またもやDSM-5のカテゴライズを問う問題です。
DSM-5の基準ばっかり書いていても面白くないので、分離不安障害への支援法(小学校低学年・学校の対応含む)も書いておきました。
問14 DSM-5の心的外傷およびストレス因関連障害群に分類される障害として、正しいものを1つ選べ。
① 適応障害
② ためこみ症
③ 病気不安症
④ 強迫症/強迫性障害
⑤ 分離不安症/分離不安障害
解答のポイント
DAM-5の各障害群とそれに含まれる障害を把握している。
選択肢の解説
① 適応障害
適応障害は「心的外傷およびストレス因関連障害群」に分類される障害です。
このカテゴリーの障害としては…
- 反応性愛着障害
- 脱抑制型対人交流障害
- 心的外傷後ストレス障害
- 急性ストレス障害
- 適応障害
…が挙げられます。
適応障害の診断基準は以下の通りです。
A.はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3ヵ月以内に情動面または行動面の症状が出現。
B.これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある。
- 症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても、そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛。。
- 社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の重大な障害。
C.そのストレス関連障害は他の精神疾患の基準を満たしていないし、すでに存在している精神疾患の単なる悪化でもない。
D.その症状は正常の死別反応を示すものではない。
E.そのストレス因、またはその結果がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヵ月以上持続することはない。
▶該当すれば特定せよ
急性:その障害の持続が6ヵ月未満。 持続性(慢性):その障害が6ヵ月より長く続く。
以上のように、選択肢①が心的外傷およびストレス因関連障害群に分類される障害と言えます。
よって、選択肢①が正しいと判断できます。
② ためこみ症
④ 強迫症/強迫性障害
これらは「強迫症および関連障害群/強迫性障害および関連障害群」の障害となります。
このカテゴリーの障害としては…
- 強迫性障害
- 身体醜形障害
- ためこみ症
- 抜毛症
- 皮膚むしり症
- 物質・医薬品誘発性強迫性障害および関連障害
…となります。
まず選択肢②のためこみ症の診断基準は以下の通りです。
A.実際の価値とは関係なく、所有物を捨てること、または手放すことが持続的に困難である。
B.品物を捨てることについての困難さは、品物を保存したいと思われる要求やそれらを捨てることに関連した苦痛によるものである。
C.所有物を捨てることの困難さによって、活動できる生活空間が物で一杯になり、取り散らかり、実質的に本来意図された部屋の使用が危険にさらされることになる。もし生活空間が取り散らかっていなければ、それはただ単に第三者による介入があったためである(例:家族や清掃業者、公的機関)。
D.ためこみは、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害(自己や他者にとって安全な環境を維持するということも含めて)を引き起こしている。
E.ためこみは他の医学的疾患に起因する物ではない(例:脳の損傷、脳血管疾患プラダー・ウィリ症候群)。
F.ためこみは、他の精神疾患の症状によってうまく説明されない(例:強迫症の強迫観念、うつ病によるエネルギー低下、統合失調症や他の精神病性障害による妄想、認知症における認知機能障害、自閉スペクトラム症における限定的興味)。
▶該当すれば特定せよ
過剰収集を伴う:不必要であり、置く場所がないにもかかわらず過度に品物を収集する行為が、所有物を捨てることが困難である状態に伴っている場合。
▶該当すれば特定せよ
病識が十分または概ね十分:その人はためこみに関連した信念や行動(品物を捨てることの困難さ、取り散らかし、または過剰な収集に関連する)が問題であると認識している。
病識が不十分:その人は、反証の根拠があるにもかかわらず、ためこみに関連した信念や行動(品物を捨てることの困難さ、取り散らかし、過剰な収集に関連する)に問題がないとほとんど確信している。
病識が欠如した・妄想的な信念を伴う:その人は、反証の根拠があるにもかかわらず、ためこみに関連した信念や行動(品物を捨てることの困難さ、取り散らかし、過剰な収集に関連する)に問題がないと完全に確信している。
