移植医療に関する問題ですが、こちらは不適切問題となり全員正解という措置が取られています。
とは言え、試験作成者側が「移植医療に関する問題を出そうとした」のは事実であり、今後も移植医療に関する問題が出題される可能性は「確実にある」と見なすのが合理的な帰結だろうと思います。
ですから、「不適切問題だから放っておいていいだろう」ではなく、本問の正誤判断が可能な選択肢はきっちりとそれを行い、また、不適切問題と判断された箇所はどこかを理解できる形にしておくことが重要だと言えます。
問29 我が国における移植医療について、最も適切なものを1つ選べ。
① 移植件数が最も多い臓器は腎臓である。
② 臓器を提供する意思表示に年齢の制約はない。
③ 移植を受けた患者に精神障害が生じるのはまれである。
④ 肝移植の大部分は脳死後の臓器提供によるものである。
⑤ 生体移植における提供者の意思確認は移植医療チームが行う。
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なし
解答のポイント
移植医療に関する各定義や統計について把握している。
選択肢の解説
① 移植件数が最も多い臓器は腎臓である。
まずは「臓器とは何ぞや」というところから押さえておきましょう。
これは臓器移植法を基準に考えるのが妥当と言えますね(公認心理師は国家資格ですから、国の定めたルール=法律・規則に則って考えるのは当然です)。
第5条に「この法律において「臓器」とは、人の心臓、肺、肝臓、腎臓その他厚生労働省令で定める内臓及び眼球をいう」としています。
続いて、移植件数に関する資料ですが「臓器移植の実施状況等に関する報告書」に記載がありましたからこちらに基づいて述べていきましょう。
臓器移植法に基づき、令和3年度には、79名(60名)の脳死した者の身体からの臓器提供が行われた。また、心停止後の提供を含む臓器ごとの移植の実施数等は以下の通りです。
- 心臓:69件(累計648件)
- 肺:83件(累計684件)
- 肝臓:70件(累計736件)
- 腎臓:148件(累計4180件)
- 膵臓:31件(累計472件)
- 小腸:3件(累計26件)
- 眼球(角膜):814件(累計35203件)
※累計は平成9年10月16日(臓器移植法施行日)から令和4年3月31日までの数字。
なお、平成9年10月16日から令和4年3月31日までの間に、合計で821名の脳死した者の身体からの臓器提供が行われています。
こうしたデータを踏まえれば、移植件数が最も多い臓器は「腎臓」ではなく「眼球(角膜)」であることがわかりますね。
そして、「眼球(角膜)」については、上記の臓器移植法の臓器の定義に含まれています(眼球が臓器という認識をしづらいと思うので、念のため)。
よって、選択肢①は不適切と判断できます。
(ここから先は選択肢④の解説に目を通してから読んでください)
さて、出題者が選択肢④を不適切と見なしていた可能性がある以上、出題者が正答と見なしていた可能性が最も高いのが選択肢①になります。
ここでは、出題者がどの資料に基づいて本問を作成したかを考えていくことにしましょう(なんでそんなことせなあかんねーん、と関西弁でツッコミたくなるけど仕方ないです)。
一番可能性が高いのが、たけお先生のコメント欄にある「日本移植学会 ファクトブック2021」です。
こちらの資料に示してある、臓器別移植数は以下の通りです。
脳死 | 心停止 | 生体 | 総数 | |
腎臓 | 124 | 17 | 1570 | 1711 |
肝臓 | 63 | 0 | 317 | 380 |
心臓 | 68 | 0 | 0 | 68 |
肺 | 58 | 0 | 17 | 75 |
膵臓 | 28 | 0 | 0 | 28 |
小腸 | 3 | 0 | 0 | 3 |
全臓器 | 344 | 17 | 1904 | 2265 |
こちらの資料に基づけば、最も多いのが腎臓ということになり、選択肢①が正答になります。
ですが、上記のように臓器移植法で定められている「臓器」には「眼球(角膜)」が含まれていて、その件数が明らかに多くなっています。
