公認心理師 2019-87

問87はフリン効果に関する問題です。
私はこの効果については知りませんでしたね。

問87 知能検査におけるFlynn効果について、正しいものを1つ選べ。
①中高年ではみられない。
②平均IQが徐々に低下する現象である。
③欧米諸国では効果が認められていない。
④ウェクスラー式知能検査のみで検出される。
⑤流動性知能は結晶性知能より、この効果の影響を強く受ける。

こちらは「知能 1冊でわかるシリーズ」に記載がありましたので、そちらを中心に述べていきます。
久々に知らない単語が出てきました。
知能に関する概念ということで、この機会にしっかりと把握しておきましょう。

解答のポイント

フリン効果について把握している。

選択肢の解説

①中高年ではみられない。
②平均IQが徐々に低下する現象である。
③欧米諸国では効果が認められていない。
④ウェクスラー式知能検査のみで検出される。
⑤流動性知能は結晶性知能より、この効果の影響を強く受ける。

Flynnは知能テストの換算表(知能テストで得られた成績を母集団得点に換算する表)が数年ごとに改定されなければならないことに着目しました。
実はこの時点で、新しい世代が生まれるごとに知能テストの得点は良くなっており、知能テストはより容易になっているように見えていました(1980年代に検査された20代は、1950年代に検査された20代よりも、同じテストで良い成績を取っている)。
すなわち、20世紀において世代が進むにつれて、有名な知能テストの得点は前の世代の同年代の人に比べて向上しているということが見て取れたわけです。
知能が世代ごとに向上しているのではないかと思われ始めたのです
(こちらが選択肢②の判断に使えますね)

1984年にフリンは論文を発表し、その中で換算表の改訂の変化を定量化し、そしてその意味を明確に記述しました。
フリンは6年以上の間隔をおいて実施された知能テストの結果についての研究を探し、その全てを検討しました。
この研究には、2歳~48歳までの7500人が参加しました
フリンは被験者のパーセンテージ得点が、以前の換算表を使った場合と、後の換算表を使った場合とでどのように異なるかを調べ始めました。
これらの研究では代表的な知能テストである、ビネー式知能検査とウェクスラー式知能検査が使われました
(こちらが選択肢①および選択肢④の判断に使えますね)

フリンは古い換算表を使った場合は新しい換算表を使った場合と比べて、換算されたIQが高くなることを見出しました。
集めたデータを全て吟味すると、1932年から1978年にかけてこの傾向は恒常的に見られることがわかりました。
この期間に対象者のIQ得点は毎年0.3点上昇し、全期間を通じて約14点上昇したことになりました。
つまり、20世紀半ばにおいてIQは大幅に上昇したように見えます。

フリンはこのIQの大幅な上昇を説明する視点の模索のため、アメリカだけでなく諸外国のIQテストの世代的変化の研究を探し求めました(ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ、カリブ海諸国、当時のイギリス連邦国など)
そうして得た結果を「14カ国におけるIQの大幅上昇」という論文で示しました。
その14カ国で30年間に見出されたIQの上昇は5点から27点の範囲になり、その平均は15点でした。
このIQの上昇という現象は「フリン効果」と呼ばれています
(こちらが選択肢③の判断に使えますね)

この「フリン効果」を考えるときに重視すべき事実は、最も大きい上昇が、文化的影響の少ないテストにおいて見られるという点です
つまり、容易には学習できない内容の知能検査において特に顕著にこの上昇が見られるということです
例えば、レーヴンマトリックス検査は最も大きい上昇を見せる検査の一つですが、この検査は抽象的な図柄を完成させる問題からなっており、言葉や数のような、後の世代が前の世代よりもできるようになるといった教育可能な技能を含んでいません。
すなわち、流動性知能のような容易には学習できない内容で顕著にフリン効果が見られると言えるわけです
(こちらが選択肢⑤の判断に使えますね)

この現象については様々な視点から説明がなされていますが、現時点ではその原因をうまく説明できていません。
フリンは、例えば、レーヴンマトリックス検査は知能そのものではなく、彼が「抽象的問題解決能力」と呼ぶ、知能と関連した何ものかを測っているのだと考えています。
この能力の差は環境要因によって生じると説明しており、そのため、知能テストの得点は異なる世代間や異なる文化間の比較には使えないと結論づけています。

以上より、選択肢①~選択肢④は誤りと判断でき、選択肢⑤が正しいと判断できます。

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