問142は行動変容の段階を考慮した対応に関する問題です。
まず「行動変容の段階」とは何ぞや?という点に関して理解していることが大切ですね。
2019-53では「行動変容ステージモデル」を中心に解いていますが、このことを指していると思われます。
問142 47歳の男性A。Aは、長年の飲酒、食習慣及び喫煙が原因で、生活習慣病が悪化していた。主治医はこれらの習慣は簡単には変えられないため、院内の公認心理師と共にじっくりと取り組むようカウンセリングをAに勧めた。Aは「酒もたばこも生活の一部だ」と話す一方で、「自分の身体のことは心配なので、この2週間はたばこの本数を毎日20本から15本に減らし、1日の最初の1本を遅らせている。酒はやめる気はない」と言う。
Aの行動変容の段階を考慮した公認心理師の対応として、最も適切なものを1つ選べ。
①禁酒も始めるように促す。
②生活習慣病への意識を向上させる。
③禁煙のための具体的な計画を立てる。
④飲酒と喫煙の害について心理教育を行う。
⑤喫煙本数が増えないように現在の自分なりの制限を継続させる。
個人的には、本問はなかなか難しかったと思います。
まず事例の男性が、行動変容ステージモデルのいずれの段階であるかを判断するのが非常に困難でした。
以下に述べた論理が適切であるのかは定かではありませんが、現状集められる情報から判断しました。
もう1点、困難だと感じたのが、行動変容ステージモデルで理論的に示されている対応と、臨床実践で培った知見に基づく対応が合致しない可能性もあるということです。
事実、私がカウンセラーの立場なら、本問の正答となる対応は採らないだろうと思うのです。
と言っても、本問は「行動変容の段階を考慮した公認心理師の対応」を選択することが求められているので、私が個人的な臨床経験から何を導くかを問うているわけではないのです。
よって、自分の考えは一旦棚上げし(書き換えるわけではない)、あくまでも行動変容ステージモデルに基づいた対応を選択していくことが重要ですね。
なぜなら、これは「試験問題」なのですから。
解答のポイント
事例が行動変容ステージモデルにおけるいずれの段階であるかを推定できる。
その上で、各選択肢の対応がいずれの段階に対応しており、推定した段階に該当する対応を選択することができる。
行動変容ステージモデル
行動変容ステージモデルとは、1980年代前半に禁煙の研究から導かれたモデルですが、その後食事や運動をはじめ、いろいろな健康に関する行動について幅広く研究と実践が進められています。
行動変容ステージモデルでは、人が行動(生活習慣)を変える場合は、以下の図のように「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えます。
行動変容ステージモデルは、患者がいまどのような行動変化の準備状態にいるかによって、医療者がどのような援助をすれば、行動変化を促進できるかを科学的に研究したものです。
こちらは、本人の心の状態に応じて、次のようにステージ分けが可能です。
併せて、これらの各ステージでの働きかけを把握しておきましょう。
【無関心期】
6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない時期;行動変容に関心がない時期。
特徴を列挙すると…
- ストレスマネジメント行動の必要性をあまり感じていない。
- 効果的なストレスマネジメント行動がどういうものかよく分からない。
- ストレスマネジメント行動を行ったときの恩恵と、行わないときの負担を知らない
- ストレス対処のために何かしようと考えていない。
- ストレスマネジメント行動に対して負担感の方が大きいと考えている。
…などとなります。
行動変容の必要性を正しく理解してもらい、関心を持ってもらう援助が必要であり、考えや感情を聴きながら、情報提供としてのティーチングを根気強く繰り返す時期です。
ただし、脳梗塞、心疾患、癌などになる確率(ネガティブ情報)を伝えて脅すだけでは、防衛的態度や反感を強める結果になりかねません。
生活習慣を変えることで健やかな生活を実現している人の成功例(ポジティブ情報)も、同時に伝えていく必要があります。
【関心期】
6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期;行動変容に関心はあるが、まだ実行する意思がない時期。
