公認心理師 2018-104

副作用としてアカシジアを最も発現しやすい薬剤について、正しいものを1つ選ぶ問題です。
精神科薬剤の問題は以前も出ていましたね(問55)。
また、以前の記事にもちょっと書いております。

解答のポイント

向精神病薬の基本的な副作用について把握していること。

選択肢の解説

『①抗うつ薬』

抗うつ薬は数多くの脳内モノアミン受容体に対して拮抗的な阻害作用を持ちます。
これら受容体に対する抗うつ薬の阻害力価に関する薬理学的知識を持つことで、副作用の予想がしやすくなるとされています。

抗ヒスタミンH1効果が強い抗うつ薬は強い不眠、焦燥、不安などの症状を伴ううつ病の治療に向き、逆に制止や過眠傾向の強いうつ病、この副作用による日中の眠気や作業能率の低下を避けたい場合は他の薬剤を検討する。

また、多くの抗うつ薬はコリン作動性ムスカリン受容体阻害作用を持ち、口渇、便秘、頻脈、視力調節障害、見当識障害などを起こします
さらに、中枢性アドレナリンα1受容体の阻害作用が強いため、起立性低血圧、めまい、失神などの副作用と関係していることが推定されます

SSRIでは、消化器系の副作用、性機能障害、振戦、パーキンソン症状の悪化やアカシジアを含む錐体外路症状、悪性症候群、セロトニン症候群、賦活症候群、中断症候群、などの副作用が挙げられます

以上より、アカシジアの発現は認められるものの、問題文にある「最も発現しやすい薬剤」には該当しないと判断できます(以下の選択肢の解説より)
よって、選択肢①は誤りと判断できます。

『②抗不安薬』

主にベンゾジアゼピン系で言われることだが、連用によって精神的、身体的依存を生じやすく、たとえ効果がある場合でも漫然とした投与、必要量以上の投与は慎むべきとされています(ただし、常用量でも依存が生じるとするエビデンスも多くあります。常用量でも長期間の使用は良くない)
また、高齢者に対しての使用は、せん妄や過鎮静、転倒などの恐れがあります。

その他の副作用としては、眠気、ふらつき、行動脱抑制、認知機能障害、妊娠・出産への影響などが明らかにされています。

以上より、選択肢②は誤りと言えます。

『③気分安定薬』

こちらは主にリチウムの使用に関する副作用を記載していきます。
リチウムの副作用としては以下が挙げられます。

手指振戦が副作用として見られます。
両手を前に出してもらい、宙に浮かせた状態で指を開いてもらうとはっきりと観察可能です。
通常の血中濃度では、日常生活に支障にならない程度と考えられています。
この点は処方時に説明しておくことが重要になりますね。

また、リチウムを服用していると甲状腺機能が低下することがあります。
これはリチウムが直接甲状腺に作用して甲状腺ホルモンの生合成や分泌を抑制するためです。
こちらは内科的には問題なしとされることが多いようだが、この存在が双極性障害の経過が不安定になりやすいとされています。

上記以外にも、腎臓の尿細管のダメージを引き起こす場合や、心臓の洞性徐脈や洞機能不全症候群を引き起こす場合もあるとされています。
皮疹の発現や増悪に関与することもあります。
高齢者ではせん妄を引き起こしやすくするという危惧も指摘されています。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。

『④抗精神病薬』

抗精神病薬の投与に伴う副作用には様々な種類のものがあるが、非定型抗精神病薬を含めた全ての抗精神病薬に共通した副作用としては錐体外路系副作用が挙げられ、現在もしばしば臨床上の問題になっています

1950年代初頭からクロルプロマジンが用いられるようになり、1954年には薬原性パーキンソンニズムの報告がなされ、続いてアカシジア、ジストニア、遅発性ジスキネジアの報告も1950年代のうちに全て報告されています
1990年代に入ると錐体外路系副作用の少ない非定型抗精神病薬が次々と開発されたが、これらも過剰なドパミン神経伝達を弱めるという共通の基礎薬理学的特性を有していることから、依然として問題となるケースが認められます。

パーキンソニズムは、本態性パーキンソン病に見られる運動減退症状の総称であり、筋強剛、振戦、アカシジアを3徴候とします。
抗精神病薬による治療開始後2〜3週以降から見られることが多く、4〜10週が発現のピークとされますが、個人差もあります。

アカシジアは静座不能症とも呼ばれ、静座不能に対する自覚、下肢の異常感覚などの自覚的な内的不穏症状が中核にあり、これに足踏み・過剰歩行・頻繁な体位交換などの客観的な運動亢進症状がみられます
服薬中の患者の約20〜45%に見られ、投与後3〜12週前後に発現しやすく、中高年や女性に多いとされています。

アドヒアランスの低下を招き、重篤な症例では不眠や希死念慮を伴うこと、攻撃行動を誘発することがあります。

以上より、選択肢④が正しいと判断できます。

『⑤抗認知症薬』

こちらは主にDonepezil(アリセプト)が該当し、こちらでは有害事象が約10%強で生じるとされています。
最も多いのは消化器症状(食欲不振、吐き気、下痢、嘔吐など)で約7%です。
循環器系の副作用として、コリン作動性作用による徐脈や動悸が各1%程度で見られます。

一方、精神症状としては徘徊、不穏、焦燥感、色情亢進などの出現が約2%に見られ、介護の負担が増加するといった例も報告され、注意が必要です。

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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