SOC理論とは、Baltesが提唱した高齢期の自己制御方略に関する理論です。
選択的最適化理論、とも呼ばれます。
あまり聞いたことがない理論だったので、少しまとめてみました。
高齢者が目標を調整しながら、今ある身体的・認知的資源を使って少しでも喪失の前の状態に近づこうとする方略を指します。
SOCとは、以下を指します。
- 喪失に基づく目標の選択(Loss-based Selection)
若い頃には可能であったことが上手くできなくなったときに、若い頃よりも目標を下げる行為を指す。
例:ボーリングで120取れていたけど、80を目標にしよう! - 資源の最適化(Optimization)
選んだ目標に対して、自分の持っている時間や身体的能力といった資源を効率よく割り振ることを指します。
例:週に3回はボーリングに行っていたけど、週に1回に減らそう。 - 補償(Compensation)
他者からの助けを利用したり、これまで使っていなかった補助的な機器や技術を利用したりすることを指します。
例:自分でボーリングに行っていたけど、息子に送ってもらおう。
何となくハヴィガーストの「活動理論」と、カミング&ヘンリーの「離脱理論」の間にあるような印象の理論ですね。
- 活動理論:望ましい老化とは、可能な限り中年期のときの活動を保持することであり、退職などで活動を放棄せざるを得ない場合は、代わりの活動を見つけ出すことによって活動性を維持すること
- 離脱理論:高齢者は自ら社会からの離脱を望み、社会は離脱しやすいようなシステムを用意して高齢者を解放するべき。高齢者が社会から離れていくのは自然なことと捉えている。
他にも以下のような理論が高齢者にはありますね。
- 社会情動的選択性理論:時間的見通しによる動機づけの変化によって、エイジングパラドックスを説明しようとする。残り時間が限定的だと感じると、感情的に価値ある行動(嫌な人とは付き合わない、やりたいことだけをやる等)のような、情動的に満足できる目標や活動に傾倒するとされている。
- 老年的超越理論:Tornstamによって、離脱理論、精神分析、禅を取り入れて構築された。加齢とともに、物質的・合理的(経済的)な視点から、神秘的・超越的な視点に移行するので、喪失はあっても心理的には安定を保つことが可能であるという知見。
(死を前にした人が、お金を残すことよりも、「言葉」や「思想」を残そうとすることとも無関係じゃないかもしれないですね)