特徴を列挙すると…
- ストレスマネジメント行動の恩恵には興味を持っているが、すぐに実行する気にはなっていない。
- 何から始めればいいかよく分からない、また自分にできるかどうか不安に思っている。
- ストレスマネジメント行動を実行するよりも、今のままがいいと思っている。
…などとなります。
具体的には、取り組むべきターゲット行動を決める、負担感を軽減して恩恵を高める(意思決定のバランス)、さらに気づきを高める(意識化の高揚、感情的な体験)、自己イメージを変える(自己の再評価、自己効力感)などが重要になります。
この時期からは、傾聴しながら受容的・共感的に接して、信頼関係を築いていくことが特に大切となり、そのためにカウンセリングの技術が必要となります。
関心はあるが行動を起こす意思のない段階であり、その背景には行動変容そのものや、それに伴う負担への不安も少なくありません。
したがって、行動変容の具体的な方法や過程についても正しく理解してもらい「それなら私にもできる」という自己効力感を高めてもらうことが大切であり、そのために情報提供としてのティーチングを行います。
具体的なアプローチとして、身体活動が不足している自分をネガティブに、身体活動を行っている自分をポジティブにイメージするなどがあります。
【準備期】
1ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期;行動変容に向けた行動を実行したいと思っている時期。
行動変容の準備ができている状態ではあるが、同時に行動変容に対して失敗を恐れている段階といえます。
すなわち…
- ストレスマネジメント行動に前向きに取り組もうと考えている
- ストレスマネジメント行動を実行するだけの自信が持てず始めることを躊躇している
- ターゲット行動は決まっており、あとは実行するだけの状態にある
- 恩恵と負担感のバランスが恩恵の方に少しずつ傾き始めている
…などの特徴があります。
このステージにある人には、目標を設定して、行動のための具体的計画を立てることが有効になる時期です。
適切な目標と行動計画を立ててもらうことで、自己効力感を高めてもらいながら、実行に移してもらう援助が必要となります。
働きかけとして、身体活動をうまく行えるという自信を持ち、身体活動を始めることを周りの人に宣言するなどがあります。
具体的には、決意表明をする(自己の解放)、新しい自分をイメージする(自己の再評価、環境の再評価)、代替行動について考え具体策を計画する(拮抗条件づけ)、周りの人の支援を受ける(援助的関係の利用)、などになります。
特に具体的な行動を計画することは、このステージにおいて一番重要なプロセスであり、ストレスマネジメント行動によって健康的なライフスタイルへと生活を変える方略となる。
ポイントは、あれもこれもとたくさん計画を立てないこと、である。
やる気が高まっているときは、たくさんの計画を立ててしまうが、実行できなければ後にそれが失敗体験となり自己効力感を下げることにつながってしまいます。
実行可能な具体策を計画することが求められます。
準備ステージでは、ストレスマネジメント行動を行わないことによる負担を明確にし、計画・目標を立てることがより重要になります。
そして、ストレスマネジメント行動を行うことにポジティブなイメージを持ち、実行に移します。
その際、決意表明をし、周囲と意思を共有することも大切になる場合も多いです。
【実行期】
明確な行動変容が観察されるが、その持続がまだ 6ヶ月未満である時期;明確な行動変容が観察されるが、その持続に自信がない時期。
その特徴は、行動変容に対して時間や労力を最も要し、前のステージに最も後戻りしやすい点にあります。
特に次の2つが指摘できます。
- 実行し始めた最初の6か月は、行動変容を維持することが最も難しく、つまずきやすく、後戻りしてしまう可能性が高い。
- 自己効力感が高く、ストレスマネジメント行動のメリットを実感している。
…などです。
この時期には、報酬を考える(強化マネジメント)、後戻りを予防する(拮抗条件づけ)、継続的にストレスマネジメント行動を行えるよう環境を整備する(刺激コントロール・環境の再評価)、周囲の支援をもう一度認識する(援助的関係の利用)、現在の実行状況を確認する、などのアプローチが効果的とされています。