さらに、選択肢④の強迫症/強迫性障害の診断基準も示していきます。
A.強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在
強迫観念は以下の1. と2. によって定義される:
- 繰り返される特徴的な思考、衝動、またはイメージで、それは障害中の一時期には侵入的で不適切なものとして体験されており、たいていの人においてそれは強い不安や苦痛の原因となる。
- その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、または何か他の思考や行動(例:強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる。
強迫行為は以下の1. と2. によって定義される:
- 繰り返しの行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する)または心の中の行為(例:祈る、数える、声に出さずに言葉を繰り返す)であり、その人は強迫観念に対して、または厳密に適用しなくてはいけないある決まりに従ってそれらの行為を行うよう駆り立てられているように感じている。
- その行動または心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としている。しかしその行動または心の中の行為は、それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりをもたず、または明らかに過剰である。
注:幼い子どもはこれらの行動や心の中の行為の目的をはっきり述べることができないかもしれない。
B.強迫観念または強迫行為は時間を浪費させる(1日1時間以上かける)。または臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
C.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。
D.その障害は他の精神疾患ではうまく説明できない(例:全般不安症における過剰な心配、醜形恐怖症における容貌へのこだわり、ため込み症における所有物を捨てたり手放したりすることの困難さ、抜毛症における抜毛、皮膚むしり症における皮膚むしり、常同運動症における常同症、摂食障害における習慣的な食行動、物質関連障害および嗜好性障害群における物質やギャンブルへの没頭、病気不安症における病気をもつことへのこだわり、パラフィリア障害群における性的衝動や性的空想、秩序破壊的・運動制御・素行症群における衝動、うつ病における罪悪感の反芻、統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群における思考吹入や妄想的なこだわり、自閉スペクトラム症における反復的な行動様式)
▶該当すれば特定せよ
病識が十分または概ね十分:その人は強迫症の信念がまったく、またはおそらく正しくない、あるいは正しいかもしれないし、正しくないかもしれないと認識している。
病識が不十分:その人は強迫症の信念がおそらく正しいと思っている。
病識が欠如した妄想的な信念を伴う:その人は強迫症の信念は正しいと完全に確信している。
▶該当すれば特定せよ
チック関連:その人はチック症の現在症ないし既往歴がある。
以上のように、選択肢②および選択肢④は心的外傷およびストレス因関連障害群に分類される障害に合致しません。
よって、選択肢②および選択肢④は誤りと判断できます。
③ 病気不安症
こちらは「身体症状症および関連症群」の障害になります。
このカテゴリーの障害としては…
- 身体症状症
- 病気不安症
- 転換性障害
- 他の医学的疾患に影響する心理的要因
- 虚偽性障害
…となります。
病気不安症は昔で言う心気症ですね。
病気不安症の診断基準は以下の通りです。
A.重い病気である、または病気にかかりつつあるというとらわれ
B.身体症状は存在しない、または存在してもごく軽度である。他の医学的疾患が存在する、または発症する危険が高い場合(例:濃厚な家族歴がある)は、とらわれは明らかに過度であるか不釣り合いなものである。
C.健康に対する強い不安が存在し、かつ健康状態について容易に恐怖を感じる。
D.病気についてのとらわれは少なくとも6ヵ月は存在するが、恐怖している特定の病気は、その間変化するかもしれない。
E.その病気に関連したとらわれは、身体症状症、パニック症、全般不安症、醜形恐怖症、強迫症、または「妄想性障害、身体型」などの他の精神疾患ではうまく説明できない。
