Lewy小体型認知症の症状や特徴に関する問題です。
もうお馴染みになりました各型の認知症に関する内容ですから、しっかり押さえておきましょう。
問43 Lewy小体型認知症の症状や特徴として、不適切なものを1つ選べ。
① 常同行動
② 自律神経症状
③ Parkinson症状
④ 視空間認知障害
⑤ レム睡眠行動異常
解答のポイント
各型の認知症の症状や特徴を把握している。
選択肢の解説
② 自律神経症状
③ Parkinson症状
④ 視空間認知障害
⑤ レム睡眠行動異常
Lewy小体型認知症は、認知症と意識障害、それとパーキンソン症状などを特徴とし、大脳においてレビー小体を認める疾患です。
マッキースらによって1996年に「レビー小体をともなう認知症」の臨床的診断基準を提唱したのが注目を集めるきっかけになったのですが、それ以前より、通常はパーキンソン病の脳幹部に限局して見られるレビー小体が大脳皮質にもみられることがあることは知られていました。
老年期の認知症患者において、大脳皮質にレビー小体を認めた報告は、岡崎によってなされましたが、その後、日本を中心に多くの症例が報告されています。
小阪ら(1990)は、このような症例をびまん性レビー小体病と名付けて報告しました。
Lewy小体型認知症の診断基準は以下の通りとなります。
Lewy小体型認知症は、進行性の認知機能障害で、正常の社会的、職業的な機能に相当な障害を生ずるもので、著しいあるいは持続的な記憶障害は必ずしも初期からみられるとは限らないが、進行するにしたがって明らかになっていきます。
注意、実行機能、視空間機能の障害は特に著しいとされています。
以下が中核症状、示唆する症状、支持する症状、むしろ否定される症状になります。
中核症状:
- 浮動的に変化する認知機能(ことに注意と活動性においてみられる)
- くりかえされる幻視(細かい点まで、はっきりしている)
- パーキソンニズム(特発性)
示唆する症状:
- レム睡眠期の行動障害
- 神経遮断薬に重篤な過敏性あり
- SPECTやPETで基底核にドパミン伝達物質が低値を示す
支持する症状:
- よくみられるが、診断的な特異性は証明されていない
- 転倒と卒倒(くりかえされる)
- 一過性の(説明がつかない)意識の喪失
- 自律神経障害(重篤、たとえば起立性低血圧、尿失禁)
- 幻覚(あらゆるかたちのもの)
- 妄想(系統的)
- うつ
- 画像で内側側頭葉が比較的保たれている
- 画像で後頭部の活動低下
- MIBG心筋シンチグラフで異常(低値)
- 脳波で徐波が目立つ(側頭葉に一過性鋭波)
むしろ否定的な症状
- 脳血管障害がある
- 身体疾患がある、あるいは臨床症状を説明できるような大脳疾患がある
- 重篤な認知症で、パーキンソンニズムが初めて出現したとき
上記のように、レビー小体型認知症の中核症状としては浮動する認知機能、幻視、パーキンソン症状が挙げられています。
これらを踏まえ、各選択肢についてもう少し詳しく述べていきましょう。
まず自律神経症状ですが、便秘、トイレに行ってもまたすぐに行きたくなり尿回数が増える(頻尿)、急におしっこがしたくなり我慢できずにもらしてしまいそうになる(尿意切迫)、排尿後も尿が残っている感じがある(残尿感)、尿が漏れる(尿失禁)といった症状がみられ、また起立時の立ちくらみ(起立性低血圧)もあります。
自律神経症状としては、起立性低血圧・体温調節障害・頻尿・めまいなどが多いですね。
Lewy小体型認知症のパーキンソン症状の典型的な場合では寡動、筋強剛、振戦がみられ、小刻み歩行、前傾姿勢、姿勢反射障害、構音障害、仮面様顔貌など、パーキンソン病でみられるものと差異はありません。
ただし、初期には下肢脱力と易転倒性がみられる程度で、進行しても寡動と筋強剛のみで振戦は末期まで目立たない場合があります。