実行ステージは、継続が難しくなる時期だが、自己効力感は上昇し続けているとされています。
報酬を用意するなど、後戻りにいかに対処するかがポイントとなる段階です。
そのためにも、後戻りの原因となりそうな要因を予測し、回避できるような対処法を予めしっかり考えておくことが重要となります。
【維持期】
明確な行動変容が観察され、その期間が6ヶ月以上続いている時期;明確な行動変容が観察されて、その持続に自信がある時期。
このような人の特徴としては…
- 自己効力感はすべてのステージの中で最も高い水準にある。
- 後戻りしにくい状態になっている。
- ストレスマネジメント行動を楽しんでいる様子が伺え、負担感よりも恩恵が大きい。
…などです。
このステージにいる人への働きかけは、後戻りの防止とストレスのコントロールを中心として、ストレスを予測する(自己の再評価)、後戻りを予防する(拮抗条件づけ)、周囲の支援を再認識する(援助的関係の利用)、現在の実行状況を確認する(刺激コントロール)などが重要になります。
維持ステージは、自己効力感も上昇し、ストレスマネジメント行動を順調に続けている時期であるが、後戻りの原因となる要因を予測し、回避できるような対処法をしっかり考えておくことも必要です。
予測できない状況下で誰に頼るべきかなど、周囲の支援を見つめ直しておくことが大切になります。
事例はどの行動変容段階に位置していると捉えられるのか?
事例の記述を検証していきましょう。
問題文にある「Aは「酒もたばこも生活の一部だ」と話す一方で、「自分の身体のことは心配なので、この2週間はたばこの本数を毎日20本から15本に減らし、1日の最初の1本を遅らせている。酒はやめる気はない」と言う」という状態を、行動変容ステージモデルのどの段階であるかを認識することが大切になります。
まずは言葉として「酒もたばこも生活の一部だ」と言ってはいますが、「自分の身体のことは心配なので、この2週間はたばこの本数を毎日20本から15本に減らし、1日の最初の1本を遅らせている」と自分なりに行動変容を実行しています。
ただし、ストレスマネジメント行動を具体的に考えての行動ではないという点が重要ですね。
「酒はやめる気はない」と言ってはいますが、既にたばこの本数を減らしていることから生活習慣の変容に興味関心がある状態であると見なすことは大切です。
このことから、まずは「無関心期」は除外することができるでしょう。
また、明確な行動変容が確認され6か月続いているという「維持期」も除外することができます。
残るは「関心期(6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期)」「準備期(1ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期)」「実行期(明確な行動変容が観察されるが、その持続がまだ 6ヶ月未満である時期)」のいずれであるかを検証していくことが求められます。
事例では多少の行動変容を実践していますが、「明確な行動変容をしている」とは言い難く、その上「ストレスマネジメント行動を具体的に考えての行動ではない」と言えるので「実行期」は除外できると思われます。
また事例が語っている「酒もたばこも生活の一部だ」「酒はやめる気はない」という表現は、「実行期」にある「自己効力感が高く、ストレスマネジメント行動のメリットを実感している」という状況とは異なるものと思われます。
残るは「関心期」と「準備期」ですが、「関心期」は自分なりに行動変容をしているという事例の状況を考えると除外できそうです。
ただし、「関心期」を除外するとなると「酒もたばこも生活の一部だ」「酒はやめる気はない」という表現をどう捉えるかが大切になってきます。
この表現は「行動変容に関心はあるが、まだ実行する意思がない」「ストレスマネジメント行動を実行するよりも、今のままがいいと思っている」という「関心期」の特徴と見なすことも可能ですが、そうなると自分なりに行動変容を実践しているという状態との矛盾が生じてしまいます。
よって、別の角度から「酒もたばこも生活の一部だ」「酒はやめる気はない」という表現の意味を考えてみましょう。
こうした「酒もたばこも生活の一部だ」「酒はやめる気はない」という表現、および禁煙に関しては自分なりに行動変容をしようとしているという、やや矛盾した言動は、「準備期」に見られるような「行動変容の準備ができている状態ではあるが、同時に行動変容に対して失敗を恐れている」というアンビバレンスな状態を表現した言葉であると見なすことも可能です。
