公認心理師 2024-125

自己決定理論における調整スタイルに関する問題です。

内発的動機づけに至るための流れを示した理論という捉え方ができますね。

問125 E. L. DeciとR. M. Ryanが提唱した自己決定理論における、叱られたり罰を受けたりすることを避けるために、何らかの行為を行う際の動機づけの調整スタイルとして、最も適切なものを1つ選べ。
① 外的調整
② 統合的調整
③ 同一化的調整
④ 取り入れ的調整

選択肢の解説

① 外的調整
② 統合的調整
③ 同一化的調整
④ 取り入れ的調整

自己決定理論は、デシとライアンによって構築された内発的動機づけ研究から発展してきた理論で、人の成長と発達、ウェルビーイングを導く動機づけの在り方を説明する大きな理論的枠組みです。

認知的評価理論、有機的統合理論、因果志向性理論、基本的心理欲求理論、目標内容理論、対人関係動機づけ理論の6つのミニ理論によって構成されています。

デシらは、外的な報酬によって内発的動機づけが低下する現象を実証的に明らかにしており、これは認知的評価理論によって説明がなされています。

また、人間にはコンピテンス(有能感)への欲求、自律性(自己決定感)への欲求、関係性への欲求という3つの基本的な心理的欲求があり、より統合された自己の感覚を発達させていく傾向性を備えているという考え方を取っています(基本的心理欲求理論)。

この理論では、外発的動機づけと内発的動機づけという旧来の二分法を超え、動機づけを次のような他律的なものから自律的なものまで連続した4つの段階として捉え直しています(有機的統合理論)。

  1. 外的調整(外的強制による)
  2. 取り入れ的調整(義務感、不安などの内的な強制力)
  3. 同一化的調整(その活動に取り組むことの価値づけ)
  4. 統合的調整(諸価値の自己への統合)

この4つの調整段階に細分化されており、たとえ外的に動機づけられた行動であっても、価値の内在化が進むことで、自律的動機づけによる行動へと変化していくプロセスが想定されています。

以上のように、自己決定理論では、自己決定の度合いによって外発的動機づけから内発的動機づけへと変化するとしています。

外発的動機づけは、外的調整、取り入れ的調整、同一化的調整、統合的調整の4段階に分けられ、自己決定の度合いが高まるのにしたがって段階が進んでいき、内発的動機づけへと至るという考え方です。

私はこの考え方は、子どもたちを見ている中で適切であると実感しています。

世の中に広がっている考え方として、内発的動機づけと外発的動機づけは違うものであり、これらが関連し合わないというイメージを持っている人も多いように思います。

ですが、実際には外側から押し付けられたものが、徐々に内在化し、それ自体がその人の内発的な動機づけになっていくという流れは確かにあるのです(もちろん、すべてとは言わないけど)。

この考え方はコールバーグの道徳性の発達とも絡んでくるものであると言えますね。

改めて、子どもを育てる上で「押し付けること」の大切さを再認識する必要があるのではないでしょうか(精神分析的に言えば、超自我の重要性を理解するということでしょうか)。

いずれにせよ、本問で示されている「叱られたり罰を受けたりすることを避けるために、何らかの行為を行う際の動機づけの調整スタイル」とは、外的調整であることがわかりますね。

よって、選択肢②、選択肢③および選択肢④は不適切であり、選択肢①が適切と判断できます。

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