また、コメントにもある通り、他の国家試験においては「骨髄移植は臓器移植である」と読み取れる問題が出題されており、もしもそうなら骨髄移植は腎臓よりも多くなります(こちらの資料に件数がまとめられています)。
そして、骨髄移植もそうですが、上記の表にもある通り「生体」からの移植も含めている点も気になります。
選択肢④でも述べましたが、臓器移植法において「生体」を念頭に置いていないという事実を踏まえると、「日本移植学会 ファクトブック2021」を基に問題を作られるのは、非常によろしくない事態だと考えられます(臓器移植法をしっかりと学んでいる人からすると、正しい知識を持っているのに間違えるということになる)。
もしも、移植医療の世界で慣例的に「臓器移植には生体も含まれる」となっていたとしても、臓器移植法という法律がある以上、せめてそことの弁別が明示されている必要があります。
そうでない以上、本問が「不適切問題」となってしまうのは避けられないことだと言え、これをもって本問の解説としたいと思います。
② 臓器を提供する意思表示に年齢の制約はない。
まず選択肢の読み取りとして、ここで問われているのは「臓器を提供する意思表示」ですね。
というのも、臓器提供の意思表示は「臓器を提供する」という意思だけではなく、「臓器を提供しない」という意思も表示できるようになっており、どちらの意思も尊重されることになっています。
日本臓器移植ネットワークによると、提供する意思表示は民法上の遺言可能年齢である15歳以上が有効ですが、提供しない意思は何歳からでも有効であり、その意思表示は何度でも変更が可能です。
上記のようなカードを見たことがある人も多いでしょうが(免許証の裏にあったような…)、臓器の提供の意思に関しては「する(脳死後で心臓が停止した死後or心臓が停止した死後)」「しない」のいずれかを選択することになっています。
その他、提供したくない臓器の選択や特記欄に組織提供や親族優先提供の有無などを記入することができます。
なお、基本的に本人の意思が尊重されますが、家族の承諾がなければ臓器提供は行われません。
上記の通り、臓器提供をしない意思表示は何歳からでも可能ですが、臓器提供をする意思表示は民法上の遺言可能年齢である15歳以上が有効となっていますので、「臓器を提供する意思表示に年齢の制限はない」というのは事実と反する内容と言えますね。
よって、選択肢②は不適切と判断できます。
③ 移植を受けた患者に精神障害が生じるのはまれである。
「臓器移植希望者(レシピエント)の心理社会的評価に関する提言」という論文には、各臓器の移植後に生じる精神疾患について記載があります。
【心臓】
- 心臓移植待機中の補助人工心臓装着患者には適応障害(37〜66%)、せん妄(19〜30%)、 うつ病(3〜20%)が合併する。
- 心臓移植後には抑うつや不安を主症状とした精神症状が生じることがあり、特に移植後早期の出現頻度が高い。
- うつ病は術後1年間に14〜20%の患者に生じ、以後1年ごとに5%程度の患者に新たに発症する。不安症(パニック障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害を含む)は術後1年間に17〜18%の患者に生じ、以後1年ごとに新たに1〜2%の患者で発症する。
- さらに、5年以上経過した遠隔期にうつ状態が生じることがあるとされる 。
- ノルウェイの研究では、心臓移植患者に併存するうつ病は、5年間のフォローアップでは死亡率を2.3%有意に増加させることがわかっている。
- これらの精神症状の危険因子は、移植後の合併症、移植周術期における重篤な身体状態、移植前の精神障害の既往、社会的サポートの不足、自己効力感(セルフケアに対する自信)の低さ、回避・受動的なコーピング、悲観的思考などである。
【肝臓】
- 肝臓移植前の待機患者の47%にうつ病が認められたという報告があり、移植後には33%から63%に認められる。
- 移植前に19%の肝移植患者に不安が認められ、移植後のQOLを有意に悪化させる。