つまり、実行の意思があり、実際に自分なりに実行もしているが、より効果的・具体的な行動を実行するだけの自信が持てず始めることを躊躇しているという複雑な内面を表現しているのが、このクライエントの言葉であるということです。
また「準備期」に特徴的な「ターゲット行動は決まっており、あとは実行するだけの状態にある」という面も事例に当てはまると言えるでしょう。
ここでまとめておきましょう。
- 無関心期:既にたばこの本数を減らしていることから生活習慣の変容に無関心とは言えないので除外できる。
- 関心期:「効果的なストレスマネジメント行動」とはなっていないもののクライエントなりに行動変容を実行しており、「行動変容を実行していないこと」が要件となっている関心期は除外することができる。
- 準備期:「効果的なストレスマネジメント行動」とはなっていないが行動変容を実行している。さらに、クライエントの言動は「行動変容の準備ができている状態ではあるが、同時に行動変容に対して失敗を恐れている」というアンビバレンスな状態を映しだしたものと解することが可能である。よって、本クライエントの行動変容ステージは「準備期」であると推定できる。
- 実行期:クライエントは行動変容を実行しているものの「前段階までで定められるような効果的なストレスマネジメント行動」とはなっていない。また、言動からも「ストレスマネジメント行動のメリットを実感している」とは言い難いため、この段階であることは除外できる。
- 維持期:「効果的なストレスマネジメント行動」の実行および6か月以上の維持がなされていないため除外できる。
以上より、本事例は「準備期」にあるものと見なして、以下の選択肢から「準備期」の対応を選択することが求められる問題であると考えることができます。
選択肢の解説
①禁酒も始めるように促す。
この選択肢自体は「準備期」の対応を述べたものではありますが、事例の状況と合致しない面があります。
まず「準備期」の対応で中心となるのは「目標を設定して、行動のための具体的計画を立てること」になりますから、こうした具体的な目標の設定は理論上は適切と言えなくもありません。
しかし事例は、自分なりに禁煙には手を付けていますが、禁酒については「酒はやめる気はない」という姿勢を取っています。
この状態で「禁酒」にまで変容を求めるのは欲張りすぎという印象を受けますね。
「準備期」のポイントは「あれもこれもとたくさん計画を立てないこと」であるとされています。
実行できなければ後にそれが失敗体験となり自己効力感を下げることにつながってしまいます。
この段階では、クライエントが自ら始めた禁煙の工夫から、行動変容へのアプローチに入っていくことが望ましいと考えられます。
以上より、本選択肢の対応は「準備期」の対応に沿ったものと言えますが、事例の状況を踏まえると「禁煙」に関して具体的な対応を提案していくというアプローチがより適切であると考えられます。
この時点で「禁酒」にまで手を伸ばすのは、行動変容ステージを後退させてしまう恐れもあります。
よって、選択肢①は不適切と判断できます。
②生活習慣病への意識を向上させる。
意識の向上については「関心期」の対応であると考えられます。
「関心期」は、関心はあるが行動を起こす意思のない段階であり、その背景には行動変容そのものや、それに伴う負担への不安も少なくありません。
したがって、行動変容の具体的な方法や過程についても正しく理解してもらい「それなら私にもできる」という自己効力感を高めてもらうことが大切であり、そのために情報提供としてのティーチングを行います。
これらの対応は選択肢の「意識を向上させる」と表現して差し支えないと考えられます。
意識を向上させることで、次の実行の「準備期」に入るように促していくということですね。
よって、選択肢②は不適切と判断できます。
③禁煙のための具体的な計画を立てる。
こうした具体的な計画を立てるのが「準備期」の主要なアプローチとなりますから、本事例にはこの段階のアプローチが行われることになるでしょう。
また、事例の「酒はやめる気はない」という表現からも、お酒に手を付けるよりもクライエント本人が行動変容を実践している煙草に焦点を当てたアプローチの方が適切と言えるでしょう。
