この問題については以前解説を行いましたが、以下の通り修正します。
以前の記事を参照の上、以下を読み進めて頂けると幸いです。
本問は選択肢②および選択肢⑤を正答と捉えておりましたが、公式回答では選択肢③も正答となるとのことでした。
よって、選択肢②、③、⑤の3つが正しいとなります。
ここでは、以前の記事で誤りと判断した選択肢③を中心に解説のし直しを行っていきます。
選択肢③を誤りとしていた理由
「精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準」において、隔離についての運用も細かく規定されています。
- 患者の隔離(以下「隔離」という )は、患者の症状からみて、本人又は周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く、隔離以外の方法ではその危険を回避することが著しく困難であると判断される場合に、その危険を最小限に減らし、患者本人の医療又は保護を図ることを目的として行われるものとする。
- 隔離は、当該患者の症状からみて、その医療又は保護を図る上でやむを得ずなされるものであって、制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあってはならないものとする。
- 12時間を超えない隔離については精神保健指定医の判断を要するものではないが、この場合にあってもその要否の判断は医師によって行われなければならないものとする。
- なお、本人の意思により閉鎖的環境の部屋に入室させることもあり得るが、この場合には隔離には当たらないものとする。この場合においては本人の意思による入室である旨の書面を得なければならないものとする。
上記のように、隔離であっても「12時間以内であれば」精神保健指定医の判断は要しません。
以前の解説では、この点を重視して選択肢③を誤りと判断しました。
選択肢③が正しいと判断する場合の考え方
一方で、選択肢③は公式回答では「正しい」とされています。
隔離についていくつか見落としがあったので、ここで列挙していきます。
隔離は概ね3パターン存在します。
- 第36条第3項に基づく場合:精神保健指定医の診察により行われ、時間制限はない。
- 第37条に基づく場合:精神保健指定医以外の医師の診察により行われ、12時間までの制限がある。
- 患者本人の申し出による場合:上記の手続きが別に行われない限り、本人の申し出により、自由に退室できる。
元々の解説では「第36条第3項に基づく隔離」について示していませんでした。
精神保健福祉法第36条第3項は以下の通りです。
「第一項の規定による行動の制限のうち、厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める患者の隔離その他の行動の制限は、指定医が必要と認める場合でなければ行うことができない」
※第36条第1項は「精神科病院の管理者は、入院中の者につき、その医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができる」です。
この第36条第3項に基づく隔離の場合は、選択肢③の内容が正しいと言えます。
更に、第37条に基づく隔離の場合についてはどうでしょうか。
あくまでも「十二時間を超えない隔離については精神保健指定医の判断を要するものではないが、この場合にあってもその要否の判断は医師によって行われなければならないものとする」(厚生労働省発障第0426001号:諮問書)とあるように、12時間が区切りなのは間違いないようです。
こちらの選択肢は2通りの読み方が可能で、
- 「12時間以内の隔離は精神保健指定医の診察を要しない」から誤りと判断する。
- 「12時間以上の隔離は精神保健指定医の診察を要する」から正しいと判断する。
- 第37条第3項に基づく隔離と考え、選択肢③は正答とする。
- 第36条に基づく隔離と考え「12時間以上の隔離は精神保健指定医の診察を要する」から正しいと判断する。
- 第36条に基づく隔離と考えるが「12時間以内の隔離は精神保健指定医の診察を要しない」から誤りと判断する。
以上の点から、選択肢③を正しいと判断したと考えられます。