類型論と特性論はごっちゃになりやすいようです。
単純に言えば、類型論は「人をあらかじめある枠組みにカテゴライズしたもの」であり、特性論は「人間が有する特徴を挙げたもので、その特徴が濃いか薄いかで捉える」ということになります。
それぞれに有名な説がありますが、まずは類型論についてまとめていきたいと思います。
◎ヒポクラテスの四体液説
古代ギリシャ時代にヒポクラテスが、人間に流れる体液の種類と混合具合で異なる病気が発生するとした「四体液説」を唱えました。
これは、人間の身体は以下の4種類の体液から成っているとしたものです。
①多血質 感情が速く・弱い 陽気
②粘液質 感情が遅く・弱い 平気 冷静沈着
③(黄)胆汁質 感情が速く・強い 短気
④黒胆汁質 感情が遅く・強い 陰気 メランコリア
なぜヒポクラテスは、こうした分類を行ったのでしょう?
この点について興味深い仮説を中井久夫先生が唱えてらっしゃいます。
それは「何かの時に患者が吐いた液体をもとにしているのでは」というものです。
①多血質→点状出血による血液が唾液に混じったもの
②粘液質→粘液に吐しゃ物を覆っているもの(嘔吐)
③(黄)胆汁質→胃液そのもの
④黒胆汁質→潰瘍からの出血で、胃液に黒い凝血の塊が混じっている
上記のような症状が出やすい病理があり、それをカテゴライズしたのかもしれないですね。
◎クレッチマーの「体質と性格」
20世紀前半の精神医学は、病気を引照基準とした性格分類を行っていました。
当時は「スキゾフレニア(統合失調症)」「躁鬱病(循環病)」「てんかん」を三大精神病としており、これに基づいた類型が見られます。
その一つがクレッチマーの三大精神病の特徴による体質と性格の分類です。
クレッチマーは以下のように分類しました。
①痩せ型(細長型):分裂気質;内気で真面目。統合失調症になりやすい。
②肥満型:循環気質;社交的で明るいが気分が変化しやすく、躁鬱病になりやすい。
③闘士型(筋肉質型):粘着気質;真面目だが融通が利かず、てんかんと関連があるとされた。
◎シェルドンの性格類型論
シェルドンは、クレッチマーによる体型の分類が精神病患者に基づいていることなどを批判し、正常な男子の体型の調査をもとに、胎生期の胚葉発達においてどの部位が特に発達しているかによって類型に名前を付けました。
①内胚葉型:内臓緊張型;内胚葉から発達する消化器系の発達がよく、柔らかく丸みを帯びた体格。食欲旺盛、寛容、緩慢、くつろぎ、自己満足、社交的。
②中胚葉型:身体緊張型;中胚葉から発達する骨や筋肉のよく発達した、角ばった体型。精力的、運動好き、冒険好き、大胆率直、積極的、競争、粗い動作。
③外肺葉型:頭脳緊張型;外胚葉から発生する皮膚、神経系統、感覚器官がよく発達した、華奢な長くて痩せた手足を持った体格。過敏、心配性、固い動作、焦燥反応、引っ込み思案。