そもそも酒も煙草も、同じく「生活習慣」の一部です。
よって、両方とも変えないといけないというのではなく、クライエントが変えやすいポイントから変容を実践していき、その効果を実感できれば次の変容(この事例であれば禁酒とか)につながることが期待できます。
以前、運行管理者への講義を行っていましたが、そこでスタッフの方から面白い話をききました。
あるタクシー会社で事故が多かったのですが、事故にも様々な種類があります。
追突や不注意による衝突などなどがある中で、特に多かったバック事故(後退時にぶつけちゃう)を減らそうということを会社内で共有したそうです。
「色々あるけど、まずはバック事故だけは無いようにしようね」という形の共有だったそうです。
実際にバック事故は無くなったということでしたが、効果はそれにとどまらず、会社の事故全体(追突等のバック事故以外の事故も含めて)が減少したそうです。
このように「事故を無くそう」という目標よりも、具体的で取り組みやすい目標を設定することで、全体に良い効果が波及することはよく見られる現象です。
生活習慣病の改善でも「酒も煙草も」となってしまうと、これまで培ってきた生活習慣全体の変容になってしまい、それは当人としても受け容れづらいところもあるでしょう。
ですから、本事例のように当人が実践しているところから「効果的なストレスマネジメント行動」を共有し、その変容を狙うことから始めてみるのが大切だと思います。
よって、「禁煙のための具体的な計画を立てる」というのは、事例の状況を鑑みてもあり得る対応だと言えるでしょう。
以上より、選択肢③が適切だと判断できます。
本事例には何回目の面接であるのか、という記述が無いので判断が難しいところですが、もしもこれが初回の面接であれば本選択肢のような対応は性急だと感じます。
クライエントは自分なりに行動の修正をしており「変容の意思」があるのは見て取れますが、同時に迷いも見えるという形ですから、私ならばこの迷いに付き合いつつ、変容の意思が強まるようアプローチしていくかなと思います。
このような「迷い」に付き合わずに変容を促していくと、どこかでこの「迷い」が変容の過程を妨げるという事態にもなりやすいのです。
…とは言っても、あくまでも「行動変容段階に応じた対応」であり、何回目の面接であるかという情報が無い以上、本選択肢を選ぶのが最も適切であるという判断にはなるのだろうと思います。
④飲酒と喫煙の害について心理教育を行う。
本選択肢の対応は「無関心期」のものであると考えられます。
この時期には、行動変容の必要性を正しく理解してもらい、関心を持ってもらう援助が必要であり、考えや感情を聴きながら、情報提供としてのティーチングを根気強く繰り返す時期とされています。
選択肢の「飲酒と喫煙の害について心理教育を行う」というのは、まさにそういったティーチングを指していると言えるでしょう。
ただし、実際にはネガティブ情報を伝えて脅すだけでは、防衛的態度や反感を強める結果になりかねません。
生活習慣を変えることで健やかな生活を実現している人の成功例(ポジティブ情報)も、同時に伝えていく必要があるとされていますね。
無関心期にはこの両方の情報を、相手の状態に合わせてバランスよく供給していくことになるでしょう。
以上より、選択肢④は不適切と判断できます。
⑤喫煙本数が増えないように現在の自分なりの制限を継続させる。
本選択肢の対応は「実行期」のものであると考えられます。
まず現状維持させるという対応に関しては、その行動変容が「効果的なストレスマネジメント行動」になりますから、本事例の状況とは異なると言えますね(事例は、自分なりの行動変容をしているだけで、効果的なものとは言い難い)。
実行期の特徴は、行動変容に対して時間や労力を最も要し、前のステージに最も後戻りしやすい点にあります。
よって、報酬を用意するなど、後戻りにいかに対処するかがポイントとなる段階です。
現状のクライエントのやり方を支持するという対応は、励ましであると同時に現在の実行状況を確認するということにもなるでしょう。
これらは「実行期」を中心に行われるものであると見なすことが可能です。
ちなみに「~させる」という文体は、臨床実践にはそぐわない表現ですね。
あくまでも印象にすぎませんが。
以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。