味覚の基本味を問う内容です。
感覚器官に関する理解も心理学の領域ですから覚えておきましょう。
生物に、どうしてこの「基本味」が備わっているのかを考えておくと良いでしょうね。
問112 味覚の基本味に含まれないものを1つ選べ。
① 塩味
② 辛味
③ 酸味
④ 苦味
⑤ うま味
解答のポイント
味覚の基本味を把握している。
選択肢の解説
① 塩味
② 辛味
③ 酸味
④ 苦味
⑤ うま味
人間や動物が外界を知覚するための様々な感覚は、古来から五感と総称されてきました。
この五感は、視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚を指しますが、現在では人間の感覚は他にもあり、痛覚・温度覚・圧覚・平衡感覚・内臓感覚など、細かく分類すれば20以上あるという説もあります。
エネルギー | 感覚器官 | 感覚様相 |
電磁波 | 光受容器 | 視覚 |
振動 | 音受容器 | 聴覚 |
熱・機械 | 皮膚感覚受容器 | 温・冷・触・圧・痛覚 |
化学 | 味覚受容器 | 味覚 |
化学 | 嗅覚受容器 | 嗅覚 |
機械 | 固有受容器 | 筋肉運動感覚 |
機械 | 前庭器官 | 平衡感覚 |
機械・化学 | 有機感覚器官 | 内臓感覚 |
本問では、上記のうち味覚について問われていますね。
味覚は適刺激を水溶性の化学物質、受容器を味細胞、感覚器官を味蕾とする感覚です。
口腔に取り入れられた食物や飲料を構成する化学物質が、口腔内に点在する味蕾に存在する味細胞を刺激したときに生じる感覚を指します。
一方、普段の生活で用いる「味覚」とは、私たちが食物や飲料を摂取したときに経験する嗅覚を含めた口腔内の化学的感覚と統合されて一体化した知覚です(視覚も含めて食事を楽しむという人もいますね)。
この知覚の中に、味覚や嗅覚、口腔内の化学的感覚など個別の感覚を分けて感じることは難しいです。
現在、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5基本味が見出されています。
人間にとって5つの基本味を感じることは、おいしさを感じるためだけでなく、危険な食べ物を避けたり、安全に栄養素を摂取するためにとても重要といえます。
例えば、こうした基本味の中には、毒を避けるという意味合いによって存在しているもの、具体的には苦味があります(そのため、ごくわずかな苦味でも感じられるようになっています)。
大人よりも子どもの方が苦味を感じやすいのは、多くの大人が経験によって毒かどうかの判断がつきやすいのに対して、子どもは経験がないので感覚的な判断が強くなっているという捉え方もできますね。
酸味も、もともとは腐ったものや未熟なものを示す味を識別するという意味合いが強かったと思われますが、食経験を重ねるにつれて、食欲増進やエネルギー代謝に関わる有機酸を示す味として好まれるようになると考えられています(クエン酸が代表的ですね)。
甘味は明らかにエネルギー補給という目的が強いと思われ、疲れたときに甘いものが食べたくなるというのはごく自然な感覚として受け入れらえていますし、生物的な基盤があると言えるでしょう。
なお、甘味に関しては、ごく一部の事例ではありますが、親との甘え体験がその受け入れに大きく左右することがあります。
雑談的に語られる「甘いものが苦手で…」という言葉から、そういったことも想定しつつ見立てに役立てていけると良いでしょう。
塩味も栄養の吸収に役立つという面があり、血液や消化液中の塩は食べ物の消化を助けたり、細胞を守ったり、体の状態を整える大切な働きをしていますし、塩の成分であるナトリウムは神経や筋肉の働きを調整しています。
また、うま味ですが、舌全体に広がり持続性があるのが特徴です(昔、うま味成分をなめましたが、かなり持続性があると感じました)。
ちなみにうま味は日本人が1908年にだし昆布の成分から発見したものです。
いわゆる「ダシが効いてない」という感覚は、このうま味の不足によるものです(塩が足りない、とは明らかに違う感じですよね)。
こうした基本味に対して、基本味以外の辛味・渋味・えぐ味・金属味などの味覚刺激は自由神経終末で受容されています。
こうした味覚が感じられない状態を、味覚異常と呼び、臨床医学的には味を感じない無味症、本来の味ではない味を感じる異味症や錯味症、味覚刺激がなくてもいつも味を感じている状態になる自発性以上味覚、特定の味が感じられない解離性味覚障害などがあります。
味覚異常の原因は、味蕾数や唾液分泌量の低下などの末梢性要因と、味覚神経や味覚関連脳部位の損傷による中枢性要因、摂取している薬物による薬剤性要因や亜鉛などの必要な栄養素の欠乏による食事性要因、心配事などによる心因性要因などがあります。
また、加齢による認知機能の低下に伴い、味覚機能が低下する場合もありますね。
このように、味覚の基本味には甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5つが見出されています。
よって、選択肢①、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は味覚の基本味に含まれていると判断でき、除外することになります。
また、選択肢②は味覚の基本味に含まれないと判断でき、こちらを選択することになります。