統合失調症の特徴的な症状として、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。
一般に精神症状というものは、ある特定の障害にのみ生じるということは少ないです。
ただし、生じやすい・生じにくい、というのはあるので、その辺はしっかりと押さえておく必要がありますね。
可能であれば、そうした精神症状がどのような流れで生じ得るのか、という自分なりの考えをもっておくと良いと思います。
解答のポイント
各精神症状の定義を把握していること。
選択肢の解説
『①幻視』
統合失調症では幻聴は生じやすいものの、幻視はほとんど見られないとされています。
ただし、幻視については文化依存度が高いという指摘もありますね(ある国では統合失調症の8割に見られるといいます)。
幻視とは、意識変容など脳機能全体の変化によるものが多く、例えば解離性障害などで見られることが多いように感じます。
統合失調症において幻聴と幻視の組み合わせのように語られる体験は、真の幻声に伴う偽幻覚(被害的内容の幻声とともに「襲いかかる人の姿が見える」など)、あるいは幻声に基づく正常な知覚の妄想的解釈(「自分のことを話す人の姿が窓越しに見える」など)が多いとされます。
以上より、選択肢①は不適切と言えます。
『②観念奔逸』
観念奔逸は、思考の流れや形式の障害の1つです。
うつ病などにおいて、思考の進みが遅く停滞することを「思考制止」と呼び、躁病や飲酒酩酊時などの、思考の進みが早く思いつきは多いが、道から逸れやすいことを「観念奔逸」と呼びます。
また、思考がまとまらず、観念同士の意味のある結びつきを欠く状態を「支離滅裂」と呼び、軽いものは「連合弛緩」で、相手の言うことが理解できません。
躁病者などはロールシャッハをやっても、パッと見たもので反応してしまうため自由反応段階の数が多くなる一方で、その説明を求めるとうまく表現できずに形態水準が落ちることも少なくありません。
よって、選択肢②は不適切と判断できます。
『③情動麻痺』
情動麻痺はショックで悲しみや喜びなどが表現不能になった状態を指します。
類似したものとしては「感情鈍麻」があり、こちらは統合失調症や器質性精神障害などに見られる、文字通り感情の発現が鈍い状態です。
情動麻痺は天災などの突発的な出来事の後、急性に感情表出が無い状態が生じることを言います。
例えば、地震や火事の直後に、放心状態で驚きも悲しみも見せないままに座り込んでいる状態を指します。
小さな子どもが、はずみで悪いことをしてしまった場合もこんな感じが見て取れますね。
本当に悪いことをしたときは、謝るという行為ができなくなるくらい衝撃を受けるわけです。
よって、選択肢③は不適切と判断できます。
『④被影響幻想』
統合失調症そのものの診断は必ずしも見解が一致しているわけではないが、シュナイダーの1級症状は、批判がありながらもなお1つの基準とされています。
この1級症状の中に「被影響体験」(させられ体験)が含まれております。
これは漠然と「自分に何かの力が加わっている」と体験されるものであり、身体が何らかの影響を被っているということも少なくありません。
統合失調症における「自我障害」とは、種々の心的行為が他の力によって「させられる」と感じる自己能動感の障害であり、上記のシュナイダーの1級症状が該当します。
こちらはDSM -5における「奇異な妄想」に含められています。
統合失調症の精神病エピソードに見られる被害妄想では、「インターネットに書いたことがみんなに見られ、チャットの人が私の悪口を言いふらしている」「私の行動で世界が変わってしまった」などが特徴的であり、これらは被影響体験などからも生じうるとされています。
以上より、選択肢④は適切と言えます。
『⑤誇大的な認知』
統合失調症では誇大妄想は見られることがあり、偉大な芸術的才能、発明の才能、重要な使命を帯びたものであるという内容が多いです。
古くはクレペリンに最初に記載された壮大な内容の妄想群がこれに該当します。
受け入れがたい衝動(自分には重要性がないという不全感など)が、意識の中に登場することから自我を守るために投影を行使し、代償性の誇大性が生じると説明されることが多いです。
これは統合失調症にも見られるが、躁うつ病の躁状態に特に多いとされています。
以上より、選択肢⑤は適切とは言えないと考えられます。