乳化作用を有し、脂肪の分解を助ける消化液を選択する問題です。
代表的な消化液の作用を知っておくことが求められています。
問32 乳化作用を有し、脂肪の分解を助ける消化液として、正しいものを1つ選べ。
① 唾液
② 胃酸
③ 胆汁
④ 膵液
⑤ 腸液
解答のポイント
各消化液の役割を把握している。
選択肢の解説
③ 胆汁
胆汁は肝臓の肝細胞によって分泌される緑黄色の分泌物で目に貯蔵され、おもに水分、電解質、コレステロール、胆汁色素、胆汁酸から成ります(胆汁は1日に 800~1000ml分泌される)。
胆汁色素はビリルビンとビリベルジンで、老化した赤血球のヘモグロビンから合成されます。
胆汁酸は胆汁の最大の構成成分で、胆汁酸だけが消化機能を有し、胆汁は脂肪の消化と脂溶性ビタミンの吸収に重要な役割を果たします。
胆汁色素、とくにウロビリノーゲン (ビリルビンの代謝産物)は大便を茶色に着色します(胆汁がないと大便は着色されないので、無色(灰色)になる)。
胆嚢の疾患では、しばしば、胆石が総胆管にできて、十二指腸への胆汁の流出が妨げられます。
胆汁酸塩は肝臓でコレステロールからつくられます。
肝臓が余分な胆汁酸塩をつくるように刺激されると、より多くのコレステロールが使われて血液中のコレステロールの量を低下させます。
脂肪は炭素、水素、酵素から成る長い鎖の分子で、リパーゼは脂肪を分解する酵素です。
胆汁が脂肪の消化を助けます。
脂肪は炭水化物やタンパク質と異なり水に不溶性で、水を加えられると大きな脂肪球に集まる傾向があります。
もし、試験管に油と水を入れると、油は上に水は下になって分離するように、油と水は簡単には混じり合いませんね。
同じような分離が消化器官でも起こり、食物中の脂肪は大きな脂肪球になる傾向があります。
リパーゼは脂肪を簡単に消化できず、脂肪球の表面に作用するだけです。
胆汁はこの脂肪球の問題を解決します。
つまり、胆汁は大きな脂肪球を多数の小さな脂肪球に分けます(この過程を乳化とよぶ)。
乳化によってリパーゼはすべての小さな脂肪球の表面に作用できるようになり、脂肪を分解できます。
胆汁はその他にも、最終産物の脂肪酸が小腸の絨毛を通って吸収される前に、大きな脂肪球に再び形成されるのを防いでいます。
以上のように、本問の「乳化作用を有し、脂肪の分解を助ける消化液」は胆汁であることが言えますね。
よって、選択肢③が正しいと判断できます。
① 唾液
② 胃酸
④ 膵液
⑤ 腸液
それぞれの消化液とその役割について簡単に述べていきましょう。
- 唾液:唾液腺から唾液は分泌されますが、唾液は導管を通って口腔に出されます。唾液は水のような液体で、粘液と消化酵素の唾液アミラーゼを含み、1日約1リットルが分泌されます。アミラーゼにはデンプンを糖に変える作用があり、この作用のおかげで胃腸の負担を軽減することができます。咀嚼によって食べ物と混ざり、消化を助けています。また、唾液の重要な役割には食物を軟らかくし、湿らせて飲み込みやすくするということがあります。
- 胃酸:胃酸は胃液の主成分の一つです。 その強酸性 (pH1~2) により食物と一緒に胃に入ってきた細菌を殺菌します。滅菌が胃酸の大きな役割の一つと言えるでしょう。また、食物中のタンパク質を変性させることで、消化酵素による消化を助けます。
- 膵液:膵臓は胃の後ろにある長さ15センチぐらいの臓器で、消化液を分泌する外分泌機能と、ホルモンを分泌する内分泌機能をもっています。膵液は、膵臓で分泌される体液で、三大栄養素の全てを消化できます。食後、膵液は膵管を通して十二指腸内へ送られます。膵液には、糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素、核酸の分解酵素を含んでいます。また、膵臓のランゲルハンス島細胞からは、糖の代謝に必要なインスリン、グルカゴン、ソマトスタチンなどのホルモンが分泌されます。
- 腸液:小腸の空腸で分泌されるアルカリ性の体液です(胃からきた酸性の内容物を中和し、腸壁を保護する役目をもっているのでアルカリ性)。消化の最終確認をする消化液で、消化できる栄養素は解釈によって異なりますが、主な働きは、蛋白質をアミノ酸に変えることです。糖質分解酵素のマルターゼは麦芽糖をブドウ糖に、ラクターゼは乳糖をガラクトースとブドウ糖に、スクラーゼはショ糖を果糖とブドウ糖に分解する。核酸分解酵素のヌクレアーゼは核酸を五炭糖に、タンパク質分解酵素のジペプチダーゼはジペプチドをアミノ酸に分解します。排便時、または肛門・直腸内に異物が侵入した場合、そのダメージを和らげるために分泌されることが多く、これも役割の一つと言えるでしょう。
ちなみに、十二指腸粘膜には十二指腸腺があり、こちらもアルカリ性の分泌液を出していて、透明で卵白のようにねばねばしており、摂食によって分泌量が増します(これも腸液なので、一応…)。
上記の通り、ここで挙げた選択肢は「乳化作用を有し、脂肪の分解を助ける消化液」ではないことがわかりますね。
よって、選択肢①、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は誤りと判断できます。