▶いずれかを特定せよ
疼痛が主症状のもの(従来の疼痛性障害):この特定用語は身体症状が主に痛みである人についてである。
▶該当すれば特定せよ
持続性:持続的な経過が、重篤な症状、著しい機能障害、および長期にわたる持続期間(6ヵ月以上)によって特徴づけられる。
▶該当すれば特定せよ
医療を求める病型:受診または実施中の検査および手技を含む、医療を頻回に利用する。
医療を避ける病型:医療をめったに受けない。
以上のように、選択肢③は心的外傷およびストレス因関連障害群に分類される障害に合致しません。
よって、選択肢③は誤りと判断できます。
⑤ 分離不安症/分離不安障害
こちらは「不安症群/不安障害群」に含まれる障害になります。
このカテゴリーの障害としては…
- 分離不安障害
- 選択性緘黙
- 限局性恐怖症
- 社交不安障害
- パニック障害
- 広場恐怖症
- 全般性不安障害
- 物質・医薬品誘発性不安障害
…となります。
分離不安障害の診断基準は以下の通りです。
A.愛着をもっている人物からの分離に対する、発達的に不適切で、過剰な恐怖または不安で、以下のうち少なくとも3つの証拠がある。
- 家または愛着をもっている重要な人物からの分離が、予測される、または経験される時の反復的で過剰な苦痛
- 愛着をもっている重要な人物を失うかもしれない、または、その人に病気、負傷、災害、または死など、危険が及ぶかもしれない、という持続的で過剰な心配
- 愛着をもっている人物から分離される、運の悪い出来事(例:迷子になる、融解される、事故に遭う、病気になる)を経験するという持続的で過剰な心配。
- 分離への恐怖のために、家から離れ、学校、仕事、または、その他の場所へ出掛けることについての、持続的な抵抗または拒否
- 1人でいること、または愛着をもっている重要な人物がいないで、家または他の状況で過ごすことへの、持続的な抵抗または拒否
- 家を離れて寝る、または、愛着をもっている重要な人物の近くにいないで就寝することへの持続的な抵抗または拒否
- 分離を主題とした悪夢の反復
- 愛着をもっている重要な人物から分離される、または、予期される時の、反復する身体症状の訴え(例:頭痛、腹痛、嘔気、嘔吐)
B.その恐怖、不安、または回避は、子どもや青年では少なくとも4週間、成人では典型的に6カ月以上持続する。
C.その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、学業的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
D.その障害は、例えば、自閉スペクトラム症における変化への過剰な抵抗のために家を離れることの拒否;精神病性障害における分離に関する妄想または幻覚;広場恐怖症における信頼する仲間なしで外出することの拒否;全般不安症における不健康または他の害が重要な他者にふりかかる心配;または、病気不安症における疾病に罹患することへの懸念のように、他の精神疾患によってはうまく説明されない。
注:この診断は、反復性の衝動的・攻撃的爆発が、以下の障害において通常みられる程度を超えており、臨床的関与が必要なである場合は、注意欠如・多動症、素行症、反復挑発症、自閉スペクトラム症に追加することができる。
さて、ついでなので、分離不安障害に関する私見も述べておきましょう。
分離不安と思われる問題を見るのは、たいていの場合、乳児期や幼児期であろうと思います。
特にこども園入園児や小学校入学直後には生じやすい反応になります。
学校で勤めている身として、こうした分離不安に対応することはそれなりにあるのですが、時々間違った対応をしているケースを散見するので、基本的な支援法について述べておきます。
ちなみに、私の個人的経験ではありますが、明確に「これは分離不安である」と見立てられた事例では、その学年内(1年生で分離不安と思われる反応が出た場合は1年生中に)ですべての事例が改善しています。
なお、以下は「小学校低学年など10歳以下のクライエント」を対象とした支援であり、それ以降の年齢になると反応等が複雑になるため、支援ももっと立体的な手法を取る必要が出てきます(以下では、10歳以下の低年齢の分離不安症への対応を述べておくと思っておいてください)。
まず支援の前提として、不安についてどのように捉えておくべきかを述べましょう。
不安は「必ず存在するもの」であり、安心という概念は「不安がない状態」ではなく「多少の不安であれば自分の内側に抱えておいて平気な状態」であると考えておきます。
