公認心理師 2024-10

学習心理学に関する問題です。

かなり基本的な問題と言えますね。

問10 ある1つの刺激に対して生じている反応が、類似したその他の刺激においても同様に生じる現象を説明する概念として、最も適切なものを1つ選べ。
① 馴化
② 消去
③ 般化
④ 負の強化
⑤ 高次条件づけ

選択肢の解説

① 馴化

同じ刺激を繰り返し呈示されることで、その刺激に誘発される反応が減衰・消失するのが馴化であり、そこに新しい刺激を呈示すると減衰・消失していた反応が復活しますが、この現象を脱馴化と呼びます。

赤ちゃんの寝かしつけにおいて、①赤ちゃんが背中のトントンでうとうとしている(馴化)、②トントンのテンポを変えたり、トントンを止めたりする、③赤ちゃんが目を覚まし、泣き始める(脱馴化によって起こる)、などが馴化‐脱馴化の例とされていますね。

こちらを利用して乳児の認知検査を行っていますね(馴化‐脱馴化法など。「公認心理師 2022-60」参照)。

上記より、馴化は「ある1つの刺激に対して生じている反応が、類似したその他の刺激においても同様に生じる現象」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 消去

心理学における「消去」とは、学習心理学における古典的(レスポンデント)条件づけおよびオペラント条件づけの両方で起こる事象を指します。

古典的(レスポンデント)条件づけでは、条件づけられた刺激が単独で与えられ、もはや無条件刺激を予測しなくなったとき、徐々に条件反応は起こらなくなります。

パブロフの犬で説明すると、メトロノームの音(条件刺激)で唾液を分泌する(この場合は条件反応)よう条件づけられた後(要するに、メトロノームと食べ物を対呈示して、メトロノームの音だけで唾液が出るようにした後)、メトロノームが繰り返し鳴っても食べ物(無条件刺激)が与えられないでいると、最終的にはメトロノームに応じて唾液は分泌しなくなります。

つまり、古典的条件づけにおける消去では、条件刺激の除去ではなく、条件刺激を呈示するが食べ物は与えないという試行を繰り返すことを指すわけですね。

対して、オペラント条件づけのパラダイムにおける消去とは、それまで行動を維持していた強化刺激が、一切提供されなくなった状況を指します。

条件づけによって以前強化されていたオペラント行動が、もはや強化されなくなったとき、強化された行動の頻度は徐々に減少していくわけですね。

このように、条件づけによって反応を形成した後に、条件づけで用いられていた強化子や無条件刺激を呈示しないのが「消去」という操作であると考えて良いでしょう。

上記を踏まえると、消去は「ある1つの刺激に対して生じている反応が、類似したその他の刺激においても同様に生じる現象」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 般化

古典的条件づけや弁別オペラント条件づけにおいて、条件づけの結果、条件刺激や弁別刺激だけでなくそれらに類似した刺激によっても反応が生起されるようになることを「般化」と呼びます。

類似の概念として「弁別」があり、2つ以上の刺激のそれぞれに対して異なる反応をすることを指します。

古典的条件づけにおいて条件刺激によっては条件反応が誘発されるが、他のある刺激によってその反応が誘発されることが無い状態を「弁別」と言い、条件刺激によって誘発される他の刺激によっても誘発されるなら「般化」と呼びます。

オペラント条件づけにおける「般化」と「弁別」は、弁別刺激が変数となっており、ある弁別刺激下でのみある反応の自発頻度が高く維持され、別の刺激下ではその反応が自発されないか、または自発頻度が低く維持されることを「弁別」と言い、そうなった状態は弁別刺激が反応を統制している状態です。

また、弁別刺激以外の刺激の下で、その反応の自発が確認されるとき「般化」と呼びます。

上記を踏まえると、本問の「ある1つの刺激に対して生じている反応が、類似したその他の刺激においても同様に生じる現象」は般化であると言えますね。

よって、選択肢③が適切と判断できます。

④ 負の強化

オペラント条件づけの反応と結果の随伴性には、反応すれば刺激が与えられる場合と、反応すれば刺激が除去される場合があり、刺激には報酬(強化刺激)と嫌悪刺激(罰刺激)があります。

これらの刺激と随伴性の組み合わせによって、オペラント条件づけは以下のように分けられます。

  1. 正の強化:反応したときに報酬を与えると、反応が増加する。
  2. 正の罰:反応したときに嫌悪刺激を与えると、反応が減少する。
  3. 負の罰(オミッション):反応したときに報酬を除去すると、反応が減少する。
  4. 負の強化(逃避学習と回避学習):反応したときに嫌悪刺激を除去すると、反応が増加する。

「正・負=刺激を与えるか否か。与えたら正で、除去すれば負」「強化・罰=反応が増加すれば強化、反応が減少すれば罰」ということになりますね。

過去問(公認心理師 2022-86)の中から具体的な例を引っ張ってくると、「未装着警報音を止めるためにシートベルトをすること」は負の強化になります。

シートベルトをすることで「未装着警報音が止まる」わけですから、嫌悪刺激が除去されることになり、それによって期待されるのは、シートベルトを装着するという行動の増加になりますね。

ですから「嫌悪刺激を除去して反応が増加する」ということになり、これは負の強化ということになります。

これらを踏まえると、負の強化は「ある1つの刺激に対して生じている反応が、類似したその他の刺激においても同様に生じる現象」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ 高次条件づけ

高次条件づけとは、すでに条件反応を形成した条件刺激に対し、新たな刺激を対呈示することで、新たな刺激だけで条件反応を示すようになることを指します。

パブロフの犬に「ベル→唾液」を形成させた後、ベルに光刺激をくっつけて、光刺激だけで唾液が出るようにすることですね。

ちなみに、2次の条件刺激を無条件刺激のように扱って、別の新たな刺激とそれまでの条件反応とを結び付ければ「三次条件づけ」となりますが、空腹を基礎にした食物に対する唾液分泌といった種類の反応は二次条件づけまでが限界とされています。

こうした二次条件づけ以上の条件づけのことを「高次条件づけ」と総称しますが、二次条件づけのこと自体を指すことも多いですね。

上記を踏まえると、高次条件づけは「ある1つの刺激に対して生じている反応が、類似したその他の刺激においても同様に生じる現象」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です