【腎臓】
- 末期腎不全患者の2割から3割にうつ状態が認められ、腎移植患者の1割から4割に抑うつが認められる。
- ある研究において、47899 名の腎移植患者におけるうつ病の発症率は移植1年後5.1%、2年後7.3%、3年後9.1%であった。
【肺】
- 肺移植に併存する精神疾患の研究は多くない。
- 術前のうつ病や不安症は移植術後の経過と関連を認めないという報告やうつ病は臨床経過に影響しないという報告がある。
【膵臓】
- 膵臓移植に併存する精神疾患の研究は少ない。
- 移植後には睡眠障害、抑うつ、不安、自己破壊的行動(アルコールや不健康な食物の摂取など)、アイデンティティや社会との関係における苦悩などが生じることが報告されている。
また、上記の論文においては、こうした状況を踏まえて「併存精神疾患や精神症状に対する向精神薬による薬物療法や心理社会的介入は、移植プロセスのすべてで行われる必要がある」とされています。
特に心臓移植後にはうつ、不安を主症状とした精神症状が生じることがあり、とくに移植後早期における出現頻度が高いようですね。
これらの精神症状の危険因子として、移植後の合併症、移植時や周術期における重篤な身体状態、移植前の精神障害の既往、社会的サポートの不足、自己効力感(セルフケアに対する自信)の低さ、回避・受動的なコーピング方略、悲観的思考などが指摘されています。
うつや不安は患者のQOLを低下させるが、加えて、虚血性心疾患などの慢性疾患の予後を悪化させる独立した危険因子であることが知られており、このことは心臓移植患者においても示唆されています。
精神症状の評価、とくにうつ、不安の有無の評価は定期的に行われる必要があり、適宜公認心理師・臨床心理士や精神科医にコンサルトできる体制を整備しておくことが求められます。
これらの状況を踏まえれば、「移植を受けた患者に精神障害が生じるのはまれである」というのは事実と異なる記述であると言えますね。
よって、選択肢③は不適切と判断できます。
④ 肝移植の大部分は脳死後の臓器提供によるものである。
まず前提として、臓器移植法の第1条目的には「この法律は、臓器の移植についての基本的理念を定めるとともに、臓器の機能に障害がある者に対し臓器の機能の回復又は付与を目的として行われる臓器の移植術に使用されるための臓器を死体から摘出すること、臓器売買等を禁止すること等につき必要な事項を規定することにより、移植医療の適正な実施に資することを目的とする」とされており、死亡後に臓器の移植をされることになっています。
生体肝移植もあり得るのですが、こちらはガイドラインによると「やむを得ない場合に例外として実施されるもの」とされていますね。
まずここが本選択肢の厄介なポイントで【生体肝移植】を含めて考えるか否かが難しいところです。
つまり、本選択肢の正誤判断のポイントが【肝移植の大部分は脳死後の臓器提供によるものか?それとも生体肝移植が多いか?】である可能性があるわけですが、そうなると臓器移植法の記述と矛盾が生じてしまうわけですね。
これを頭に留めておき、別の視点から考えていきましょう。
とりあえず臓器移植法の捉え方に従って、本選択肢を解いていく前提として臓器移植は死亡後に行われるという方向で行くとすると、本選択肢のポイントは臓器提供の意思のところでも触れている「死亡の定義」である可能性が出てきます。
この図の通り、臓器提供の種類として、①脳死後の臓器提供、②心臓が停止した死後の臓器提供、③健康な人からの臓器提供(生体移植)があります。
一般的に、呼吸停止、心拍停止、瞳孔散大という三徴候を医師が確認し、いずれも該当する場合は死亡と宣告されます。
②に該当する「心臓死」は、身体が冷たくなっていくので「死」と確認しやすいかもしれず、三徴候により死が確認されると「心臓が停止した死後の臓器提供」が可能になります。
一方、①に該当する「脳死」は、脳が全ての機能を失って回復しなくなった状態をいいます。
脳死になると、どのような治療をしても回復することはなく、心停止に至り、意識は完全に失われ、自分の力では呼吸もできません。
