公認心理師 2024-102

薬物依存に関する現象の理解を問う内容です。

日常的に使用してしまいがちですが、専門用語としてしっかりと理解しておきましょう。

問102 覚せい剤の使用を中止した後、不眠、ストレス、飲酒、少量の再使用などによって、以前使用したときと同様の幻覚や妄想などが生じる現象として、最も適切なものを1つ選べ。
① 再燃
② 耐性
③ 中毒
④ 乱用
⑤ 離脱

選択肢の解説

① 再燃
② 耐性
③ 中毒
④ 乱用
⑤ 離脱

それぞれの用語を薬物依存の文脈で解説すると以下の通りになります。

  • 再燃:
    薬物依存に陥り幻覚や妄想などの症状が一度生じると、その後治療によって表面上は回復しているように見える状態でもそれらの症状が起こりやすくなります。 即ち、乱用をやめてもストレスや飲酒などをきっかけに突然幻覚や妄想が再発することがあるということです。使用をやめた後でも、少量の再使用や飲酒、不眠、ストレスなどをきっかけに、乱用時と同様の精神障害が突然現れることがあります。 これをフラッシュバック(再燃現象)といいます。
  • 耐性:
    依存性薬物が効かなくなり、同じ効果を得るのに量を増やさないといけなくなることを指します。依存性薬物の特徴として、耐性が作られることがあります。もともとその薬物の効果を得るために少量で済んでいたのに、その薬物を連用するようになると、だんだん同じ量では効果が少なくなってきます。
    アルコールで言えば、いわゆる「強くなった」状態です。同じ量では十分に酔えないので、同じ効果を得るために量を増やさないといけなくなり、徐々に量が増えていきます。結果として、多量の飲酒を続けることになり、さらに依存が進行していきます。
    耐性は依存の形成の初期の段階で起こることが多く、病院に受診する頃には体の調子が悪くなっているため、むしろ量が減ってきているように見えることもありますが、依存症の発達の過程のどこかで耐性が形成されている段階があるはずです。
  • 中毒:
    中毒というのは、文字通り「毒(=薬物)が体の中にある状態」を指しており、有害物質を飲み込んだり、吸い込んだり、皮膚や眼、または口や鼻などの粘膜に接触したときに生じる有害作用のことです。急性中毒では「パニック」「意識や知覚の障害」ときには昏睡状態から死に至ることもあります。慢性中毒としては「幻覚・妄想状態を中心とする精神病性障害」「認知障害」「人格変化」などのほか、種々の臓器障害があります。薬物乱用の中断後も長期にわたって慢性中毒症状が続くことも少なくありません。したがって、薬物乱用の問題は薬物を使っている時期に限られるものではないのです。
  • 乱用:
    乱用とは、覚せい剤・有機溶剤・大麻などの規制薬物の使用や、本来の目的や方法から逸脱した医薬品の使用をさします。乱用を繰り返した結果「依存」が生じます。依存とは、もはや意志により薬物使用をコントロールできない状態のことで、「精神依存」と「身体依存」というふたつの側面があります。
    精神依存はすべての依存性薬物が引き起こすもので、薬物による「快感」を求める心理的欲求をさします。これが依存の本質です。麻薬(ヘロイン・モルヒネなど)やアルコールなどの中枢神経抑制薬は「身体依存」も同時に引き起こし、耐性や急激な減量・断薬による離脱症状(禁断症状)がみられます。
  • 離脱:
    依存性のある薬物などの反復使用を中止することから起こる病的な症状のことです。
    禁煙が難しいことは知られています。タバコに含まれるニコチンなどは依存性があり、「タバコを吸いたいと強く思う」「集中できない」「頭痛」などの離脱症状を引き起こし、禁煙を難しくしています。アトピー性皮膚炎のステロイド剤長期使用でも、使用を中止することで「一時的に皮膚症状が悪くなる」という離脱症状を示すことがあります。麻薬など強い依存性をもつものでは「体中に虫が這う感覚」や「骨が飛び散るような痛み」を覚えることがあり、精神異常をきたしてしまうこともあります。
    長期使用した薬剤や依存性の高い薬剤でも、医師の指導のもと徐々に量を減らすなど適切な使用中止を行えば、禁断症状は緩和されます。

以上が、各現象に関する記述になります。

これらを踏まえると、本問の「覚せい剤の使用を中止した後、不眠、ストレス、飲酒、少量の再使用などによって、以前使用したときと同様の幻覚や妄想などが生じる現象」は再燃症状(フラッシュバック症状)のことであるとわかりますね。

よって、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢①が適切と判断できます。

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