公認心理師 2022-40

WHOが2002年に出している緩和ケアの定義に関する問題です。

過去問にもあった内容ですし、きっちりと答えられるようにしておきたいですね。

でも、おそらく定義を記憶していなくても解けるんじゃないかなと思います。

問40 緩和ケアの定義(2002年、WHO)の基本的な考え方について、誤っているものを1つ選べ。
① 家族も対象とする。
② QOLの改善を目指す。
③ 疾患の終末期から開始する。
④ がん以外の疾患も対象とする。
⑤ スピリチュアルな問題に配慮する。

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解答のポイント

WHO(2002)の緩和ケアの定義を把握している。

選択肢の解説

① 家族も対象とする。
② QOLの改善を目指す。
③ 疾患の終末期から開始する。
④ がん以外の疾患も対象とする。
⑤ スピリチュアルな問題に配慮する。

まずはWHOが2002年に示している緩和ケアの定義を参照しましょう。


緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

緩和ケアは…

  • 痛みやその他のつらい症状を和らげる
  • 生命を肯定し、死にゆくことを自然な過程と捉える
  • 死を早めようとしたり遅らせようとしたりするものではない
  • 心理的およびスピリチュアルなケアを含む
  • 患者が最期までできる限り能動的に生きられるように支援する体制を提供する
  • 患者の病の間も死別後も、家族が対処していけるように支援する体制を提供する
  • 患者と家族のニーズに応えるためにチームアプローチを活用し、必要に応じて死別後のカウンセリングも行う
  • QOLを高める。さらに、病の経過にも良い影響を及ぼす可能性がある
  • 病の早い時期から化学療法や放射線療法などの生存期間の延長を意図して行われる治療と組み合わせて適応でき、つらい合併症をよりよく理解し対処するための精査も含む

上記の太字部分が、本問で問われている箇所になりますね。

まず「選択肢① 家族も対象とする」ですが、緩和ケアの対象は患者当人だけでなく家族も含まれ、患者との死別後に起こる家族の様々な反応(代表的なのが悲嘆反応ですね)への対応も含まれていることがわかります。

「選択肢② QOLの改善を目指す」に関しても明確に「QOLを高める」とありますね。

患者のその時々の状態によって「生活の質」や「人生の質」は変わるものですから、それに合わせて支援をしていくことが重要になります。

「選択肢③ 疾患の終末期から開始する」ですが、上記に「病の早い時期から」とあるように緩和ケアは終末期という「老衰や疾病、障害などの進行によって、あらゆる医療がすでに効果的でなく、余命が数ヶ月以内と判断された後の時期」に開始されるものではありません。

緩和ケアには、患者が治療によって効果が得られたとしてもそれに伴う苦痛、効果が得られなければそれに伴う様々な感情体験も含めて対応していくわけですし(もちろん、他にももっとアプローチはあるでしょう。ここに述べたのは一例に過ぎない)、終末期という限定された時期にだけ実施されるものではありません。

更に「選択肢④ がん以外の疾患も対象とする」ですが、上記に「生命を脅かす病に関連する問題」とありますから、緩和ケアはがんに限定されるわけではありませんね。

最後に「選択肢⑤ スピリチュアルな問題に配慮する」ですが、こちらは過去問でも出題があった内容で、「痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応する」と上記にも述べられていますね。

これらすべてを一文で解説するのが「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」というWHOの定義なわけです。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢④、選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢③が適切と判断できます。

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