人工呼吸器などの助けによって、しばらくは心臓を動かし続けることもできるため、血液の流れが維持され、身体は温かい状態です。
脳死下で臓器を提供する場合、法律で定められた脳死判定により脳死であることが確認されると「脳死下の臓器提供」が可能になります。
こういう「死亡の定義」が分かれており、このいずれの肝移植が多いのか、すなわち本選択肢の正誤判断のポイントが【脳死後に多いのか?心臓死後に多いのか?】を問うている可能性が出てきました。
こちらについては先程の「臓器移植の実施状況等に関する報告書」によると、肝臓移植における提供者は66名であり、そのうち「脳死した者の数」は同じく66名となっていますから、肝臓提供者のすべてが「脳死後に行われている」ということになります。
ですから、肝移植が「脳死後に多いのか」「心臓死後に多いのか」を問うているという認識で本選択肢を見ていけば、「脳死後に多い」と明確に述べることができます。
しかし、コメントでいただいたように「肝移植は心臓死後は行えないため、そもそもそんな話は当初から想定していない」わけです。
心臓、肺、肝臓などの臓器は、心臓死により血流が途絶えると急速に機能が低下するので、死体移植(心臓死後の移植)はできません。
そうなると、本選択肢の正誤判断のポイントを【脳死後に多いのか?心臓死後に多いのか?】に置くことが困難になります。
となると、当然残った正誤判断のポイントは【生体肝移植】を含めて考える場合、すなわち【肝移植の大部分は脳死後の臓器提供によるものか?それとも生体肝移植が多いか?】ということになります。
「生体肝移植」については、2020年12月末までに行われた成人・小児を合わせた肝移植総数は10418例であり、初回移植10062例、再移植336例、再々移植19例、再々々移植1例でした。
そのうち、死体移植が各々547例、99例、11例、1例、生体移植が各々9515例、237例、8例となっていて、圧倒的に生体肝移植の方が多いということになります。
こうなってくる「生体肝移植>脳死後の移植」という図式が出来上がりますから、【肝移植の大部分は脳死後の臓器提供によるものか?それとも生体肝移植が多いか?】というポイントで正誤判断を行えば、選択肢④は不適切になるわけです。
ですが、そうなると先述の通り、臓器移植法の「臓器の機能に障害がある者に対し臓器の機能の回復又は付与を目的として行われる臓器の移植術に使用されるための臓器を死体から摘出すること」という文言との間の整合性が取れなくなります。
これは法律の条項になるので、これを無視するわけにはいきません。
一応、ここまでの記述をまとめる形で述べると…
- 本問の正誤判断のポイントは、以下のいずれかになる。
A:【肝移植の大部分は脳死後の臓器提供によるものか?それとも生体肝移植が多いか?】
B:【肝移植の大部分は脳死後に多いのか?心臓死後に多いのか?】 - Bに関しては「肝移植は心臓死後には行えない」という前提から除外するのが妥当。
- 残るのはAになるが、生体肝移植を含めるというのは臓器移植法の目的と矛盾してしまう。
- となると、AもBも選択することができないということになる。
…という形になります。
こうなると、選択肢④の正誤判断を行うこと自体が困難と言わざるを得ず、これが本問全体が「不適切問題」と見なされた所以ではないかと思われます。
問題の作り方として「※なお、本問における臓器移植とは、臓器移植法の目的に則ったものである」とか「※なお、本問における臓器移植では、生体肝移植も含むこととする」と付し、それに準じた選択肢表現が適切になされていれば、この問題は「不適切問題」とはならなかったでしょうね。
さて、そうなると厄介なことを考えねばならなくなります。
仮に出題者が選択肢④の正誤判断のポイントを【肝移植の大部分は脳死後の臓器提供によるものか?それとも生体肝移植が多いか?】と認識していた場合、選択肢④は不適切な内容ということになりますから、正答にはならないと見なされてしまいます。
では、出題者はどの選択肢を「正答」と考えていたのか?