振戦がみられても安静時振戦は少なく、末期になって四肢・体幹の筋強剛が急速に進行する場合がしばしば見られます。
抗精神病薬に対する感受性の亢進により、幻視や妄想の治療に抗精神病薬を少量使用したときに、嚥下障害やパーキンソニズムが増悪、ときに悪性症候群を呈することがあるので注意が必要とされています(精神症状が前景化し向精神薬を使用した場合、薬剤性パーキンソニズムが生じる場合もあり、鑑別が必要となる)。
Lewy小体型認知症では、病初期は記憶障害より、遂行機能障害および視空間認知障害とともに注意障害、構成障害などの症状が強く出現するのも特徴とされています。
視空間認知障害では、例えば、図形が描けない、地図が読めないなどが見られますが、これは目からの情報を上下、左右、前後などの位置関係や立体的な空間としてイメージすることができないためと考えられています。
Lewy小体型認知症における生活での困り事は、主に注意障害・視覚認知障害に基づくことが多く、記憶障害によって生活の障害が生じるAlzheimer型認知症とは異なります。
Alzheimer型認知症と比較して、初期から視空間認知障害とともに注意障害、構成障害などの症状が強く出現するのも特徴で、他の認知機能と比較して不釣合いな遂行能力や問題解決能力の低下を生じます。
Lewy小体型認知症において、レム期睡眠行動異常症はかなり多く遭遇する症状であり、2017年までの診断基準では中核症状としては認められていませんでしたが、2017年に改訂された臨床診断基準では中核的特徴として位置づけられました。
Lewy小体型認知症やパーキンソン病は、病変が嗅球近傍という部分から上行するためREM睡眠のスイッチに影響が生じるとされており、この点ではパーキンソン病とLewy小体型認知症は共通しています。
Lewy小体型認知症では約60~80%と極めて高率にレム睡眠時行動障害が出現し、また幻視やパーキンソニズムに先だって認められ、夢内容と一致する行動異常が現れて大声を上げたり暴れるなどの行動異常が認められます。
以上より、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤はLewy小体型認知症の症状や特徴として適切と判断でき、除外することになります。
① 常同行動
常同行動とは、身体の一部分あるいは全体を目的なく繰り返し動かす行動であり、持続時間も長い場合が多いものです。
知的障害や統合失調症でも認められますが、認知症の場合は頑固に同じことを繰り返そうとするといった形を取る場合が多いです。
例えば、いつも同じコースの長い時間の外出を繰り返すなど、です。
こちらは前頭側頭型認知症で見られることが多い症状で、ほぼ全例で常同行動がみられます。
ここでは行動障害型の前頭側頭型認知症の症候について記載していきます。
- 病識の欠如:病初期から認められ、病感すら欠いていることもある。
- 自発性の低下:常同行動や落ち着きのなさと共存して見られることが多い。
- 感情・情動変化:多幸的であることが多いが、焦燥感、不機嫌が目立つ例もある。
- 被影響性の亢進:外的な刺激や内的な欲求に対する被刺激閾値が低下し、その処理が短絡的で、反射的、無反省なものになることが特徴的。
- 脱抑制・我が道を行く:本能の赴くままの行動で、反社会的行為につながることもある。
- 常同行動:ほぼ全例で認められる。
- 転動性の亢進:ある行為を維持できないという症状で、外界の刺激に対して過剰に反応する。
- 食行動の異常:食欲の変化、嗜好の変化、食習慣の変化が見られる。
このように前頭側頭型認知症では、前頭葉や側頭葉障害による行動障害が特徴的です。
常同行動自体は他の型の認知症でも見られるものではありますが、ほぼ全例で認められるほどに顕著という点で言えば前頭側頭型認知症になるでしょう。
よって、選択肢①がLewy小体型認知症の症状や特徴として不適切と判断でき、こちらを選択することになります。