そして多くの子どもが抱えられる不安状況で、分離不安様の反応を示しており、かつ、その反応を示す要因が「分離不安(内的対象として愛着関係にある他者が十分に馴染んでいないので、愛着関係にある他者と空間的に離れることで不安を示す)」のみに見立てられるなら、分離不安と捉えて支援していくことになります。
なお、愛着関係にある他者が内的対象として馴染んでいくために必要な関わりの多寡は、天与のものであり、分離不安を示すから愛着関係に問題があるとは見なしません。
事実、分離不安を示す子どもの親(特に母親)は、その表現法は様々ですが子どもの状態に対して心配しており、自分が改善のために努力することを自然なこととして受け入れていることがほとんどです(もしも、母親が「これは子ども個人の問題だ(私に問題はない)」と思っているようなら、見かけが分離不安でも、実態としては別の問題も控えていると考える方が良い)。
さて、より具体的な支援として、まず「不安なら学校に行かなくていい」という対応はよっぽどのことがない限り控えるべきです。
先述の通り、安心とは「不安がない状態」ではなく「不安があっても抱えていられる状態」ですから、子どもの生活から不安を消そうとする関わりは、むしろ改善を遅らせる可能性もあります。
大切なのは、不安を有する子どもを支えるアプローチ(支えによって、不安があっても耐えられる状態にするためのアプローチ)であり、これは学校に行きながらやっていった方が間違いなく「効率的」です。
なお、不安の反応として「獣のように泣き叫ぶ」のは、小学校低学年の分離不安症の特徴であり、それがどんなに異様に見えても病的なものではありません(先生は暴れる児童に蹴られるなど大変ですが)。
支援が進めば、この「獣のように泣き叫ぶ」のが緩まる、回復が早くなる、授業への参加が徐々に早まるなどの変化が見られますから、こちらも指標としてもっておくと良いでしょう。
ただし、子どもが「特定の教科だけ嫌がる」など、自分の失敗などが予見される状況を避けるという様子が見られたら、その子どもには分離不安以外の心理的課題があると見なす必要があり、こちらは別方向のアプローチが求められます(ここでは割愛)。
支援の実践において中核になるのは、主に母親との「甘え体験」になります。
甘え体験の目的は、同行二人の世界を構築すること、すなわち「一人だけど一人じゃない」「心の中に愛着対象が居る」といった心的世界が多少確かになるくらいまで愛着対象が心身に馴染んでくることです。
甘えの助言で間違えやすいことを列挙すると以下の通りです。
- 甘えは母親から行くのではなく、子どもからの表現を受け容れることが重要。なので、母親は「甘えられる隙」を作っておくことが重要で、単純な技術としては「ぼーっとテレビを見ている」などになる。スマホは「隙が無く見える」こともあるので止めておいた方が賢明であろう。父親は、母親が「ぼーっとする時間」を作れるように家事等をいつもより多めに担当できると良いし、それができる父親がいる家庭の子どもは改善が早い。
なお、「甘えが無いままに改善する」のはかなりリスキーである。数年後に再度不登校になったケースに、こういう歴史が多い。そして、後になった不登校の方が圧倒的に家族や本人の負担が大きい。 - 「甘えを受け容れる」とは「わがままを断らない」ということではない。学校に行く行かないに関しては叱る必要は全くないが、家庭内で道徳・倫理に反する言動があった場合は、それをしっかりと叱るのは親の立場として必要である。これをきちんとしておかないと、「安心とは不安がない状態」という方針に移り変わってしまう恐れがあるので注意が必要。
- 甘えの受け容れは、①赤ちゃんのようにベタベタする、②安全な会話、が主なやり方である。②については、「子どもがしゃべってくる」→「親が何か返事をする」→「その返事を聞いて、子どもはさらにしゃべりたくなる」→その繰り返し、によって成立する。
- 甘えは「ずっと続くものだが、離乳のようにいつの間にか離れていくものでもある」と母親には伝えておく必要がある。その理由としては、①終わりのイメージを持ってもらうことで、それまで頑張る意欲を持続させる、②分離不安状態が改善したら「もう甘えは終わり」と考えて、後にまたぶり返す家庭が時々あるので、それを防ぐためである。
- 時折ある相談として「仕事を辞めたり、少なくした方が良いですか?」というものがある。これに対する返答は「その必要はない」で良い。理由としては、①甘えは量の問題ではなく、質を高めることでかなり効果が表れる、②母親が犠牲を払うことで、子どもに性急な改善を求める心理が出やすい(私も大変なんだから、あんたも頑張りなという感じ)。
