特性論

特性論についてまとめていきます。
類型論と異なるのが、一つの流れとして捉えやすいところでしょうか。

【オルポートの特性論】

特性論の代表的研究者はオルポートです。
彼の特性論を時系列に学ぶときに押さえておかねばならないのが、「ゴールドバーグの基本辞書仮説」です。

◎基本的語彙仮説(基本辞書仮説)

「重要な特性は必ず自然言語に符号化されているはず」と考える仮説です。
オルポートはこれに基づいて、特性語を網羅的に収集し、それを分類整理することによって、基本的な特性や構造を明らかにしようとする「語彙アプローチ」を実践しました。

オルポートは辞書に掲載されている性格表現用語として約18000語を抽出した上で、これを整理・分類し、4504語を主要な性格表現用語としてまとめました。

しかし、これを適切に処理する方法が見つからず、長く放置されることになります(後でキャッテルやビッグファイブに繋がります)。

◎個別特性と共通特性、心誌

オルポートは、特性を個人に固有の「個別特性」と、多数の人の共通してみられ、一般的な意味での特性である「共通特性」に分けました。
この「共通特性」で比較を行うことが重要とし、最終的に、支配的‐服従的、持久的‐動揺的、外向的‐内向的などの14の共通特性にまとめあげ、これらを測定して人の性格をプロフィールで描くことができる「心誌(Psychograph)」を作成しました。

【キャッテルの特性論】

キャッテルはオルポートの特性論の考えを取り入れ、因子分析という科学的な方法を用いてパーソナリティ構造を明らかにしようとしました。
キャッテルは、類似の社会経験をしている全ての人に共通の「共通特性」と、特定個人に特有の「独自特性」に分けました(この辺はオルポートと類似していますね)。

◎16因子:16PF

彼は特性には表層と深層があると考え、「独自特性」を以下のように分類しています。
表面特性:外部から観察可能な、互いに相関し合っているクラスター
根源特性:表面特性を因子分析して見出された、表面のさらに根底にある特性のことで、直接観察はできないが行動表出を決定しているとされる。
こうして、少なくとも25個の根源特性を見出しており、そのうち16因子を測定するために標準化されたのが16因子パーソナリティ因子質問紙(16PF)になります。

【BigFive】

先述したように、オルポートが集めはしましたが手つかずになっていた特性語のまとまりに対し、因子分析研究が盛んに行われ、5因子が共通して見出されるようになりました。
この5因子をゴールドバーグはこれらの因子を、以下のように解釈・命名し「Big Five」と呼びました。
①外向性:対人関係や外界に対する働きかけにおける積極性を示す。
②調和性:対人関係における共感性や思いやりに関わる。
③勤勉誠実性:仕事面におけるセルフ・コントロールや責任感に関わる。
④情緒安定性(神経症傾向):情動における安定性。
⑤知性(開放性):知的関心における開放性を示す。
これらは文化差や民族差を超えた普遍性を持つものとして、1990年代からはこの5因子モデルがパーソナリティ研究の中心的位置を占めるようになっていきました。

【アイゼンクの特性論および業績】

アイゼンクはパーソナリティ研究者としての側面と、行動療法家としての側面を持っています。

◎アイゼンクの特性論

アイゼンクは、人の類型は特性から形成されると考え、類型論と特性論の統合を目指しました。
これはどういうことかというと、YG性格検査を思い出してもらうと理解しやすいです。
YG性格検査では、12特性(10問×12特性=120項目)についてプロフィールを描き、そのプロフィールから5類型(A型、B型、C型、D型、E型)を示しています。
彼は、性格特性を以下の4つの水準の階層で捉え定めています。
階層1 個別的反応水準:個人特有の行動様式
階層2 習慣反応水準:様々な状況で階層1が生じることで習慣的になる
階層3 特性水準:類似した階層2同士が集まって構成される
階層4 類型水準:階層3同士の因子分析により示された高次の類型次元
このような考え方に従い、アイゼンクは因子分析を用いて、性格を以下の3つの次元を見出しました。
①内向-外向
②神経症傾向
③精神病的傾向
これらの知見を元にアイゼンクが考案した「モーズレイ人格目録- MPI」では、「内向・外向」と「神経症傾向」を採用した、2次元からなる性格検査です。

◎アイゼンクのその他の業績

技法の集合体であった行動療法を「人間の行動と情動を行動理論に従って変える試み」と包括的に定義しました。
精神分析的人格研究には猛烈な反対者だったとされています。

【2018-9】

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