次はその点を探っていかねばならなくなったので、ここで選択肢①に戻って(ここから先は選択肢④の解説に目を通してから読んでください)を読んでください。
⑤ 生体移植における提供者の意思確認は移植医療チームが行う。
まず「生体移植」に関する前提ですが、健常であるドナーに侵襲を及ぼすような医療行為は本来望ましくないとされ、特に臓器の摘出によって、生体の機能に著しい影響を与える危険性が高い場合には、これを避けるべきとされています。
「日本移植学会倫理指針」では、やむを得ずこれを行う場合には、国際社会の通念となっている「WHO指導指針」、「国際移植学会倫理指針」、「イスタンブール宣言」、「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)」等を参考にして、ドナーに関しては以下のことを遵守することとしています。
- 親族に限定する。親族とは6親等内の血族、配偶者と3親等内の姻族をいう。
- 親族に該当しない場合においては、当該医療機関の倫理委員会において、症例毎に個別に承認を受けるものとする。その際に留意すべき点としては、有償提供の回避策、任意性の担保等があげられる。
- 提供は本人の自発的な意思によって行われるべきものであり、報酬を目的とするものであってはならない。ドナーとレシピエントとの間に金銭授受などの利益供与が疑われる場合は、提供に至るプロセスを即座に中止する。
- 提供意思が他からの強制ではないことを家族以外の第三者が確認をする。最終的なドナーの自発的意思の確認は第三者による面接によって行う。その上で、第三者による「ドナーの自発的意思の確認」を得る。なお、ドナーの面接にあたっては、レシピエントの同席を伴わない、個別の面接機会を設定する。ドナー、レシピエントの関係性を評価するために、両者同席の上での面接を、付加的に行うことはよい。ドナー候補者が複数の場合も同様の手順とする。「第三者」とは、ドナーの権利保護の立場にある者で、かつ倫理委員会が指名する精神科医等の複数の者をいう。
- 主治医はドナーが本人であることを確認したことを診療録に記載するとともに、ドナーの本人確認(「顔写真つきの公的証明書」、または、「複数の顔写真のついていない公的証明書」)を行い、主治医は確認したことを診療録に記載する。前記が困難な場合は、倫理委員会に本人確認のための資料を提出し、倫理委員会が本人確認された旨を決定する。親族関係に関する戸籍謄本など公的証明書の写しを添付する。
ドナーからインフォームド・コンセントを得る場合には、ドナーにおける危険性、およびレシピエントにおける移植治療による効果と危険性について説明し、書面により臓器提供の同意を得なければなりません。
主治医はドナーに臓器提供手術について文書を用いて説明し、この文書には、ドナーの個別の状況に基づく術前・術後の危険性についての詳細な内容、当該医療機関での実施経験が記載されている必要があります。
ドナーは臓器提供に関して十分に理解した後に「臓器提供の承諾書」に署名するひつようがあるので、①ドナーが十分な時間をかけて意思決定出来るよう、一旦説明文書を持ち帰り考慮期間を設けること、②ドナーが質疑応答によって臓器提供に関する十分な知識を得ることができる医療相談体制を整えることが必要となります。
それには主治医だけではなく、レシピエントコーディネーターや看護師、公認心理師・臨床心理士、MSW(メディカルソーシャルワーカー)等によるドナーの意思決定を支援できる医療体制を整備することが望ましいとされています。
上記の4が本選択肢の正誤判断になりますね。
項目4にある通り、「最終的なドナーの自発的意思の確認は第三者による面接によって行う。その上で、第三者による「ドナーの自発的意思の確認」を得る」とあり、その第三者とは「ドナーの権利保護の立場にある者で、かつ倫理委員会が指名する精神科医等の複数の者をいう」とされています。
もちろん、主治医はドナーに臓器提供手術について文書を用いて説明するなどは行いますが、こちらは手術に関する説明であり、意思確認については「ドナーの権利保護の立場にある者で、かつ倫理委員会が指名する精神科医等の複数の者」が行うことになっているわけです。
よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。
初めてコメントさせていただきます。
