性の鎮痛薬が含まれます。

モルヒネを基に開発された合成オピオイド受容体作動薬とともに中等度から重度の疼痛に対して用いられます。

モルヒネは、古くから鎮痛薬として用いられてきましたが、緩和医療における重要性は現在も失われていません。

ケシの未熟果から抽出されるアヘンアルカロイドの1つ(約10%を占める)です。

モルヒネはμ受容体の完全作動薬で、強力な鎮痛作用があるため、癌や心筋梗塞に伴う激しい疼痛に用いられます。

癌性疼痛などにおいて適正に使用している限りあまり問題にならなとされているが、モルヒネとオピオイド鎮痛薬の多くは耐性形成と依存形成を起こすとされています。

さて、モルヒネが作用するμ受容体が広く体内に分布することから、副作用も多様になり、以下の通りです。

  • 心循環系:交感神経系の緊張を低下させるため、起立性低血圧や徐脈を引き起こす。
  • 呼吸器系:延髄の呼吸中枢に作用し、二酸化炭素に対する反応を鈍化させるため、呼吸抑制を起こす可能性がある。
  • 消化器系:延髄の化学受容野と腸管に作用し、悪心・嘔吐、便秘を起こす。
  • 中枢神経系:鎮静、恍惚感、錯乱が見られる。

上記以外にも、モルヒネにはヒスタミン遊離作用があるため、気管支平滑筋収縮や血管拡張による蕁麻疹や発疹などが起こることがあります。

動眼神経核を刺激し縮瞳を起こすが、縮瞳作用には耐性形成が認められないので、中毒症状の指標になるとされています。

そして、上記のうちでもモルヒネ(オピオイド)の三大副作用は、便秘、悪心嘔吐、眠気とされていますので、より詳しく述べていきましょう。

【悪心・嘔吐】

まず悪心・嘔吐は、治療開始時に起こりやすく、予防的な制吐薬の使用が薦められます。

耐性が形成されるため1~2週間程度で改善することが多いが、オピオイドの増量時には改めて対策が必要とされています。

オピオイド鎮痛薬による悪心・嘔吐に用いられる薬物としてはドパミン受容体拮抗薬や抗精神病薬などがあるが、これらは長期投与によって錐体外路症状を引き起こす可能性があり、悪心・嘔吐が改善したら速やかに休薬すべきです。

【便秘】

オピオイドによる治療中には、便秘が高頻度で出現します。

耐性の形成はほとんど起こらないため、オピオイド鎮痛薬による治療機関を通して、排便指導や緩下薬の投与など継続的な対策が必要です。

【眠気】

オピオイドによる眠気は、投与開始後や増量時に起こりやすいが、通常、耐性が形成されるため、数日で軽減することが多いとされています。

がん性疼痛の場合、痛みがなく強度の眠気がある場合は、オピオイドを減量します。

眠気のためにオピオイドの増量が困難な場合は、オピオイドローテーションを検討する。

非がん性疼痛の場合、眠気の発現に至るまでオピオイドを増量することは望ましくないとされています。

なお、モルヒネの場合、鎮痛効果を示す用量を1とすると、その50分の1の用量から便秘が起こり、10分の1の用量で嘔吐が、鎮痛効果の用量を超えると眠気が起こるとされています。

上記の通り、本問の「緩和ケアで用いられるモルヒネの三大副作用に該当するもの」としては、選択肢①の悪心、選択肢②の眠気になると言えますね。

なお、選択肢④の過換気については、むしろ「延髄の呼吸中枢に作用し、二酸化炭素に対する反応を鈍化させるため、呼吸抑制を起こす可能性がある」とあるので、逆の内容になりますね。

同じく、選択肢⑤の高血圧も、「交感神経系の緊張を低下させるため、起立性低血圧や徐脈を引き起こす」とあるように、モルヒネの副作用とは逆の内容になっています。

選択肢③の頻尿については、モルヒネは尿道の収縮や緊張を高めたり、排尿反射を抑制し外尿道括約筋の収縮と膀胱容量を増加させるため、排尿障害につながります(ですから、こちらも逆の内容になっていますね)。

また、抗うつ薬では三環系・四環系抗うつ薬では抗コリン作用が認められていますので、排尿障害が生じる可能性がありますし、抗精神病薬でも抗コリン作用、抗ドパミン作用(αアドレナリン受容体刺激作用がある)によって排尿障害が副作用として生じる可能性があります。

このように見てみると「三大副作用」である正解二つと、実際のモルヒネの副作用とは逆のもの三つで、本問の選択肢が構成されていることがわかりますね。

そういう見方をしてみると「実際のモルヒネの副作用だけど、三大副作用ではない」という選択肢が含まれていないので、受験生に優しい問題の作り方をしていると言えるかもしれませんね(モルヒネの副作用は勉強していても「三大副作用はどれか?」と聞かれると厳しい人も多かったでしょうからね)。

以上より、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤はモルヒネの三大副作用に該当せず、選択肢①および選択肢②が該当すると判断できます。

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