ざっと思いつくのはこんなとこですが、思い出せないだけで他にも無数にあるでしょう。
カウンセリングでは、甘えを受けとめる母親の苦労を労う必要がありますし、「母親が苦しくなるほど甘えてくるなら、その甘えは本物である可能性が高い」と伝えておくことも有効な場合もあります。
学校での対応についても述べておきましょう。
学校は子どもにとって「不安場面」であるというのは間違いありません。
ですから、この「不安」を抱えられるような工夫をしていくことが求められます。
具体的な工夫を挙げておきましょう。
- (これは学校というよりも家庭が主になると思われるが)不安を安心で挟み込むという技術が有効である。学校での母親との別れ際に、母親が「帰ったら家にはちゃんといるからね」「今日、お母さんは〇時に迎えに来るからね」などと伝えることが大切になる。こうすることで、不安には終わりがあり、その間の不安を「母親を待つ」という心的状態で過ごすことができ、これによって子どもの内面を「一人だけど一人じゃない」という状態に近づけることができる。だから、親は別れ際にあまり不機嫌にならずに、後ろ髪をひかれながらもさっと仕事へ向かうという感じがよろしい(子どもが泣き叫ぶからといって、その場にずっと親がいては逆効果であることがほとんど)。
- また「不安に安心を挟み込む」という技術も有効である。具体的には、昼休みに母親に電話して声を聞く、といったものだが、これは子どもによってはその後の状態を悪くすることもあるので注意が必要である。
母親が教室の隅っこや隣の教室、保健室、駐車場の車の中に控えているというやり方も、この技術の範疇にある。母親という安全基地がそばにあることで、不安な状態に耐えられるという良さはあるが、母親の方にも分離不安がある場合は実施を一考する必要がある(子どもは平気なのに母親が離れないという事態がある)。
更によくある方法として「母親の持ち物を子どもに持たせる」という場合もあるだろう(ハンカチなどが一般的か)。この方法が有効なことは「移行対象」がイメージできれば理解できるだろう。ただし、実施に関しては以下の点に留意が必要である。すなわち、①その持ち物が学校のルール上OKであるかの確認をしておくこと、②子どもから言い出さない限り、このやり方は実施しないこと、である。①は現実検討の上で絶対に欠かせない(もちろん、状況を考慮して学校が譲歩することもあり得てよい)。②は、どうも親や周囲の支援者から言い出しても、子どもの内心は「こんなん母ちゃんじゃないし!」とぺしっと払いのけられることが多いです。 - 分離不安の問題では、子どもが学校内で役割が与えられ、それが成功したり褒められたりすることが端的に良い反応を生むことが多い。学校では、こうしたことを念頭に置き、その子どもにあった役割をそっと与えるのが望ましい。
- 泣き叫んだ直後に授業に参加させるのは無理があることがほとんどである。数コマは大目に見ておき、改善とともにそれが短縮されることを観察しておくという「改善を測る指標」と思っておくと良い。
- 例えば、保健室を安全基地として、そこに荷物を置いて時限ごとに帰ってくるというやり方はOKだが、養護教諭の態度として「安心できるまでいつまででも居ても良いよ」というのは避ける必要がある。子どもの状況や学校のイベントに合わせ、柔らかく、時には毅然と送り出すという態度も必要な状況は確かにある。
- 言うまでもないが、担任との信頼関係は「学校に居ることでの過度な不安を和らげる」上で重要である。本人に声をかける等の配慮をすれば、分離不安を示す子どもはその優しさを受け取っていることが多い。
…といった感じでしょうか(他にもきっとたくさんあるけど、今思いつくのはこのくらい)。
これらの家庭と学校との関わりに留意しつつ、本人の改善を目指すことになります。
その過程でもいろいろなことは起こりますが、概ね改善に向かうことが多いのでカウンセリングも明るい雰囲気で展開されることが多いですね。
私が担当する分離不安に関する問題については、上記のような対応を取る中で良くなっていきます。
厄介なのは、「分離不安のように見えるけど、実は他の問題が出ている」という状況で、この見立てができないと、いくら分離不安の適切な対応を取ったとしても改善しません。
この辺に関しては、他の疾患や心理的問題に対する理解が別に求められますね(だからここでは割愛)。
せっかく分離不安という選択肢が出たので、そして、DSM-5の内容だけを書くのも味気ないので、ちょっと実践的なことを述べておきました。
何かの参考になれば幸いです。
以上のように、選択肢⑤は心的外傷およびストレス因関連障害群に分類される障害に合致しません。
よって、選択肢⑤は誤りと判断できます。