公認心理師 2019-32

問32は日本の保険診療制度に関しての設問です。
恐らくは誰もが利用したことがある制度ですが、意外とお金の動きについては理解していないかもしれませんね。
これを機会に把握しておきましょう。

問32 我が国の保険診療の制度について、正しいものを1つ選べ。
①後期高齢者医療制度の対象は80歳以上である。
②被保険者は保健医療機関に一部負担金を支払う。
③審査支払機関は企業・事業所に負担金を請求する。
④診療報酬は保険者から保健医療機関に直接支払われる。
⑤保険薬局は処方箋を交付した保健医療機関に薬剤費を請求する。

むかし、児童相談所に勤めているときに児童福祉司の人から「日本が誇る国民皆保険制度に入っていないなんてあり得ない!」と言われました(何かの手違いで未加入だった。すぐに入りましたけど)。

窓口で支払うお金のことを法律的に何と呼ぶのか、病院や薬局がどこに請求しているのか、などについて法律的な用語を使って理解していくことが大切な問題です。

解答のポイント

保険診療にまつわるお金の流れをしっかりと把握していること。

選択肢の解説

①後期高齢者医療制度の対象は80歳以上である。

高齢者の医療の確保に関する法律の第50条には後期高齢者医療の被保険者に関する内容が定められています。

次の各号のいずれかに該当する者は、後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者とする。

  1. 後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する七十五歳以上の者
  2. 後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する六十五歳以上七十五歳未満の者であつて、厚生労働省令で定めるところにより、政令で定める程度の障害の状態にある旨の当該後期高齢者医療広域連合の認定を受けたもの

このように選択肢にある「80歳以上」が誤りであることがわかります。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

②被保険者は保健医療機関に一部負担金を支払う。

健康保険法第74条に一部負担金に関する規定が示されております。
「第六十三条第三項の規定により保険医療機関又は保険薬局から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該給付につき第七十六条第二項又は第三項の規定により算定した額に当該各号に定める割合を乗じて得た額を、一部負担金として、当該保険医療機関又は保険薬局に支払わなければならない

ちなみに同法第63条第3項は「第一項の給付を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる病院若しくは診療所又は薬局のうち、自己の選定するものから受けるものとする」とされております。
上記の「給付」という表現は耳慣れないかもしれませんけど、要するに以下を指します。

  1. 診察
  2. 薬剤又は治療材料の支給
  3. 処置、手術その他の治療
  4. 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
  5. 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

このように、これらの給付を受けた者は、医療機関や保険薬局に一時的にお金を支払うことになっています

よって、選択肢②が正しいと判断できます。

③審査支払機関は企業・事業所に負担金を請求する。
④診療報酬は保険者から保健医療機関に直接支払われる。
⑤保険薬局は処方箋を交付した保健医療機関に薬剤費を請求する。

健康保険法第76条の第1号には「保険者は、療養の給付に関する費用を保険医療機関又は保険薬局に支払うものとし、保険医療機関又は保険薬局が療養の給付に関し保険者に請求することができる費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、当該療養の給付に関し被保険者が当該保険医療機関又は保険薬局に対して支払わなければならない一部負担金に相当する額を控除した額とする」と規定されており、療養の給付に関する費用に関して各号にまとめています(健康保険事業の運営主体のことを「保険者」といいます)。

特に、健康保険法第76条第4号および第5号には以下のように規定されております。

  • 第4号:保険者は、保険医療機関又は保険薬局から療養の給付に関する費用の請求があったときは、第七十条第一項及び第七十二条第一項の厚生労働省令並びに前二項の定めに照らして審査の上、支払うものとする
  • 第5号:保険者は、前項の規定による審査及び支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金法による社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険法第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会に委託することができる

上記の「社会保険診療報酬支払基金法による社会保険診療報酬支払基金」「国民健康保険団体連合会」について把握しておくことが大切です。

社会保険診療報酬支払基金は、社会保険診療報酬支払基金法に基づき、医療機関から提出された診療報酬請求書の審査および保険者から医療機関への診療報酬の支払仲介を目的として設立された特別民間法人です。
なお国民健康保険においては国民健康保険団体連合会が同等の役割を果たしています。
これらを「審査支払機関」と称します。

関係性は以下の図がわかりやすいと思います。

すなわち、保険者は保健医療機関・保険薬局から費用の請求を受け、「社会保険診療報酬支払基金」「国民健康保険団体連合会」を仲介して支払われることがわかります
よって、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は誤りと判断できます。

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