自分の受験時には存じ上げませんでしたが、その後の継続学習で非常にお世話になっております。
この問題、まず真っ先に私は直感的に①を選択しました。
(恒例になりました試験翌日のYouTubeライブでも、これは①ですね。と瞬殺しています…💦)
ただその後、高坂先生を始め、様々な方の意見をお聞きし、結果「不適切問題になるだろう」と思って、解答を待っていましたが、予想通り「不適切問題」でした。
これの設問者は恐らく医師だと思いますが(臓器移植に密に関わる心理師の可能性もありますが・・)、実は医療現場では、ほとんどのデータは「日本移植学会」の統計をベースとして語られるため、そもそも『臓器移植法』を想定した問題ではないのではないかと思います。
特に『臓器移植法』を前提とした設問であれば、④の肝移植の選択肢は明らかにおかしな選択肢です。(100対0の選択肢をわざわざ作るとは思えない)
(肝移植は心臓死後は行えないため、そもそもそんな話は当初から想定しておらず、前提として『生体肝移植と比較して』の文言が抜けている)
ただ、国家試験なので、学会より法律の条文や省庁の統計データ等が優先されるのは理解できるので、設問に「臓器移植法」に基づいて、と明示して、そのデータに基づいた設問をすべきだったのじゃないかと思いました。
(ただ、医療者でもこの『臓器移植の実施状況等に関する報告書』について知っているものは極めて稀と思いますが…)
長文失礼しました。
参考)http://www.asas.or.jp/jst/pdf/factbook/factbook2021.pdf
内科医たけお先生
コメントありがとうございます。
解説内では引用していませんが、参考で載せて下さった「ファクトブック 2021」は見させていただいております。
この中に「眼球(角膜)」が目次に載っていないので「おや」と思っていました。
>実は医療現場では、ほとんどのデータは「日本移植学会」の統計をベースとして語られる
これを読んで納得がいきましたし、いくつかのサイトで選択肢①が正答と予想されていたのも頷けます。
>(肝移植は心臓死後は行えないため、そもそもそんな話は当初から想定しておらず、前提として『生体肝移植と比較して』の文言が抜けている)
これは不勉強でした…。
なるほど、生体肝移植と脳死後移植を比較するというのが前提となっている選択肢なわけですね。
となると、どうしても臓器移植法とバッティングしてしまいますね。
となると、本問は「臓器移植法に基づいた移植医療について…」もしくは「日本移植学会のファクトブックに基づいた移植医療について…」という前提がないと、適切に解くことができないということになりますね。
いずれにせよ、間違いなく「不適切問題」であると言える内容でしたね。
コメント、助かりました。
せっかくなので、解説内容を変えずに、本コメントも含めて解説の一部と皆さんに見てもらえると良いかなと思っています。
個人的な話ですが不適切問題に関して、問73の選択肢をきるには不確定要素ある点と問78が受傷機転の漢字の誤りがある点はなぜ不適切にならなかったのでしょうか。
第5回受験生です。いつもありがとうございます。
「①移植件数が最も多い臓器は腎臓である。」について、
第31回管理栄養士試験(問題27)において、以下の設問の正答は×とされています。
(4)× 髄移植は、臓器移植に含まれない。
臓器移植は、提供者の種類により、心臓死臓器移植(死体移植)、脳死臓器移植、生体臓器移植に分類される。心臓、肺、肝臓などの臓器は、心臓死により血流が途絶えると急速に機能が低下するので、死体移植はできない。腎臓、角膜などの臓器は、脳死臓器移植を行っても生着率が高い。肝臓と骨髄は、再生能力が高い臓器であるため、生体臓器移植が可能である。
https://diet2005.exblog.jp/26001243/
「骨髄移植は、臓器移植に含まれない。」の正答が×とされており、骨髄移植が臓器移植に含まれるとのことです。他の国家試験との整合性という意味でも、問29でも臓器移植として骨髄移植も比較対象とするべきなのかなと考えました。骨髄移植(BMT)・末梢血幹細胞移植(PBSCT)・臍帯血移植(CBT)のうちの、どこまでをカウントするかによって、件数は大きく異なると思います。
へしこ様
コメントありがとうございます。
ご指摘の内容も踏まえて解説を書き直したのでご確認ください。