公認心理師 2018-43

乳児期の発達に関する心理学的研究手法に関する設問です。
私はこの問題分野についてはノーマークでしたので、方法の名称から予測して判断しました。
勉強されている方は、ある程度自信を持って選ぶことができたのではないかなと思います。

解答のポイント

乳児の特性と、発達に関する心理学的研究手法との組み合わせで理解していること。

選択肢の解説

『①馴化-脱馴化法は、異なる刺激を次々と呈示し、乳児の関心の変化を確かめる』

馴化は単純に言えば「なれる」ことですね。
難しく言えば、「ある刺激を強化が伴わない状況で繰り返し呈示することで、刺激に対する反応が相対的に減少していく」ことです。

脱馴化は、馴化が生じた後でも、それと異なる刺激が与えられると、新たな刺激に対する反応行動が再び喚起される現象を指します。
脱馴化で呈示される刺激は、それ以前の施行において呈示されていなかった刺激です。

まず本法について説明する前に、乳児のもっている特性について把握していることが重要です。
乳児には「見慣れたものよりも新奇なものを注視するという反応特性」があります
この特性を利用した測定法が「馴化-脱馴化法」となります。

  1. 同じ刺激パターンを繰り返し呈示していると、乳児は刺激呈示の開始時点では興味を持って注視するが、次第に刺激に対して興味が低下し、注視時間が短くなります(馴化)
  2. そこで、刺激を別のものに変えて呈示すると、刺激に対する注視時間は長くなります(脱馴化)

乳児が2つの異なる刺激を弁別できていないならば、刺激に対する注視時間はそのまま現象を示すことになります。
馴化-脱馴化法によって、乳児の記憶や概念形成などを測定できるメリットがあります。

上記の内容より、選択肢①は誤りと判断できます。

『②スティルフェイス実験は、他者との相互作用において、乳児がどれだけ無表情になるかを見る』

乳児は生後2ヶ月ごろから「相互交渉中の他者からの社会的随伴性に感受性を示し始める」とされています。
乳児の社会的随伴性を調べる方法としてスティルフェイス実験があります。

母子が対面で相互交渉中に、母親の表情を止め(これをスティルフェイスと呼びます) 、母親の行動が乳児の行動とは非随伴的になった際に、乳児が視線や笑顔の減少といったスティルフェイス効果を示すかどうかを調べる実験を指します。

生後2ヶ月以上の乳児は、こうしたスティルフェイスを示すことが報告されており、特に乳児は大人への視線を著しく減少させることが明らかとなっています。

よって、選択肢②の内容は誤りと言えます。

『③選好注視法は、乳児に2つの視覚刺激を交互に続けて呈示し、どちらに対して長く注視するかを見る』

乳児には「興味あるものや好きなものを見つめる」という反応特性があります。
この特性を利用したのが「選好注視法」です。
乳児の視覚機能研究者であるFantz(1961)が、この方法を用いて、生後1週目の新生児であっても無地の図形よりもある程度複雑なパターンをより注視することを示しました。
パターンの複雑さなどを指標として、乳児の弁別能力を測定できるというメリットがあります。

選好注視法では、乳児が異なる図形やパターンを見分けられるかを調べたい場合、2つの視覚刺激を対にして、左右の呈示位置をランダムに変えながら何回か呈示し、乳児が左右どちらの図をより注視するかの頻度や時間を測定します
すなわち、選好注視法は「同時呈示」ということになりますね。
選択肢は「乳児に2つの視覚刺激を交互に続けて呈示」となっていますから、同時呈示を念頭に置いた表現になっていません。

以上より、選択肢③の内容は誤りと判断できます。

『④期待違反法は、乳児が知っていることとは異なる事象を呈示して、乳児がどれだけ興味や驚きを示し、長く注視するかを見る』

こちらは、乳児が期待する状況(期待条件)と乳児が意外と感じる状況(期待違反条件)を設定し、いずれの条件がより注視するかを測る実験法です。
乳児が、起こり得ない不思議な事象や自分の期待を裏切る事象への選択的な注視行動を行うことを活用した方法です。

Baillargeonらは,この考え方を取り入れた実験により、乳児が「対象の永続性概念」をかなり早期から理解していることを示しました。

よって、選択肢④の内容は正しいと言えます。

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